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2010年11月29日05:08

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八大龍王伝説 【108 王城イーゲル・ファンタムにて(前)】


いつもお読みの皆さま、ありがとうございます

前回の話で、新しい人物の名前が4人出てきました ハクビ小隊の残りの4人です 今回も申し訳ございませんが、3人新しい人物が出てきます 最初は、さらっと読んでいただいて結構です いずれそれぞれのキャラクターが立ってくれば、自然と覚えられると思いますので…

それでは八大龍王伝説をはじめます


【108 王城イーゲル・ファンタムにて(前)】


〔本編〕
龍王暦一〇五一年一月三〇日、ヴェルト大陸の西に位置する國−ミケルクスド國の王城イーゲル・ファンタムの玉座の部屋に八人の者が集まっていた

一人が玉座に座り、残りの七人がその玉座の周りに、片膝をついて控えていた

「それで、ソルトルムンク聖王国は我が國に攻め込む日(とき)と人(へい)を決定したということだな」

玉座に座っている人物が尋ねた

その人物は百七十二センチメートルで中背の人物であった

髪は茶色で、眼はエメラルドグリーン、鼻が高く、黄色(おうしょく)の肌の色をしており均整の整った顔立ちであった

年齢は今年で二十七歳

このミケルクスド國の国王であるラムシェルであった

ラムシェルは八年前の十九の時、国内の軍事クーデターにより、父王を亡くした

その後、王位に就いたラムシェルはクーデターを鎮圧し、若年者(じゃくねんしゃ)として侮って決起した地方領主、そのクーデターを好機とし、ミケルクスド國を併呑しようとした隣国のジュリス王国と戦った

また昨年にはソルトルムンク聖王国とバルナート帝國のバクラの戦い、さらにはジュリス王国の併呑など、八度経験した戦いに全て勝利してみせた

その戦(いくさ)の手際から、当代の四賢帝(しけんてい)の一人に列せられ名君としての誉れ高い若き王であった

「はっ!今年の三月一日に聖王国の王城を三万の兵で出発するとのことです」

「三万!」

「ばかな!我が國の動員出来る最大数と同数を遠征させるというのか!」

一人の若い男の報告に、二人の初老の男が思わず声を出していた

王に状況を報告した若い男は、百八十センチメートルの長身、髪は茶色で、均整の整った顔立ちをしている二十八歳の男であった

名をライヒターといった

幼い頃よりラムシェルと竹馬の友として育ったライヒターは、ラムシェルに全幅の信頼を置いており、ラムシェル王もライヒターを自分の分身のように信頼していた

実際、ライヒターはその信頼に答えられるだけの智と勇の両方を兼ね備えており、信義にも厚い人物であった

そのライヒターの報告に思わず声を出したのが、ハリマとガイエルであった

ハリマは今年五十五歳になる

百九十センチメートルの大柄に、大きな顔をしており、黄色の肌に禿げかかっている頭に、ぼうぼうとのびる無精髭を手入れもせず、飄々(ひょうひょう)とした感じのお世辞にも美男子とはいえない顔をしていた

