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2011年07月09日12:41
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八大龍王伝説 【１５３ 第一龍王難陀（九） 〜二陣、三陣そして四陣〜】
いつもお読みいただいている皆様、ありがとうございました。ミクシーの足跡機能の改悪で、ご覧になられている皆様が特定できなくなったのが、とても残念です＞＜
さて、戦いの中で“分断”と“合流”が鍵になってきます。それでは八大龍王伝説をはじめます。
【１５３ 第一龍王難陀（九） 〜二陣、三陣そして四陣〜】
〔本編〕
「俺たちが先頭を務める神の炎（ゴッドフラメ）は初めてだな！ キーグ！」
「カイ！ 無駄口は叩くな！ もう間もなく敵陣に切り込むぞ！」ナンダが脱落した東方軍のゴッドフラメ隊の先頭のカイとキーグの会話である。
「しかし、俺達も見くびられたものだ！ ナンダ様がいなければゴッドフラメも止まると奴ら（聖王国軍）は本気で考えているようだな」カイの後ろのクボルソードであった。
クボルソードの左隣のケズリはちらっとクボルソードを見て言った。
「ナンダ様が合流されるまで……おそらく一巡か……或いは二巡になるかもしれないが、とにかく我々だけで敵の一軍ぐらいは敗走させなければなるまい！」
この四人の中でケズリが一番年上で、冷静な判断や予測が出来る人物であった。
さて、そのゴッドフラメ隊百人は四つの菱形陣形の一番北にある第四陣に攻めかかった。第四陣の指揮官はシェーレであった。シェーレは三千二百人規模の菱形の中心からやや南側の地点で、馬（ホース）に跨（またが）っていた。
「一（アインス）！」馬上でシェーレが叫んだ。むろん魔法により拡声されている。その第四陣にゴッドフラメが突き刺さった。
「二（ツヴァイ）！」シェーレの声がまた聞こえた。第四陣は、北西側にゆっくりと後退をはじめた。ゴッドフラメの進軍速度はその第四陣の後退速度の三倍なので、結果として第四陣内にゴッドフラメが深く入り込んでいく。
「カイ！ こいつら（聖王国軍）おかしいぞ！」キーグが隣のカイに話しかけた。
「こいつら、楯で我々の突きを防いでいるが、防ぎきれなくなると左右に分かれていく……それも規則正しく……何かあるのではないか？」
「気にするな！」カイが叫んだ。
「いずれにせよ我々が突き抜けさえすれば、そこから軍が分断されて、最終的には崩壊する……今は前に進むことだけを考えろ！」
「分かった！ そうだったな……」カイの言葉にキーグも納得したようであった。
その時であった。
「大変です！」ゴッドフラメ隊の後方の兵から順繰りに伝達が届いた。
「何事だ！」ケズリが後ろを見た。
「敵兵がゴッドフラメの後方から進軍してきます」「「何……」」ケズリとクボルソードが同時に声をあげた。
帝國軍のゴッドフラメの後方から進軍してきたのは西側に位置したソヤが率いる第三陣であった。この第三陣は北の第四陣と南の第二陣と同じ速度で北に前進していた。そして、ゴッドフラメが北の第四陣に攻め入って、第四陣がゆっくりと北西方面に退いていくのを見ていた第三陣は、百人のゴッドフラメ隊の最後尾に取り付いたのである。
第三陣はそのまま北西に移動するゴッドフラメ隊を追って、第四陣の中心部目がけて進軍を始めた。
「三（ドライ）！」シェーレの声がまた聞こえた。その声に応じるように、第四陣の後退速度が速まった。
「「何だこれは？」」ゴッドフラメの先頭の二人――カイとキーグが同時に叫んだ。
第四陣の騎兵が彼らの目前に現れた。奇妙な騎兵であった。一頭のホースに二人乗りしているのである。それだけではそれほど奇妙ではないが、前の一人はホースの進行方向……ゴッドフラメ隊と同じ進軍方向を向いているが、後ろの一人は、ゴッドフラメ隊に正対していた。つまりホースに逆向きで乗っているのである。
さらに後ろ向きの兵は、両手に一つずつ小型の円形の楯を二枚持っていた。つまり攻めるための武器を有していないのである。
「申し上げます！ 後方から攻めてきた敵兵が、ゴッドフラメ隊の後方を攻撃しています。応戦はしておりますが、進行方向とは逆のため、既に二人の兵が討ち取られました」
また、ゴッドフラメ隊の後方からの報告である。
「このままではゴッドフラメ隊が後方から崩れていくぞ！ どうする」クボルソードが隣のケズリに聞いた。
「ここは我々が後方に下がって対処するしかない！ とにかく第二巡のゴッドフラメ隊と交替するまで、陣形を崩すわけにはいかない！ お〜い！ カイ！ キーグ！ 俺とクボルソードは後方に下がる。後を頼むぞ」
