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2011年05月04日13:09
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八大龍王伝説 【１４０ ラムシェル王とマーク（終）】
いつもお読みいただいている皆さま、ありがとうございます。
ラムシェル王による謎解きも今回が最後です。いよいよハクビとナンダの対決に、話が移っていきますので、皆さま、楽しみに待っていて下さい。
それでは、八大龍王伝説をはじめます。
【１４０ ラムシェル王とマーク（終）】
〔本編〕
「ところで十一年前の湖の事故については……マーク！ お前は何か知っているか？」ラムシェル王がマークに問いかける。
「はい……ハクビの口から聞きました……」
「マーク！ そちの知っている話をここで皆にしてくれ」
「分かりました」
マークが話した内容は、去年の王城マルシャース・グール奪回戦のおり、当時の人和将軍のムーズからハクビが伝え聞いた内容であった。
「十一年前の龍王暦一〇四〇年の夏、ジュルリフォン聖王子と双子のステイリーフォン聖王子は三人の従者を連れ、近くの湖に舟遊びにいかれた時のことです。
その湖の名前までは、ハクビもムーズ将軍から聞いていなかったようです。とにかく、船遊びされているその時、急に空が曇り大雨になったようです。そして湖が荒れ、五人の乗っていた船が転覆して、ムーズ将軍達が駆けつけたときには時すでに遅く、四人が死体としてあがりました。
三人の従者と一人の聖王子の死体でありました。そしてその聖王子の死体は、ジュルリフォンとステイリーフォンのどちらの死体かは、最初は判断がつかなかったようです。なぜなら二人の聖王子が瓜二つのためでした。
しかし、しばらくして水辺で倒れている聖王子が、ジュルリフォン聖王子だったのが分かったため……消去法で死体はステイリーフォン聖王子となった事件です」
「完璧だ！ マーク！」ラムシェル王はニコニコしながら言った。
「それで、王城奪回戦でハクビはジュルリフォン聖王子の影武者に扮していたステイリーフォン聖王子に会ったということだな」
「はい！ どうしてそれを……」
「余の諜報機関にかかればその程度訳もない……その後、ステイリーフォン聖王子は行方不明になったそうだが……」
「ハクビによれば、安全なところで匿っているそうです」マークはラムシェル王には何度驚かされたか分からない。
今更ながら、ソルトルムンク聖王国がミケルクスド國に敗れた理由の根底が分かったような気がした。
「話を戻そう……」ラムシェル王の言葉にマークは、はっと我に帰った。
「十一年前の水死体が、ステイリーフォン聖王子になったのは、生き残ったほうがジュルリフォン聖王子と名乗ったからだ。その情報はとりあえずおいといて純粋に水死体の可能性を模索すると、�．好謄ぅ蝓璽侫�ン聖王子、�▲献絅襯螢侫�ン聖王子、��そのどちらでもない、の三つになる。
このうち��は、余はありえないと思う。何者かは分からないが、聖王子に化けてわざわざ死体になる意味がない。仮にそうだとしても、それなら生き残った聖王子から何らかの証言があるはずだ。またステイリーフォン聖王子自身が身分を偽って隠れている必要性がない。
では�，療�初どおりステイリーフォン聖王子が亡くなったとしたらどうか……去年の聖王国の王城奪回の折、影武者がステイリーフォン聖王子と名前を明かしたのが嘘ということになる。しかし偽者にしては影武者がジュルリフォン聖王子に似すぎている。
あるいは人ではなければ、そっくりになることは可能である。しかし、ステイリーフォン聖王子に化ける意味がない。なぜなら、ステイリーフォン聖王子には何の権限もないからである。
�，筬�では聖王子に化けるそもそもの意味がないと言えよう。
では�△了狢里�ジュルリフォン聖王子だったではどうか？ 何者かがお人好しのステイリーフォン聖王子を何らかの形で説得してこの世界からその存在を隠させる。さらにジュルリフォン聖王子が亡くなったという事実もステイリーフォン聖王子が亡くなったという事実にすり替えることによって、何者かがジュルリフォン聖王子に成り代わる。
これが最も説明がつく。ジュルリフォンは今、聖王となりソルトルムンク聖王国を支配している。つまり、強大な権力を握っていることになる。
