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2011年08月19日10:32

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八大龍王伝説 【161 第一龍王難陀(十七) 〜ドンクとシェーレ〜】 


 いつもお読みいただいている皆様、ありがとうございます。ハクビの状況はあと一回お待ちください。ドンクも頑張っているので、その件(くだり)を話します。
 
 それでは八大龍王伝説をはじめます。


【161 第一龍王難陀(十七) 〜ドンクとシェーレ〜】


〔本編〕
 同じ頃(同年七月二六日午後〇時五十五分頃)、さすがにシェーレほどの見事な陣の采配はのぞめないが、ほぼ同数の朱雀騎士団東方軍と粘り強く戦っている軍がある。ドンク率いる聖王国『第二陣』であった。
 朱雀騎士団東方軍三千人は、ハクビの戦法で三つに分断された。分断されたといっても、『ナンダ』は一人、『ゴッドフラメ隊』は百人、残り約二千九百人が『その他の東方軍』である。
 数の上では圧倒的に多い『その他の東方軍』。この軍を自由に動かされることは、聖王国軍の敗北に直結する事態なのである。何度も言うが『その他の東方軍』が二千九百。ドンクの『第二陣』が三千二百。数の上ではほぼ互角である。
 しかし、他国の兵力の三人分と言われている帝國軍。いかに指揮する者が不在とは言え、聖王国軍が戦線を支えるのは、非常に厳しい状況であった。
 午後〇時二十五分から始まった帝國の『その他の東方軍』と聖王国の『第二陣』のぶつかり合い。三十分過ぎた今、『第二陣』の死傷者は百人を超えた。その時『その他の東方軍』の死傷者は八十人程度だったと考えられる。
 ドンクとその側近は、戦場を東奔西走し、押し込まれている部分があると、そこへ兵を補充し、怪我をした者は後方に下げたりした。実際に一度はドンク自らが負傷兵を負ぶって後方に下がった場面もあった。
 とりあえず、ハクビからは時間稼ぎでいいと言われていたドンクであったが、帝國兵を前にして時間稼ぎで、防御のみの戦法はあり得なかった。防御のみで他国の三人分の攻撃を受けきることは不可能である。どこかで反撃して、ひるんだ隙にさらに攻撃を仕掛け、但し、深入りをせず、頃合いを見計らって防御の態勢を整える。
 この繰り返しを三千人規模で行わせるのである。ドンクとしては前線を保つこと自体が、非常に困難な状況だったのである。
 そんなドンクに午後〇時五十七分頃、『第二陣』の西側で円陣を組んでいる『第一陣』からある報告が入った。
「ハクビ様が敵のナンダ軍団長の槍の前に倒れました! 意識がありません!!」これを聞いたドンクは茫然自失となり、膝(ひざ)から崩れ、ドンクがハッと気付いたときには膝が地面についていた。
「ドンク様!」「司令官殿!」ドンクが、気がついた時には、回りに兵が集まり、口々にドンクのことを呼んでいた。
 ドンクはすっくと立ち上がり、皆に言った。
「ハクビ様の件については、後で確認する。今は東方軍を押し返すことに全力をつくす。敵の虚報(ハクビが倒れた事)の可能性もある。それであれば、ここで我らが引いたら、敵の思うつぼだ! 全軍……戦線を立て直すぞ!」
「おおっ〜」「我々もハクビ様が敗れたなど信じられません」「そうだ! ここで退けば、ハクビ様の意思をも裏切ることになる。なぁみんな!」異口同音に兵士達がドンクに呼応した。
ドンクの意志の強さと明るさは、『第二陣』に良い影響を与えた。聖王国『第二陣』は『第一陣』からの不幸な報告(ハクビが倒れたという報告)を受け、逆に一人一人がドンクの強い意志の影響で奮い立ったのである。
 その直後であった。
「ドンク様! ソヤ様の『第三陣』が援軍に駆けつけました」……。
軍が奮い立った直後であり、非常に聖王国『第二陣』は盛り上がりを見せた。ドンクもほっとしたように兵達に告げた。
「よし、交替で『第三陣』と入れ替われ! 後方に引いた兵は休息をし、休息後は『第三陣』と轡(くつわ)を並べ、帝國東方軍を押し返せ!」と……。