ケズリのその言葉に、カイとキーグは前を向いたまま、無言で頷いた。それを見たケズリ、クボルソードはホースの減速を始めた。結果、彼らは数秒後にはゴッドフラメ隊の最後尾に達していた。
さてナンダとハクビが聖王国の第一陣に囲まれ、ナンダを除いたゴッドフラメ隊百人が、同じく聖王国の第四陣と第三陣に挟撃された同時期、東方軍の残りの二千九百の兵は、第一陣の円陣のさらに東側で、三千二百人規模のドンク率いる第二陣と抗戦していた。
二千九百人規模の東方軍は、ゴッドフラメ隊の三割程度のスピードで進軍していたが、ナンダが聖王国の第一陣に飲まれたとみるや、スピードを上げた。聖王国第一陣からナンダを救い出し、続いてナンダを除くゴッドフラメ隊に合流できるところまで進軍しようとしたのである。
ゴッドフラメは、非常に体力を消耗する攻撃に特化した戦法であるため、並の兵士では、一日一波が限界であった。当然、一波毎に兵を交替させなければいけない。それ故、一往復の一波が終わるたび、本陣なるところに帰陣できる準備がなければいけない。
その認識で動いていた二千九百人の東方軍の前方――第一陣の東側の地点に、南側から軍が展開してきた。
それが聖王国の第二陣であった。数の上では聖王国三千二百に対して帝國二千九百でほぼ互角であるが、何度も言ったように帝國の兵は他国の兵三人分の力を発揮する。この第二陣の指揮官ドンクは、大声で指示をとばし、必死に持ちこたえていた。
とにかく、ハクビの思惑通り、�．淵鵐澄↓▲乾奪疋侫薀畭癲↓�その他の帝國兵の三つに分断することに成功した。この三つを分断している限り、聖王国の勝利は近づき、この三つを一つにしたとき、聖王国の勝利が遠のいていく。
それが両軍分かっているだけに、その攻防の激しさは徐々に増してくる。この朱雀騎士団の三つ（ナンダ、ゴッドフラメ隊、その他）の中で最大の鍵を握るのは、二千九百人のその他の帝國兵である。
第四陣と第三陣に挟撃されているゴッドフラメ隊は、自分たちの生存で手一杯で、とてもナンダ達と合流するのは難しい。ナンダにしても性格上、自分から第一陣の円陣から逃れるとは考えにくい。むろん……ハクビが倒されれば、その状況も変わるかもしれないが……。
とにかく二千九百人という数は、帝國軍において今は貴重な戦力なのである。
しかし、その二千九百人を束ねる指揮官がいなかったのが、朱雀騎士団の不幸であったであろう。一応、ナンダは副官代理を立てていたが、その者はナンダへの南方軍全滅の戦況報告さえ上ずってしまうほどの者である。そのような小心者が、今の事態に対応できるはずもなかった。事実、この副官代理はこの状況下の中、一人茫然自失としていた。
十人以上いる大隊長（二百五十人規模の大隊の長）。四十人以上いる紅い兵（ロートゾルダート）。しかし、それを束ねる者がいなかった。そのため、ドンク率いる三千二百人の聖王国の第二陣との長期的な攻防に拘泥（こうでい）していったのである。
約十波分のゴッドフラメを組む人員が揃っていたにも係わらず、ドンクの第二陣を結局突破できなかったのである。この戦いが常勝軍団朱雀騎士団の、最初で最後の敗北となったのである。
『もし』は歴史を語る上でタブーではあるが、あえて論じるとすればこうなるだろうか。
『もし、ここに朱雀騎士団の副官バーフェムがいれば、この戦いどちらの勝利で終わったのであろうか……』
〔参考一 用語集〕
（龍王名）
（人名）
カイ（バルナート帝國朱雀騎士団の兵）
キーグ（バルナート帝國朱雀騎士団の兵）
クボルソード（バルナート帝國朱雀騎士団の兵）
ケズリ（バルナート帝國朱雀騎士団の兵）
シェーレ（ハクビ将軍の副官）
ソヤ（沙伽羅龍王に仕えていた龍人）
ドンク（ハクビ将軍の副官）
ナンダ（バルナート帝國四神兵団の一つ朱雀騎士団の軍団長）
バーフェム（ナンダ軍団長の副官）
ハクビ（眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年。ソルトルムンク聖王国の人和将軍）
（国名）
ソルトルムンク聖王国（大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅（ウバツラ）の建国した國）
バルナート帝國（北の強国。第七龍王摩那斯（マナシ）の建国した國。金の産地）
（地名）
（兵種名）
（付帯能力名）
（竜名）
（その他）
紅い兵（朱雀騎士団ナンダの戦法、ゴッドフラメを実現するために選ばれた朱雀騎士団の中でも精鋭中の精鋭。『ロートゾルダート』とも言う）
神の炎（朱雀騎士団ナンダの一撃離脱の戦法。常勝の戦法で、『ゴッドフラメ』ともいう）
朱雀騎士団（バルナート帝國四神兵団の一つ。ナンダが軍団長）
〔参考二 大陸全図〕
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