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2011年05月09日16:46

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八大龍王伝説 【141 国家の裏側】


 いつもお読みいただいている皆さま、ありがとうございます。

 ハクビがついに竜の山脈を下ります。それでは早速、八大龍王伝説をはじめます。


【141 国家の裏側】


〔本編〕
 龍王暦一〇五一年五月一三日、ハクビ一行は『竜の山脈(ドラッヘゲビルゲ)』の『第五の山(フィフントベルク)』と『第四の山(フィーアトベルク)』の境にある峠に到着した。
 ハクビ一行とはハクビと『白き小型龍(ヴァイスドラゴネット)』のカリウス、竜人(ドラゴノイド)のソヤ、グラフ将軍の副官であるスルモン、ハクビ将軍の副官になったドンク、それと数人のハクビに付き従っている者であった。
「いました! ハクビ様」ドンクが先を指さした。
 ドンクの指さす方向には十人あまりの一団があった。
 この場所は、人に開放されているとはいえ、竜(ドラゴン)の領地の境目である『第五の山(フィフントベルク)』の入り口である。普通の者であれば、このような場所にはよほどのことがない限り訪れない。
 ハクビ達を待っている者達以外にはありえないのである。その十人あまりの者は、皆一様に顔に深緑色の目の部分以外隠れている頭巾を被っている。
「おお〜ドンク! 無事に大将には会えたようだな!」一人がドンクに話しかけた。
「ああ! スーコルプ! そちらは万事順調か?」
「おお〜任せろ! ところでこの御仁がハクビ殿か!」
 ドンクにスーコルプと言われた人物は自分で被っていた頭巾を脱いで、ハクビに握手を求めた。
 黒い髪で浅黒い肌、細面の笑顔が無邪気な若い男であった。
「ああ! よろしくたのむ」ハクビもニコニコ笑いながら、握手に応じた。
「おお〜! 俺様は勘が利く方だが、この大将は大物だな!」スーコルプは握ったハクビの手を離さず、ニコニコしながらそう言った。
「スーコルプ! 俺の仕えるお方だぞ! 大物に決まっている!」ドンクもそう言いながら、スーコルプを始めとする十人あまりの人々を紹介した。
「ハクビ様! その彼が一昨日話しましたスーコルプです。ゴンク帝國で千人規模の地下組織を指揮している者です。若く見えますが、三十代後半です。とにかく、明る過ぎる人柄で、とかく陰湿なイメージを持たれる地下組織の頭(かしら)には見えないと思いますが……
 そしてその部下がこちらの四人と、残りがスーコルプが連絡をとってくれた元クルックス共和国の『共和の四主(ししゅ)』の者です」
「クルックス共和国からですか……わざわざ僕のために骨を折ってくださってありがとうございます。『共和の四主』と言えば、王の存在しないクルックス共和国を影で操っていると噂されている……」
「いえ! 礼にはおよびません」深緑色の頭巾の一人が話しながら、ハクビに近づいてきた。
「お会いしていきなりで申し訳ないのですが……我々、『共和の四主』は組織の規律で、許可のない限り一般の者には顔は明かせないことになっています……」
 その言葉にハクビが回りを見ると、スーコルプとその四人の部下は頭巾を外していたが、その他の者は頭巾をつけたままであった
「……その非礼をお詫びいたすとともにご理解いただきたいと思います。そして、私のことは『風の旅人』とお呼び下さい」
「分かりました! でも何故クルックス共和国の方が僕の手助けをしてくれるのですか?」
「そりゃぁ当然だわ!」スーコルプであった。
「俺のところ(ドンク帝國)も、こいつのところ(クルックス共和国)も、帝國(バルナート帝國)によって國を滅ぼされちゃった! 地下組織というのはな、その國の政治体制を批判しつつ、裏ではいろいろ密接につながって存在している。国家とつながっているからこそ、存在価値もあるというものだ!
 その國の政策などを見張る『影の目』ってところかな! とにかくも政治体制が外部の力で崩壊させられたら……それこそ、その新しい政治体制とのネットワークを一から組まなくちゃならねえ!
 それは非常に時間と手間がかかる………ということで、俺もこいつも祖国の復活を願っているのだ! それをあんたに期待しているのだよぉ〜分かったかい、ハクビさんよ!」
「なるほど! 分かりました。僕の力でナンダが倒されるのを期待しているのですね!」
「分かっているねぇ〜! さすがは大将! 大変だと思うけど……まあ頑張ってくれよ! 俺は個人的にはナンダさん嫌いじゃないけど……バルナート帝國の人間だからね! しかし、ナンダさんを一回見たことあるけど、ありゃ〜大物通り越えて化け物だな!!」
「当たり前だ! ナンダは神なのだから……」ヴァイスドラゴネットのカリウスがぶっきらぼうに口をはさんだ。
「げぇ〜! ドラゴンがしゃべったぁ〜!!!」スーコルプの驚きの声。
「スーコルプ殿! 風の旅人殿! ご紹介が遅れました。この白い小型龍がカリウス! 第三龍王の沙伽羅(シャカラ)龍王が騎乗していた沙伽羅龍王のパートナーにあたる龍です。そしてこちらの龍人(ドラゴノイド)がソヤ。やはり沙伽羅龍王に仕えていた天界の住人です」
「ドラゴノイド! ああ〜どおりで人間離れした個性的な顔をしていると思った。いや〜全然気付かなかったなぁ〜」スーコルプは陽気に大声で笑った。
「気付いてないのは……あんただけだよ……スーコルプ!」ドンクがぼそりとつぶやいた。