むしろ異相であった

見た目の風采はあがらないが、ラムシェル王の知恵袋として数々の戦いでミケルクスド國を勝利に導いていた

そしてガイエルであるが、年齢は五十九歳

しかし、その年齢より年老いて見える

肌の色は浅黒く、白髪と白い顎髭(あごひげ)を蓄えているせいでそう見えるのであろう

しかし、ガイエルの一番の特徴は真っ黒な鋭い瞳であろう

その目は何ものも信用していない目のように見える

実際、八年前の軍事クーデターでは、ガイエルはクーデター側に就き、当時十九歳のラムシェル王に鎮圧されている

幼なじみのライヒターなどは、ガイエルは決してラムシェル王に信服しない者と看破し、すぐに屠(ほふ)るように王に進言した

しかし、ラムシェル王は

「ガイエル一人御(ぎょ)し得ないで、この國の王は務まらない」

と言い、ガイエルを配下にしたのである

そのようにラムシェルに言われたものの、ライヒターは、いつかガイエルが王に反旗を翻すのではないかと始終目を配っていた

一方、ガイエルもラムシェルとライヒターのやり取りを耳敏(みみざと)く知り、ライヒターを毛嫌いした

まさに、ライヒターとガイエルは水と油のような関係なのである

「そうかぁ〜三万か!それは大規模な勢力だな!ソルトルムンク聖王国は本気で我が國を手に入れるつもりだな ところで敵の指揮官は決まったのか?」

ラムシェル王の言葉にライヒターが答える

「聖王国の三将軍の一人天時将軍のマクスール将軍です!」

「ハッハッハッ!あの無能将軍か!我々の勝利は堅そうだな」

ラムシェル王が大笑いした

その場にいた者達もつられて笑った

「しかし王よ、いくら無能な将軍とは言え、部下の者が優秀であれば、苦戦するやもしれません 何といっても三万の軍勢ですぞ」

ガイエルが言った

「軍の構成はどうなっている?ライヒター!」

ラムシェル王の問いであった

「はっ!三万のうち、弓兵が一万、歩兵が四千、騎兵が一万五千、残りの千が魔法使いや諜報兵のようです」

「何?弓兵一万!!」

「この編成は我が軍を大いに意識しているようですな」

ライヒターの答えに、またハリマとガイエルが声を出した

そしてガイエルはさらに続ける

「王!この弓兵一万の編成は明らかに我が軍の飛兵対策ですぞ!これはご油断なさらぬように…」

ガイエルは目を細めて、この若き王がどのような決定を下すか、確かめるような目になった

「案ずるな!確かに我が飛兵を攻めるのに、弓兵は欠かすことの出来ない存在だ しかし弓兵は他の兵からの直接攻撃には脆い

皆も当然承知している事柄だが… つまりは弓兵と他の兵を分断出来れば何の問題もない」



〔参考一 用語集〕
(人名)
ガイエル(ラムシェル王の家臣)

ハリマ(ラムシェル王の家臣 ラムシェルの右脳と呼ばれる人物)

マクスール(ソルトルムンク聖王国の天時将軍)

ライヒター(ラムシェル王の家臣 ラムシェルの右腕と呼ばれる人物)

ラムシェル(ミケルクスド國の王 四賢帝の一人)

(国名)
ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国 第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)

バルナート帝國(北の強国 第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國 金の産地)

ミケルクスド國(西の小国 第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國 飛竜の産地)

ジュリス王国(北西の小国 第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國 馬(ホース)の産地 今は滅亡している)

(地名)
イーゲル・ファンタム(ミケルクスド國の首都であり王城)

(その他)
四賢帝(当代の四人の優れた王の総称)


〔参考二 大陸全図〕
フォト



〔参考三 あらすじ〕
龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國(くに)が建国される

龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される ハクビは記憶喪失

龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談 その席上コリムーニ老聖王が急死する

同年三月一〜三日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國が国境の町バクラで交戦、ソルトルムンク聖王国側大敗(バクラの戦い)

同年同月一〇日 ソルトルムンク聖王国の王城陥落 聖王国滅亡 ジュルリフォン聖王子は大陸最南端のツイン城に逃げ込む

同年五月三日 コムクリ村にバルナート帝國軍が襲撃、ハクビが白虎騎士団のバルゴー隊長を倒す 以後、グラフ将軍に助けられ、残党軍の拠点であるアユルヌ渓谷に到着する 

同年八月初頭 バルナート帝國とミケルクスド國連合軍がジュリス王国を滅ぼす

同年九月四〜五日 聖王国軍と帝國軍がツイン盆地で激突(ツイン城の戦い) 帝國軍ツイン盆地より撤退

同年一〇月一〇日 マルシャース・グール奪回の戦いにおいて、聖王国軍が勝利する

同年同月一五日 バルナート帝國とカルガス國連合軍がクルックス共和国を滅ぼす

同年同月二六日 バルナート帝國がゴンク帝國を滅ぼす

同年同月三〇日 ジュルリフォン第四十九代聖王誕生 ソルトルムンク聖王国の復活

同年一一月一一日 ハクビとバルナート帝國朱雀騎士団の軍団長ナンダが戦い、ハクビが敗北する

同年一二月一〇日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國の間で半年間の休戦条約が締結される

龍王暦一〇五一年一月一日 聖王国と帝國が休戦期間に入る(同年六月三〇日まで)

同年同月一〇日 ハクビがゴンク帝國に密かに向かう
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