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2011年12月10日23:56
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八大龍王伝説 【１８０ 第二龍王跋難陀（三） 〜違反者�機繊�
いつもお読みになっている皆様、ありがとうございます。今回は軍議に対して違反する者が出てきます。
それでは八大龍王伝説をはじめます。
【１８０ 第二龍王跋難陀（三） 〜違反者�機繊�
〔本編〕
「気にすることはない！ 俺たちだけで実行すればいい！！」地利将軍コリード軍の水軍の一人が五人の部下に熱く語った。
龍王暦一〇五一年九月二九日。時間にして午後二時頃のことである。
この三時間前の午前十一時、コリードは水軍の大隊長（二百五十人規模の隊の長）四人を呼び出し、水軍の進軍案はとりあえず凍結されたと伝えた。
四人の大隊長は全員納得し、一時間後の午後〇時、それぞれの所属五人の中隊長（五十人規模の隊の長）と二十五人の小隊長（十人規模の隊の長）にその旨を伝えた。
この水軍の中の中隊長の一人がその案の凍結に納得できなかったのである。名前をフソンといった。先の言葉はそのフソンが部下の五人の小隊長の前で語った言葉である。
「結局、シャカラ様もコリード様も、水軍を過小評価しての案の凍結だ！ 我が聖王国は地続きの超大国なため、水軍の存在を軽んじている。これまでの歴代の将軍、副官、大隊長の中で水兵であったものは、千年の長い歴史の中で数えるほどしかいない！ このままでは、いつまで経っても我々が活躍する場など訪れない。ここで強行進軍を実行に移して敵軍を害すれば、命令違反などという軽い罪状は吹き飛び、大きな手柄だけ残る。今一度言う。俺達だけで帝國軍を蹴散らそう！」
「「「「おぅ〜」」」」と四人の小隊長たち。
「お待ち下さい！ フソン中隊長！」四人のフソン配下の小隊長が賛同する中、一人の小隊長だけ異議を唱えた。
その小隊長はメロージといった。
「何か不服か！ メロージ！」
「恐れながら申し上げます」まだ、二十二歳の若き小隊長は言葉を選びながら続けた。
「我々水軍は活躍できる場所がないという中隊長のお気持ちも分かります。ただ今回の作戦は、千人規模で進軍することで敵兵への牽制へとなりえます。五十人規模の一中隊では、敵を誘い出すのも攪乱（かくらん）するのも難しいと考えます。さらに河とはいえ、この大河は荒れた海のように波立っております」
「貴様！ 荒れた海では水軍が活動できないというつもりか！」フソン中隊長はみるみる顔が真っ赤になった。
「活動できないとは言いません。しかし、かなり行動範囲が狭まるのは確かです。さらにこの河は八大龍王の一人バツナンダが作成した結界！ どのような罠があるか分かりません。ここは自重しまして、またの機会にかければ……」
「だまれ！ メロージ！！ このようなチャンスまたとない！ 俺は三十歳の時に水軍の小隊長となり、十五年後の四十五歳で中隊長になった。今は五十二歳。大隊長以上になるチャンスは今しかない。戦乱の世であればこそ、ドンク様は十九歳で人和将軍になられた。
コリード将軍は五十五歳であるが、それもムーズ、マクスールといった両将軍が脱落したためにあいた将軍の席だ。両将軍が脱落したのも王城奪還戦やミケルクスド國遠征といった“戦い”においてだ。コリード様の副官であるエアフェーベン様もノイヤール様も共に三十三歳だ！ エアフェーベン様もノイヤール様も共にカムイ湖の戦い及び王城奪還戦で武功を立てたためだ！
俺などは、王城マルシャース・グール奪還戦の後に、隊列に加わったため、シャカラ様の目に止まったことがない。シャカラ様の目に止まる活躍を見せねばならぬ。いずれにせよこの帝都攻略戦で戦争は終わり、我々が活躍する場所は、完全に無くなるのだぞ！」
「そうだ！」「隊長の仰るとおりだ！」四人中二人の小隊長がフソン中隊長の言葉に賛同する発言をした。
残り二人の小隊長も口には出さないが、フソンの指示に従うよう頷いた。
「私は抜けます！」若い小隊長メロージは毅然（きぜん）とした態度で拒否した。
「構わん！ 貴様のような腰抜け。こっちから小隊長を解任する！ よしお前ら！ 俺達だけでやるぞ！」
「分かりました。それから中隊長。他の隊からも希望者を募るのはいかがでしょうか？」
「おお〜それは良い！ お前らすぐに声をかけてまわれ！！」フソンは満足そうに頷いた。
同日の夜半、シャカラの本陣に訪ねて来た者があった。地利将軍コリードとその配下の小隊長メロージであった。
本陣の中にはシャカラの他に、天時将軍グラフ、人和将軍ドンク、ヴァイスドラゴネットのカリウス、ドラゴノイドのソヤとドンクの副官のシェーレの六人がいた。
シャカラは一度、カリウス、ソヤと一緒に小隊長のメロージの話を聞き、その後グラフ、ドンク、シェーレを本陣に招集させたのである。地利将軍配下の小隊長メロージの話は、当然、独断で兵を動かそうとしている同じ配下の中隊長フソンのことであった。メロージは同じ話を今日三回もしていた。
