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2011年07月25日00:23

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八大龍王伝説 【156 第一龍王難陀(十二) 〜シェーレの妖精たち(前)〜】


 いつもお読みいただいている皆様、ありがとうございます。ぎりぎりアウトでのアップです涙
 シェーレについて、今回と次回の2回にわたってお届けします。
 それでは八大龍王伝説をはじめます。


【156 第一龍王難陀(十二) 〜シェーレの妖精たち(前)〜】


〔本編〕
 『シェーレの妖精たち(シェーレウィヒトライン)』について少し語ろう。少しと呼ぶには、長いくだりになるかもしれないが……シェーレに関しての重要な部分でもあるので読者の皆様、少しお付き合いいただきたい。
 さて、昨年のカムイ城での戦いで、限界を超えた魔法行使による神経衰弱の状態から癒えたシェーレは、同じく休息していたマークやレナと共に、ソルトルムンク聖王国の王城マルシャース・グールに到着した。龍王暦一〇五〇年一〇月一四日のことである。
 シェーレはこの頃から、自分の難解で膨大な量の戦略及び戦術を正確に素早く理解し、それを他の兵に分かりやすく伝えられる人材を捜していた。
“ハクビ様は私(シェーレ)の能力を高く評価してくださっている。近いうちに彼(ハクビ)の軍団を運営する中枢的な役目をあたえられるだろう。その時に自分の構想が他の兵に正確に伝わり、それが実行に移されるようにしなければいけない”シェーレはこう考えていた。
 しかし、マルシャース・グールに到着した頃には、あくまでもそれは構想段階であって、この時シェーレは、なんらアクションは起こさなかったのである。
 なぜなら、シェーレは、この当時(聖王国復活祭前の昨年の一〇月中旬頃)、ハクビが三将軍のポストの一つには就任するのは確実だろうと考えてはいたが、それと同じぐらい、その副官はマークとレナの兄妹だと確信していたからである。しかし、結果はザッドのハクビ軍弱体化の政略により、マークはマクスールの副官になり、レナとシェーレがハクビ将軍の副官に就任してしまったのである。
 シェーレは自分の構想を火急的速やかに実行に移す必要に迫られた。副官となったことによりハクビから軍全体を預かる身分になったのもそうだが、ザッドの卑劣な政略に対処する必要のほうがさらに大きかった。言うまでもなくザッドの卑劣な政略とは、ハクビの軍の中に内輪もめを起こさせ、ハクビ隊を弱体化させることである。
 シェーレは身近な者全員が認める優秀な人物ではあるが、元々バルナート帝國の兵で、聖王国の兵となったのは、龍王暦一〇五〇年の九月一四日のマルドス城の無血開城後である。いや、厳密に言うと、マルドス城無血開城からソルトルムンク聖王国の復活祭までは、聖王国の食客という身分だったので正式な聖王国兵ではない。
 同年一〇月三〇日のソルトルムンク聖王国復活祭で初めて、ハクビ将軍の副官という、聖王国に席をおく正式な軍人となったのである。いわゆる古参の聖王国兵からすれば『よそ者』である。
 ハクビもある意味、聖王国の兵になったのは、同年五月初旬のコムクリ村襲撃後からであるが、ハクビはまだ聖王国領内の民であったし、なによりもコムクリ村襲撃後、グラフ将軍の元、小隊長の時代から数々の実績をあげてきて、それを末端の兵も目の当たりにしていた。そのため、誰もハクビの傘下になることに不平はいう者はいない。むしろ、ハクビの下で仕えたいと考えている兵が大半であろう。
 しかし、くどいようだがシェーレは違う。シェーレは歴(れっき)としたバルナート帝國の兵であった。そして、聖王国に身を置いたその後のシェーレの戦績は、カムイ城を攻略していたヴォウガーの副官ケムローンに偽書を送ったこと。同じくカムイ城で『炎の竜巻(フラメヴィルベルシュトゥルム)の術』で、ハクビがケムローン率いる帝國軍に勝利するきっかけをつくったこと。そしてマルシャース・グールに籠(たてこ)もっているヴォウガー軍団長に撤退を薦める書簡を送ったことの三つである。
 いずれも、大きな実績ではあったが、表には出ていないので、一般の兵士達は全く知らない。仮に、後にこれらの話を聞いていたにしても、目で直接見るのと、話を聞くのでは、受け取り方で雲泥の差がでる。前者が心を揺り動かされる本物の感動だとしたら、後者はなるほどと頷く程度の観念的な感動なのである。
 少しシェーレの現状を語るのに紙面を割いてしまったが、要するに副官としてのシェーレの戦績を、直接的に部下の兵達に示さなければいけないのである。それもかなり大きな戦績をである……。
 もちろん、シェーレは掛け値無しに優秀なので、軍を指揮することに関しての誤りはないと考えられる。しかし、シェーレは優秀すぎる。シェーレの構想についていける部下達がどれだけいるのだろうか?おそらく九割以上の兵士達には理解できないであろう。つまり、シェーレの指揮は完璧でも、それを兵士達が難しすぎて実行に移せなければ負けることもある。結果として負ければ兵士達は指揮官のシェーレを責めるであろう。
 当然、シェーレも意思疎通ができないことによっての敗北すら自分に責任があると受け取るであろう。自分一人の責めで済むならシェーレも軍人である。別に極刑であろうとも甘んじて受けるが、それが多くの兵の命。あるいはハクビの身にまで及んでは、責任を取ろうにも取りきれない。
 実際に今現在シェーレが行っている百八つの陣形など、凡人では覚えることすらできないであろう。そこでシェーレは自分の構想を全て理解できる『頭脳』、そしてそれを忠実に伝えられる『口』を求めたのである。
 シェーレの着眼点は限りなく若い身長百五十センチメートル程度の女性、それも黒魔法を操るソーサリー系の兵であった。『シェーレの妖精たち(シェーレウィヒトライン)』の人材の発掘が本格的に行われたのは、去年の一一月ハクビとナンダが、一騎打ちをした直後である。
 人和将軍ハクビの兵五千は、まだバルナート帝國と休戦前なので、スキンムル城周辺で野営をしていた。この特殊部隊を作るにあたってシェーレは、ドンクに相談した。シェーレから相談を受けたドンクはこう言った。
「分かった! 他ならぬシェーレの頼みだ。俺の出来ることはなんでもする! でもなんでその条件なのだ! え〜と……身長百五十センチメートル程度の女性で……えっ〜と……」
「若いソーサリー系の兵!」「そうそう! そのソーサリー系……って、何でだ? シェーレがソーサリー系の最終段階のウィザードだからか?」
「それはあまり関係ない! 私の作りたい特殊部隊の性質は先ほど話した通りだが、それに必要な条件なのだ! 一つずつ説明する! そのほうが、ドンクも探しやすいと思うからな」シェーレは自分の口をすこし尖らせて、話を続けた。
「ソーサリー系を選ぶ兵は、基本記憶力に自信のある者が多い。なぜなら黒魔法の呪文は全部で八百以上あり、それを全部覚えた上でその都合に合わせ術を行使する。ちなみに白魔法の呪文は二百程度、黒魔法と白魔法の両方を使うモンク系は、黒と白の魔法力のバランスを保つために、両魔法(白魔法と黒魔法)を全ては覚えない。せいぜい黒と白百五十ずつの併せて三百程度だ! ソーサリー系の覚える魔法の数が、圧倒的なのだ!
 当然、まだ第二段階のソーサリーであれば、黒魔法の呪文を全ては覚えていないが、それでも六百は覚えているはずだ。私がソーサリーの時にはそうだった!」
“そりゃぁ〜シェーレはそうかもしれないが…… 皆がそうとは限らないでのはないかなぁ?”
「ん? どうした」ドンクが少し首を傾げてニヤリと笑ったので、シェーレは不審そうに尋ねた。
「いや! なるほど……続けてくれ」ドンクはあわてて真顔になった。



