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2011年07月19日22:46

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八大龍王伝説 【155 第一龍王難陀(十一) 〜抜け出せぬ陣〜】


 いつもお読みになっている皆様、ありがとうございます。
 最近少し落ち込んでいますが、何とかアップにこぎつけました。
 八大龍王伝説を早速、はじめます。


【155 第一龍王難陀(十一) 〜抜け出せぬ陣〜】


〔本編〕
「カイ様! ケズリ様が聖王国の兵士に討ち取られました」ゴッドフラメの後方から、先頭のカイにこのような伝達が届いた。
「ケズリが……まさか!」カイのこの言葉に、続いて伝達が届いた。
「後方のクボルソード様のホースの前足に聖王国の兵の槍が刺さりました。クボルソード様は落馬されましたが、それを見ていたケズリ様が、クボルソード様を自分のホースに乗せ、ケズリ様自身は徒歩(かち)になり、聖王国軍の中に討ち入られました。恐らくは生きていないと……確認はできませんが……」
 ゴッドフラメの隊は常に前進しているので、当然、残ったケズリの確認は出来なかった。
「カイ! この陣から早く突破しないと……このままではゴッドフラメ隊が全滅するぞ!」
「分かっている! 俺も突破に全力をかけている!」カイの隣にいたキーグの言葉に、カイが苛々(いらいら)しながら叫んだ。
 既に彼らは、シェーレの率いる聖王国軍第四陣に突入して十分程度が過ぎていた。時間は午後〇時三十七分。
 龍人(ドラゴノイド)のソヤの率いる第三陣を背後に受けながら、ゴッドフラメは迷走していた。南東方面から北西方向に向かって聖王国軍第四陣に突入したゴッドフラメ隊。先頭からナンダが外れたとはいえ、二回程度の突入及び離脱の後(のち)、次のゴッドフラメ隊と交替するため、帝國東方軍の本隊と合流を果たすつもりであった。
 しかしゴッドフラメ隊は第四陣から未だ離脱できずにいた。ついにゴッドフラメ隊は北西方向から、時計回りに鋭角に四十五度、つまり北方向に進路を変えたのである。
「十九(ノインツェーン)!」第四陣指揮官のシェーレの声が響く。その声と共に第四陣も北側に移動を始めたのである。
 当然、いつまで経ってもゴッドフラメ隊は、聖王国の第四陣から抜け出せない。ゴッドフラメ隊は、立て続けに反時計回りに鈍角に百三十五度――南西方面。続いて時計回りに直角の九十度――北西方面、さらに時計回りに鈍角に百三十五度――東方面へと方角を変えた。
 その都度、シェーレの声が響く。
「八十六(アハツィヒゼクス)!」
「七十二(ズイープツィヒツヴァイ)!」
「六十九(ゼヒツィヒノイン)!」と……。
 結果、ゴッドフラメ隊の先頭はいつまで経っても第四陣の中心辺りに位置していた。全力で敵陣の中を走り回るゴッドフラメ。ナンダは別格として、他の一般の兵には十分以上を超えるゴッドフラメの継続は自滅に近かった。
 みるみるゴッドフラメから兵が脱落、或いは敵兵に討ち取られたりした。
 後で知ったことであるが、第四陣の指揮官のシェーレは、その天才ともいえる記憶力と判断力で、ゴッドフラメのあらゆる動きを想定していた。シェーレはそのゴッドフラメに対応して、自軍の陣の動きを百八つにパターン化し、それをシェーレ自身が判断しながら、あらかじめ決められた数字を言うことによって、第四陣を動かしていたのである。
 しかし、それはシェーレという天才のなせる技であって、一般の兵たちには数字を聞いて、百八のパターンから選択し、部下に伝えるのは不可能であった。
 それを、可能にしたのが、シェーレの特殊部隊である『シェーレの妖精たち(シェーレウィヒトライン)』の働きであった。『シェーレの妖精たち(シェーレウィヒトライン)』は、十三歳から十七歳までの十六人の少女達のことである。
 この『シェーレの妖精たち(シェーレウィヒトライン)』が結成されたのが最近で今年の三月である。皆、身長が百五十センチメートル程度のソーサリー系の兵士たちである。十三歳とは、ソルトルムンク聖王国において軍人となれる最年少なので、シェーレはその最年少になるべく近い年齢で、特殊部隊を編成したのである。
 これら『シェーレの妖精たち(シェーレウィヒトライン)』はシェーレの直属機関で、シェーレからの命令という前提で、大隊長クラス(二百五十人規模を率いることのできる兵士)の兵にすら命令することができた。
 この彼女たちが、シェーレの指示する数字の意味を全て理解しており、各々の場所において、そこの大隊長及び中隊長(五十人規模を率いることのできる兵)に指示を出していたのである。



〔参考一 用語集〕
(龍王名)

(人名)
 カイ(バルナート帝國朱雀騎士団の兵)
 キーグ(バルナート帝國朱雀騎士団の兵)
 クボルソード(バルナート帝國朱雀騎士団の兵)
 ケズリ(バルナート帝國朱雀騎士団の兵)
 シェーレ(ハクビ将軍の副官)
 ソヤ(沙伽羅龍王に仕えていた龍人)
 ナンダ(バルナート帝國四神兵団の一つ朱雀騎士団の軍団長)

(国名)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)

(地名)

(兵種名)
 ソーサリー(第二段階の魔兵。黒魔法に精通している兵)

(付帯能力名)

(竜名)
 ドラゴノイド(十六竜の一種。竜と人との混血で、竜の血が多く混じっている種類。『竜人』とも言う)

(その他)
 神の炎(朱雀騎士団ナンダの一撃離脱の戦法。常勝の戦法で、『ゴッドフラメ』ともいう)
 シェーレウィヒトライン(シェーレの率いる特殊部隊。『シェーレの妖精たち』ともいう)


〔参考二 大陸全図〕
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