一回目が直属の上司である地利将軍コリードに……、二回目がコリードと共に、シャカラ、カリウス、ソヤの三人に……、そして三回目が、二回目のメンバーに加えて、グラフ、ドンク、シェーレを交えた席ででの説明であった。
シャカラは二度説明を聞き、小隊長のメロージを外し、軍議に入った。
「申し訳ございません。私の管理不足であります。 早速にも、中隊長のフソン以下の主立った者（小隊長達）を罰したいと思います」コリードが頭をこすりつけてシャカラに詫びた。
「いや。これ程の大人数……。それも新規編入者が多い今の聖王国軍ではそのような命令違反の一つ二つも起こりうることであると僕は考える！ シェーレ！ 命令違反の罪はどのくらいだ？」
「はっ！ 敵前逃亡と同位の死罪にあたります！」
「そうだな！ シェーレの言うとおり死罪で間違いないな。……と言うことは四十人の兵を失うことになるのだな」
「御意！ 四十人全員が従うのであればそうなります」シェーレの言葉であった。
「メロージの話によれば、フソン達は自分達以外の他の中隊や小隊にも声をかけていますので、少なくとも五十人、多ければ百人ぐらいになるでしょう」
「その誘われた者はどうなるのだ？」
「当然、同意すれば命令違反なので同罪の死罪にあたります」シェーレはシャカラの思惑が薄々分かってきた。
何故、この場所――将軍職以上の集まりに、副官にあたる自分が出席を許されているのか？ 他の軍の副官は出席していないのに……
「すると多くて百人の兵を失うということになるな！ 軍規の緩みは軍の崩壊を招くから致し方ないな！」シャカラはシェーレを真っ直ぐ見て、そう呟いた。
“やはりシャカラ様は、私にこの件を任されている！ 喰えぬお方だ”
「ところで……」シャカラはシェーレから目線を外し、全体に話を始めた。
「皆に話したいことがある。僕の霧の結界に少し綻（ほころ）びが感じ取れる。大した事ではないと思うが、この綻びから全体の結界の崩壊に及んでは大事となる。少し僕は別室で精神集中に入るため、後のことは皆で決めてもらいたい。シェーレ！」
「はい」
「この中ではお前が、一番地位が低い。既に死罪という大前提は決まっているので、あとの具体的な事柄などは、お前の考えで進めて欲しい。それでは皆。これで僕は失礼する。カリウス！ ソヤ！ 別室に移動する！」
そう言うとシャカラはカリウスとソヤを引き連れて席を立ってしまった。
〔参考一 用語集〕
（龍王）
難陀（ナンダ）龍王（ジュリス王国を建国した第一龍王。既に消滅）
跋難陀（バツナンダ）龍王（フルーメス王国を建国した第二龍王。マナシ陣営）
沙伽羅（シャカラ）龍王（ゴンク帝國を建国した第三龍王。ウバツラ陣営）
和修吉（ワシュウキツ）龍王（クルックス共和国を建国した第四龍王。ウバツラ陣営）
徳叉迦（トクシャカ）龍王（ミケルクスド國を建国した第五龍王。マナシ陣営）
阿那婆達多（アナバタツタ）龍王（カルガス國を建国した第六龍王。マナシ陣営）
摩那斯（マナシ）龍王（バルナート帝國を建国した第七龍王。ウバツラを監禁する）
優鉢羅（ウバツラ）龍王（ソルトルムンク聖王国を建国した第八龍王。マナシに監禁される）
（人名）
エアフェーベン（地利将軍の副官）
カリウス（沙伽羅龍王に仕えていた白い小型龍。『ヴァイスドラゴネット』とも『白き小型龍』ともいう）
グラフ（ソルトルムンク聖王国の天時将軍）
コリード（ソルトルムンク聖王国の地利将軍）
シャカラ（神としての記憶を取り戻したハクビ）
シェーレ（ドンク将軍の副官）
ソヤ（沙伽羅龍王に仕えていた龍人）
ドンク（ソルトルムンク聖王国の人和将軍）
ノイヤール（地利将軍の副官）
バツナンダ（バルナート帝國四神兵団の一つ青龍兵団の軍団長）
フソン（コリード将軍配下の中隊長。水兵）
マクスール（ソルトルムンク聖王国の将軍）
ムーズ（ソルトルムンク聖王国の前人和将軍。故人）
メロージ（コリード将軍配下の小隊長。水兵）
（国名）
ヴェルト大陸（この物語の舞台となる大陸）
ソルトルムンク聖王国（大陸中央部から南西に広がる超大国 第八龍王優鉢羅（ウバツラ）の建国した國）
バルナート帝國（北の強国 第七龍王摩那斯（マナシ）の建国した國 金の産地）
ミケルクスド國（西の小国。第五龍王徳叉迦（トクシャカ）の建国した國。飛竜の産地）
（地名）
カムイ城・カムイ湖（ツイン城を守る城。通称『谷の城』とその城が中央の島に築かれている湖）
マルシャース･グール（ソルトルムンク聖王国の首都であり王城）
（兵種名）
（付帯能力名）
（竜名）
ドラゴネット（十六竜の一種。人が神から乗用を許された竜。『小型竜』とも言う）
ドラゴノイド（十六竜の一種。竜と人との混血で、竜の血が多く混じっている種類。『竜人』とも言う）
（その他）
人和将軍（ソルトルムンク聖王国の軍事部門の最高幹部である三将軍の一つ。第三位の称号である）
地利将軍（ソルトルムンク聖王国の軍事部門の最高幹部である三将軍の一つ。第二位の称号である）
天時将軍（ソルトルムンク聖王国の軍事部門の最高幹部である三将軍の一つ。筆頭の称号である）
〔参考二 大陸全図〕
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