 さて、後日ドンクとシェーレはこの時の戦(いくさ)をこう振り返っている。
「まあいつも戦は大変だが、あの朱雀騎士団東方軍と戦ったときは、特に大変だった。三千人規模の軍を指揮するなんて初めてのことだったし……」
「そうだな」「ところでシェーレ!」「なんだ!」「朱雀のゴッドフラメは何故、シェーレの軍に向かっていったのだ! 偶然か! それともまた何か策を仕掛けたのか!!」
「まさか! 偶然だ。あの陣形(四つの菱形陣形)は、ハクビ様の『第一陣』が先発すれば、ゴッドフラメは北西方面か、南西方面に軌道を変える――つまり、私の『第四陣』か、お前の『第二陣』に九分九厘突っ込んでくると思ったわけだ! 万が一、西に直線に進んでソヤ殿の『第三陣』に向かってきたら、私の『第四陣』が南に移動して、ゴッドフラメの突入にあたろうとは思っていたからな」
 シェーレのこの説明に、ドンクは不思議そうに聞いた。
「何故、シェーレはソヤ殿の『第三陣』にはゴッドフラメを突入させないようにしたのに、俺の『第二陣』にはゴッドフラメは突入して大丈夫だと思ったのだ!」
「ソヤ殿は、ハクビ隊に初めて編成されて、それもいきなり指揮官になられた。ゴッドフラメ追撃のような単純な用兵は大丈夫だろうが、ゴッドフラメに対する複雑な用兵は無理だと考えたのだ。それに私やお前は前日に一度、ゴッドフラメを直(じか)に体験している。ソヤ殿は、前日はスキンムル城にいたからゴッドフラメを見ることすらしていない!」
「そうか、ソヤ殿の件は分かった。しかし、俺の『第二陣』にゴッドフラメが突入してきたら、どうするつもりだったのだ。俺には百八の陣の運用も出来ないし、『シェーレウィヒトライン』のような特殊部隊もいないのだぞ! 結果的にはシェーレの陣によってゴッドフラメは壊滅させられたからいいようなものの……」
「ドンク! 少し自分を卑下しすぎだぞ。確かに私のように微少の死傷者で、ゴッドフラメは倒せないかもしれないが、お前にはお前なりのやり方でゴッドフラメを攻略できたはずだ! 現にお前はほぼ同数の戦力で、三十分以上東方軍を抑えていたではないか。もっと自信を持て!」
「しかし百人以上の死傷者を出してしまった……」ドンクが少しうつむき加減で言った。
「馬鹿! 百人程度の死傷者で済んだのだぞ!」「しかしシェーレは三十人程度の負傷者しか出していない……それも死者は一人であるし……」「私と比べているのか?」ドンクは無言で頷いた。
「私は用兵の天才だぞ! 比べる方がどうかしている。それにお前は私にはない良さがたくさんある。例えば、明るい性格……これによって部下や同僚、果ては上司までお前のそばにいたくなる。これなどは私には求めても得られないものだぞ!」シェーレはさらに続けた。
「例えるなら、私は一万人規模の兵を率いることができるが……お前は一万人規模の兵を率いている将を百人率いることができるのだぞ。もっと自信を持て!」
「なるほど……それで俺に惚れたのかシェーレは……」ドンクの言葉にシェーレは真っ赤になって否定した。
「馬鹿! 自信を持てとはいったが、自信過剰になれとはいっていないぞ」と……。



〔参考一 用語集〕
(龍王名)

(人名)
 シェーレ(ハクビ将軍の副官)
 ソヤ(沙伽羅龍王に仕えていた龍人)
 ドンク(ハクビ将軍の副官)
 ナンダ(バルナート帝國四神兵団の一つ朱雀騎士団の軍団長)
 ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年。ソルトルムンク聖王国の人和将軍)

(国名)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)

(地名)
 スキンムル城(ソルトルムンク聖王国の東部地域の城)

(兵種名)

(付帯能力名)

(竜名)

(その他)
 神の炎(朱雀騎士団ナンダの一撃離脱の戦法。常勝の戦法で、『ゴッドフラメ』ともいう)
 シェーレウィヒトライン(シェーレの率いる特殊部隊。『シェーレの妖精たち』ともいう)


〔参考二 大陸全図〕
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