それにこれであればザッドの登用についても一つの線として繋がっていく。ジュルリフォン聖王の偽者とザッドがグルとあるという線で……
それも両者とも人とは考え難い。それも、身分を偽るほどの者達だから、人にとって有益とも思えない。何者かは分からないが、悪意のある、人ならざる二人がヴェルト大陸で最も強大な國に君臨している。
マーク！ そちの大事な人々をそこから救い出さなければならない必要性が必ず遠からず訪れる。そのためには、余とミケルクスド國という国家をそちの切り札としておくのが、賢明と思えるがな……いかがかな？！」
「よく分かりました！ 王にお会いできて幸いです。長期にわたるかもしれませんが……貴国への滞在を強く希望いたします。そしていざというときは、王の力を私にお貸し下さい。僭越（せんえつ）ながら…お願い申し上げます」
マークのこの言葉にラムシェル王はにっこりと笑い、大きく頷（うなず）いた
〔参考一 用語集〕
（人名）
ザッド（ソルトルムンク聖王国の宰相。コリムーニの治世ではジュルリフォン聖王子の教育係）
ジュルリフォン聖王（ソルトルムンク聖王国の聖王）
ステイリーフォン聖王子（ジュルリフォン聖王子の双子の弟。現在は行方不明）
ハクビ（眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年。ソルトルムンク聖王国の人和将軍）
マーク（ハクビの親友）
ムーズ（ソルトルムンク聖王国の人和将軍。故人）
ラムシェル王（ミケルクスド國の王。四賢帝の一人）
（国名）
ヴェルト大陸（この物語の舞台となる大陸）
ソルトルムンク聖王国（大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅（ウバツラ）の建国した國）
ミケルクスド國（西の小国。第五龍王徳叉迦（トクシャカ）の建国した國。飛竜の産地）
（地名）
マルシャース・グール（ソルトルムンク聖王国の首都であり王城）
〔参考二 大陸全図〕
〔参考三 あらすじ〕
龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國（くに）が建国される。
龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される。ハクビは記憶喪失。
龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談。その席上コリムーニ老聖王が急死する。
同年三月一〜三日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國が国境の町バクラで交戦、ソルトルムンク聖王国側大敗（バクラの戦い）。
同年同月一〇日 ソルトルムンク聖王国の王城陥落。聖王国滅亡。ジュルリフォン聖王子は大陸最南端のツイン城に逃げ込む。
同年五月三日 コムクリ村にバルナート帝國軍が襲撃、ハクビが白虎騎士団のバルゴー隊長を倒す。以後、グラフ将軍に助けられ、残党軍の拠点であるアユルヌ渓谷に到着する。
同年八月初頭 バルナート帝國とミケルクスド國連合軍がジュリス王国を滅ぼす。
同年九月四〜五日 聖王国軍と帝國軍がツイン盆地で激突（ツイン城の戦い）。帝國軍ツイン盆地より撤退。
同年一〇月一〇日 マルシャース･グール奪回の戦いにおいて、聖王国軍が勝利する。
同年同月一五日 バルナート帝國とカルガス國連合軍がクルックス共和国を滅ぼす。
同年同月二六日 バルナート帝國がゴンク帝國を滅ぼす。
同年同月三〇日 ジュルリフォン第四十九代聖王誕生。ソルトルムンク聖王国の復活。
同年一一月一一日 ハクビとバルナート帝國朱雀騎士団の軍団長ナンダが戦い、ハクビが敗北する。
同年一二月一〇日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國の間で半年間の休戦条約が締結される。
龍王暦一〇五一年一月一日 聖王国と帝國が休戦期間に入る（同年六月三〇日まで）。
同年二月十五日 ハクビが『第八の山』でカリウスと会う。
同年三月 ソルトルムンク聖王国のマクスール軍とミケルクスド國が戦う。ミケルクスド國が勝利する。
同年同月二〇日 ソルトルムンク聖王国が敗戦処分を行う。マークは反逆罪になる。
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