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2011年07月04日11:16

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八大龍王伝説 【152 第一龍王難陀(八) 〜小隊長ジロー〜】 


 いつもお読みいただいている皆様、ありがとうございます。
 さて、今回から参考三のあらすじを削除しました。あまりあらすじになっていないことと、どんどん年表が限りなくのびていってしますからです。特に問題がなければ、これで続けていきます。

 それでは八大龍王伝説をはじめます。


【152 第一龍王難陀(八) 〜小隊長ジロー〜】


〔本編〕
「ハクビよ! 人語をしゃべる竜とは変わっているな! どこで見つけたのだ!」見るとナンダが立ったまま、ハクビに話しかけた。
 距離にして十メートルと離れていない。
「……」「まあ答えなくても、大体想像はつく。我が炎馬の勇猛スキルにひけをとらず、人語を話すとなると、天界に住んでいるドラゴネット……それもかなりレベルの高い龍と言える。それなれば候補は数匹に絞られる!」
「難陀(ナンダ)龍王よ! 私に向かって『匹(ひき)』呼ばわりとは失礼であろう。この私『白き小型龍(ヴァイスドラゴネット)』に対して……!」
「やはり沙伽羅(シャカラ)龍王のカリウスのようだな! お前は、主人(マスター)以外にも背を許すのか! それも人間如きに…… あげくは体色まで偽って!」
「お前には関係のないことだ!」カリウスは血塗(まみ)れになった口でそう言いながら、ハクビに近づき、自分の背に誘(いざな)った。
「ジロー! 治癒の呪文を……」ハクビのこの言葉に、一人の剣兵が、九人の僧兵を従えて、ハクビとナンダを囲んでいる円陣から、一歩前に出た。
 治癒の呪文は、カリウスの炎馬に蹴られた顎(あご)の怪我(けが)、引き摺られた後ろ足の怪我をみるみる治していった。それだけでなく敵兵の炎馬の尻にできた、カリウスが炎馬の鎧を引っかき、その鎧を貫いてできた浅いひっかき傷も治した。
 しかし、不治の呪いがかかったナンダの槍で突かれた左脛(すね)は魔法の膜で覆って止血することはできたが、それ以上の治療は不可能であった。
 さて、少し話はそれるが、元ハクビ小隊の一員であったジローについて語ろう。
 ジローは今年十九歳。最年少のドンクと同じ年である。この時代、生まれた時が〇歳で、そこから毎年の一月一日に全員一つ年をとる。そのため、今となってはジローとドンクのどちらが先に生まれたかは定かではないのである。
 ジローはハクビの小隊の一員としては、例えば、良くも悪くも目立っているドンクなどに比べて、非常に地味であった。
 しかし、ジローはそんなドンクに嫉妬することも羨望することもなく、自分の能力と立場を弁(わきま)えている平凡で温厚な人物であった。そんなジローに対して、ハクビは全幅の信頼をおいていた。
 それは、昨年の九月の通称『谷の城』と呼ばれているカムイ城の戦いにおいてレナを含めて十人のシスターを護衛する役目を任じたり、今年、ハクビが竜の山脈に向かう間、スキンムル城でハクビの影武者を演ずることを任じたりしたところから窺うことができるであろう。
 とにかく、ハクビの最初の部下であるハクビ小隊の十人はそれぞれ出世した。
 行方不明のカリムは例外として、ドンクとレナはハクビの副官と元副官、マークは今でこそ逃亡者の身であるが、マクスール将軍の副官であった。また、マクスールの軍に配備されたマークを除く四人――アルク、ミュストン、サルルッサーとソイーズですら中隊長である。
 しかしそれに対してジローは未だ小隊長である。ハクビは当然、自分がグラフ将軍の副官になったときも、聖王国の人和将軍になったときも、ジローの功績に報いようとした。
 しかしジローは、「私は自分の力量を良く弁(わきま)えています。自分は一兵卒の器です。ですから生涯ハクビ様にお仕えできるのであれば、それが最高の報償です」と言って出世することを断った。
 ハクビとしても「分かった。無理には薦(すす)めない! しかし、お前が一兵卒のままでは、他の家臣が自分も出世できないのではないかと僕に疑念を持ってしまう。だからせめて小隊長の階級だけは受けてもらいたい」と言った。
 それに対するジローの言葉はこうであった。
「分かりました! それではハクビ様のお側に使える救急小隊の長であれば謹んでお受けします」と……。
 ここでジローが言った救急小隊とは、シスターやモンクで結成されていて、つねに将のそばにいて治癒の呪文によって将を助ける隊のことである。
 話を戻そう。
「俺の炎馬まで治療するとは一体どういう了見だ?」ナンダが自分の元に近づいてきた炎馬に乗りながら、言った。
「ナンダ殿! この円陣の中は誰にも邪魔されないようにした! だから、ここにナンダ殿との一騎打ちを望む! ナンダ殿! 返答を頂きたい! お互い正々堂々とだ! それ故にナンダ殿の炎馬の治療を施した次第である!」
「ふん! 自軍の兵で回りを囲っておいて、正々堂々とは笑わせる! 先に炎馬を治療して、まるで『貸し』でも作ったつもりか! ハクビよ! お前のやり方はどこまでも姑息だ! とても正々堂々と一騎打ちをするとは考えられない! ……がまあ良い! この俺様をゴッドフラメから引き離した功績に免じて一騎打ちを受けよう。ハクビ! お前を先ずこの槍の供物としようぞ!」
 ここに至りハクビは遂にナンダを自分の土俵に立たせることができた。むろん、この男に勝つしか活路はないのは最初からの決定事項ではあったが……