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王)

(人名)
 風の旅人(共和の四主の一人)
 カリウス(沙伽羅龍王に仕えていた白い小型龍。『ヴァイスドラゴネット』とも『白き小型龍』ともいう)
 スーコルプ(ゴンク帝國の地下組織の頭)
 スルモン(グラフ将軍の副官)
 ソヤ(沙伽羅龍王に仕えていた龍人)
 ドンク(ハクビの副官)
 ナンダ(バルナート帝國四神兵団の一つ朱雀騎士団の軍団長)
 ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年。ソルトルムンク聖王国の人和将軍)

(国名)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 クルックス共和国(南東の小国。第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國。唯一の共和制国家。大地が肥沃。今は滅亡している)
 ゴンク帝國(南東の小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。ドラゴンの産地。『城塞帝國』の異名を持つ。今は滅亡している)

(地名)
 フィーアトベルク(竜の山脈の一つ。『第四の山』とも呼ばれる)
 フィフントベルク(竜の山脈の一つ。『第五の山』とも呼ばれる)
 竜の山脈(ゴンク帝國東部に位置する八つの山が連なっている山脈。ヴェルト大陸一のドラゴンの生息地でもある。『ドラッヘゲビルゲ』とも言う)

(竜名)
 ドラゴネット(十六竜の一種。人が神から乗用を許された竜。『小型竜』とも言う)
 ドラゴノイド(十六竜の一種。竜と人との混血で、竜の血が多く混じっている種類。『竜人』とも言う)

(その他)
 共和の四主(クルックス共和国を影で操っている四人の総称。風の旅人、林の麗姫(れいき)、炎の童子、山の導師の四人)


〔参考二 大陸全図〕
フォト



〔参考三 あらすじ〕
 龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國(くに)が建国される。

 龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される。ハクビは記憶喪失。

 龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談。その席上コリムーニ老聖王が急死する。
 同年三月一〜三日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國が国境の町バクラで交戦、ソルトルムンク聖王国側大敗(バクラの戦い)。
 同年同月一〇日 ソルトルムンク聖王国の王城陥落。聖王国滅亡。ジュルリフォン聖王子は大陸最南端のツイン城に逃げ込む。
 同年五月三日 コムクリ村にバルナート帝國軍が襲撃、ハクビが白虎騎士団のバルゴー隊長を倒す。以後、グラフ将軍に助けられ、残党軍の拠点であるアユルヌ渓谷に到着する。
 同年八月初頭 バルナート帝國とミケルクスド國連合軍がジュリス王国を滅ぼす。
 同年九月四〜五日 聖王国軍と帝國軍がツイン盆地で激突(ツイン城の戦い)。帝國軍ツイン盆地より撤退。
 同年一〇月一〇日 マルシャース・グール奪回の戦いにおいて、聖王国軍が勝利する。
 同年同月一五日 バルナート帝國とカルガス國連合軍がクルックス共和国を滅ぼす。
 同年同月二六日 バルナート帝國がゴンク帝國を滅ぼす。
 同年同月三〇日 ジュルリフォン第四十九代聖王誕生。ソルトルムンク聖王国の復活。
 同年一一月一一日 ハクビとバルナート帝國朱雀騎士団の軍団長ナンダが戦い、ハクビが敗北する。
 同年一二月一〇日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國の間で半年間の休戦条約が締結される。

 龍王暦一〇五一年一月一日 聖王国と帝國が休戦期間に入る(同年六月三〇日まで)。
 同年二月十五日 ハクビが『第八の山』でカリウスと会う。
 同年三月 ソルトルムンク聖王国のマクスール軍とミケルクスド國が戦う。ミケルクスド國が勝利する。
 同年同月二〇日 ソルトルムンク聖王国が敗戦処分を行う。マークは反逆罪になる。
 同年同月二四日 マークがミケルクスド國の首都イーゲル・ファンタムに到着。ラムシェル王に謁見する。ホルム、スリサの両親と会う
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