mixiユーザー(id:15312249)

2010年10月29日19:56

17 view

八大龍王伝説 【102 朱雀騎士団(十) 〜休戦へ向けて(前)〜】


いつもお読みいただいている皆様、ありがとうございます^^

それでは早速、八大龍王伝説をはじめます


【102 朱雀騎士団(十) 〜休戦へ向けて(前)〜】


〔本編〕
「こんな一方的な言いよう、受け入れることはありません」

朱雀騎士団副官のバーフェムは顔を真っ赤にしてナンダにそう迫った

龍王暦一〇五〇年一一月一二日、ハクビとナンダの一騎打ちから一夜明けたその日、ハクビからナンダに宛てて一通の書状が使者の手によってもたらされた

その手紙の内容は以下の通りであった

『ソルトルムンク聖王国人和将軍ハクビより、バルナート帝國朱雀騎士団軍団長ナンダ殿へ書状を認(したた)める 昨日(さくじつ)の我(われ)と貴公の一騎打ちの結果は万人が認めるところ、貴公の勝利であるのは疑いもない

しかしてその勝因は多分に貴公の乗用された炎馬の優秀さに起因するものである これも万人が認めるところ疑いもない事実である

貴公は昨日の戦いにおいて、我が指摘したそれを『是』として、我の首級をその場で求めなかった その貴公の行為は真の武人として賞賛に値する

我は貴公のその行為に報いるべく、万全の状態での再戦を望みたいと思う ついてはその猶予を頂きたい

猶予の件であるが、貴国と我が国の半年間の期限付きの休戦協定が適当であると考える こちらとしては、この条件を受け入れていただけるのを前提で、既に我が聖王のもとへ使者を遣わしたところである

貴公との公明正大な再戦を望み、このような書状をしたためた次第である 貴公の賢明な回答を待つ』

と…

前述のバーフェムの言葉は、この手紙を読んだ直後に発せられた言葉である

「そうだ!こんな条件受け入れる必要はない!」

「ナンダ様が完全勝利したのは、衆目の認めるところだ」

「ナンダ様、このような小癪(こしゃく)な敵軍…この場で全滅させましょう」

「先ずは使者を見せしめに切り捨てましょう さすれば我が軍の士気も大いに高まりましょう」

このような言葉が、異口同音に発せられた

今、ナンダの本陣には、ナンダと副官バーフェム、そして二百五十人規模の隊を指揮する大隊長二十人と五十人規模の隊を指揮する中隊長百人が一堂に会していた

バーフェムを始め、大隊長と中隊長は全員、この一方的な条件には反対であるし、あろうことか、ナンダ軍団長とハクビ将軍の実力が同等だという物言いには、憤りさえ感じていた

しかし、ナンダだけはニヤニヤしながら、怒っている皆を見回していた

「ふっ!面白い」

ナンダは呟(つぶや)いた

「面白いですと…」

バーフェムはナンダの顔を見て深くため息をついた

「それは、軍団長の悪い癖ですぞ!先のクルックス共和国の攻略戦でも、軍団長は敵側の条件をそのまま受け入れ、長期化されたではありませんか!

今回の戦いにおいても、向こう(聖王国)の条件に乗る必要性は全く見出せません!すぐさま、朱雀騎士団全軍を動かし、速やかにマーシャル・グール王城を落とすのが最上です!」

「そんなことは百も承知だ!」

ナンダが続ける

「しかし、それではつまらん!!」

「またそれですか!そんなことでは軍団長のもとから兵があきれて、みんないなくなりますぞ」

バーフェムの言葉である

バーフェムはそうは言ってみたものの、ナンダが一度決めたことは絶対に変えないと知っている

また、このようなさっぱりしており、子供っぽい性格が憎めなくて、ナンダを崇拝している兵が大半であることも、疑いようのない事実であった

むろんその崇拝者の一人にバーフェムが含まれているのは言うまでもない

「分かりました しかし、休戦協定を結ぶのには帝王の許可が必要不可欠です 先ずは宰相のお耳に入れなければ…」

「よし!すぐにマクダクルスをこの場に呼べ」

ナンダのこの言葉で、バーフェムは不承不承(ふしょうぶしょう)、マクダクルス宰相と『天耳・天声スキル』によって会話をした



〔参考一 用語集〕
ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年 ソルトルムンク聖王国の人和将軍)

ナンダ(バルナート帝國四神兵団の一つ朱雀騎士団の軍団長)

ジュルリフォン聖王(ソルトルムンク聖王国の第四十九代聖王)

バーフェム(ナンダの副官)

マクダクルス(バルナート帝國の宰相)

ロードハルト帝王(バルナート帝國の帝王 四賢帝の一人)

ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国 第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)

バルナート帝國(北の強国 第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國 金の産地)

クルックス共和国(南東の小国 第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國 唯一の共和制国家 大地が肥沃 今は滅亡している)

マルシャース・グール(ソルトルムンク聖王国の首都であり王城)

炎馬(馬と火竜(或いは炎竜)の混血の馬 ファイアーホースとも言う)

天耳・天声スキル(十六の付帯能力の一つ 離れたある一定の個人のみと会話をする能力 今でいう電話をかける感覚に近い)


〔参考二 大陸全図〕
フォト



〔参考三 あらすじ〕
龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國(くに)が建国される

龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される ハクビは記憶喪失

龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談 その席上コリムーニ老聖王が急死する

同年三月一〜三日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國が国境の町バクラで交戦、ソルトルムンク聖王国側大敗(バクラの戦い)

同年同月一〇日 ソルトルムンク聖王国の王城陥落 聖王国滅亡 ジュルリフォン聖王子は大陸最南端のツイン城に逃げ込む

同年五月三日 コムクリ村にバルナート帝國軍が襲撃、ハクビが白虎騎士団のバルゴー隊長を倒す 以後、グラフ将軍に助けられ、残党軍の拠点であるアユルヌ渓谷に到着する 

同年八月初頭 バルナート帝國とミケルクスド國連合軍がジュリス王国を滅ぼす

同年九月四〜五日 聖王国軍と帝國軍がツイン盆地で激突(ツイン城の戦い) 帝國軍ツイン盆地より撤退

同年一〇月一〇日 マルシャース・グール奪回の戦いにおいて、聖王国軍が勝利する

同年同月一五日 バルナート帝國とカルガス國連合軍がクルックス共和国を滅ぼす

同年同月二六日 バルナート帝國がゴンク帝國を滅ぼす

同年同月三〇日 ジュルリフォン第四十九代聖王誕生 ソルトルムンク聖王国の復活

同年一一月一一日 ハクビとバルナート帝國朱雀騎士団の軍団長ナンダが対峙する
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する