〔参考一 用語集〕
(龍王名)

(人名)
 ヴォウガー(バルナート帝國四神兵団の一つ玄武兵団の軍団長 故人)
 グラフ(ソルトルムンク聖王国の地利将軍)
 ケムローン(ヴォウガー軍団長の副官。故人)
 ザッド(ソルトルムンク聖王国の宰相)
 シェーレ(ハクビ将軍の副官)
 ドンク(ハクビ将軍の副官)
 ナンダ(バルナート帝國四神兵団の一つ朱雀騎士団の軍団長)
 ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年。ソルトルムンク聖王国の人和将軍)
 マーク(ハクビの親友)
 マクスール(ソルトルムンク聖王国の将軍)
 レナ(ハクビの妻。マークの妹)

(国名)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)

(地名)
 カムイ城(ツイン城を守る城。通称『谷の城』)
 コムクリ村(ソルトルムンク聖王国の南西部にある小さな村)
 マルシャース・グール(ソルトルムンク聖王国の首都であり王城)
 マルドス城(ツイン城を守る城。通称『山の城』)

(兵種名)
 モンク系(白魔法と黒魔法の両方に精通している魔兵の系列。モンク、プリースト、ビショップがそれにあたる)
 ソーサリー系(黒魔法に精通している魔兵の系列。ソーサリー、メイジ、ウィザードがそれにあたる)
 ソーサリー(第二段階の魔兵。黒魔法に精通している兵)
 ウィザード(最終段階の魔兵。黒魔法に精通している兵。いわゆる『魔法使い』)

(付帯能力名)

(竜名)

(その他)
 三将軍(ソルトルムンク聖王国の軍事部門の最高幹部。天時将軍、地利将軍、人和将軍の三人)
 シェーレウィヒトライン(シェーレの率いる特殊部隊。『シェーレの妖精たち』ともいう)


〔参考二 大陸全図〕
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