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 難陀(ナンダ)龍王(ジュリス王国を建国した第一龍王)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王)

(人名)
 アルク(元ハクビ小隊の騎兵)
 カリウス(沙伽羅龍王に仕えていた白い小型龍。『ヴァイスドラゴネット』とも『白き小型龍』ともいう)
 カリム(元ハクビ小隊の魔兵。現在は行方不明)
 グラフ(ソルトルムンク聖王国の地利将軍)
 サルルッサー(元ハクビ小隊の弓兵)
 ジロー(元ハクビ小隊の剣兵 現在はハクビ将軍の配下)
 ソイーズ(元ハクビ小隊の弓兵)
 ドンク(ハクビ将軍の副官)
 ナンダ(バルナート帝國四神兵団の一つ朱雀騎士団の軍団長)
 ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年。ソルトルムンク聖王国の人和将軍)
 マーク(ハクビの親友)
 マクスール(ソルトルムンク聖王国の将軍)
 ミュストン(元ハクビ小隊の騎兵。ミケルクスド國の『草』)
 レナ(ハクビの妻。マークの妹)

(国名)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)

(地名)
 カムイ城(ツイン城を守る城。通称『谷の城』)
 スキンムル城(ソルトルムンク聖王国の東部地域の城)
 ドラッヘゲビルゲ(ゴンク帝國の東に位置する山脈。八つの山から成り立っており、大陸で一番ドラゴンが生息している場所。『竜の山脈』とも言う)

(兵種名)
 モンク(第二段階の魔兵。白魔法と黒魔法の両方に精通している兵)
 シスター(第二段階の魔兵。白魔法に精通している女性限定の兵)

(付帯能力名)
 勇猛スキル(十六の付帯能力の一つ。自らを高揚させ、味方の士気をあげる能力。また逆に敵の士気を挫く能力でもある)

(竜名)
 ドラゴネット(十六竜の一種。人が神から乗用を許された竜。『小型竜』とも言う)

(その他)
 三将軍(ソルトルムンク聖王国の軍事部門の最高幹部。天時将軍、地利将軍、人和将軍の三人)
 炎馬(馬と火竜(或いは炎竜)の混血の馬。『ファイアーホース』とも言う)
 神の炎(朱雀騎士団ナンダの一撃離脱の戦法。常勝の戦法で、『ゴッドフラメ』ともいう)


〔参考二 大陸全図〕
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