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2010年10月19日20:51

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祝! 八大龍王伝説 【100 朱雀騎士団(八) 〜神技(しんぎ)〜】

いつもお読みいただいている皆さま、ありがとうございます^^

ついについに…100回目を迎えることができました 

これもひとえに応援して下さる読者の皆さまのおかげです

ありがとうございました

※「祝!」が頭についていますが、100回記念ということでつけましたので、題名が改正されたわけではありません(笑)

それでは、八大龍王伝説をはじめます


【100 朱雀騎士団(八) 〜神技(しんぎ)〜】


〔本編〕
徒(かち)のハクビ

馬上のナンダ

二人による壮絶な戦いが展開されていた

だが、戦いと言えば聞こえが良いが、ナンダの攻撃をハクビが防御している、ただそれだけの繰り返しであった

ハクビの武器は両斧(りょうふ)である

長いほうが長斧(ちょうふ)

ハクビの身長程の長さだから百七十センチメートル

ナンダの乗っている炎馬(ファイアーホース)は、普通の馬(ホース)と比べて二周りほど巨大である

数値化すれば、全長三メートル、体高百九十センチメートル

つまり何物にも乗っていないハクビにとって、長斧の有効射程距離は腕をぎりぎり伸ばして二百二十センチメートル強といったところ

ナンダに長斧を届かせるには、彼の懐深くに飛び込まなくてはならないのである

それに対し、ナンダの槍は三メートル

物理的にも優位なだけでなく、目に止まらない突きと、槍先が届いていない場所にも干渉できる付帯能力(アドバンテージスキル)

どれをとってもハクビには勝ち目がないようにみえた

あらゆるスキルを動員し、ナンダの突きをかわすハクビ

それでもかわしきれず、金でできた鎧がみるみる砕けていく

ナンダの槍の直接の攻撃を受けていない箇所に関しては、百メートル後ろにいるレナの修復の魔法で鎧は修復できる

しかし、直接槍を受けた部分には不治の結界が張られており、修復の魔法は効かない

ハクビの鎧はみるみるヒビだらけになり、ハクビ自身は徐々に後退を余儀なくさせられている

今ハクビは、自身の武器(長斧)ではナンダどころか炎馬にすら届かない五メートル以上の距離をとっている

「はっ!お前戦う気あるのか?」

ナンダはハクビの消極的なその態度を声高に罵(ののし)る

ナンダはハクビの消極的な戦い方に徐々に焦れてきた

しかし、ハクビも何の勝算もなしに、このような守り一辺倒の戦いをしているわけではない

ハクビは事前にこの戦場である草原を、ドンクを中心とする諜報部隊に調べさせていた

それによると、この草原は平地ではあるが、西に向かってやや斜めに起伏している場所がところどころにあるのである

東からこの地域にやってきた帝國軍は、この起伏に気づいていない

あまりにも緩やかだからである

西からやってきた聖王国軍からは、起伏によっていくつか絶壁の崖のようになっている場所が所々に見ることができる

高いところでは十メートル程の崖になっている

ハクビはその一箇所を目指し後退しながら、ナンダをその場所へと導いていった

ある秘策を胸に秘めながら…

五十分程度過ぎた同日午後〇時頃、ハクビはある一つの地点にたどり着いた

最初の戦場から百メートルほど西の地点であった

ハクビがレナに言う

「レナ!霧(レーベル)の呪文を!」

西に百メートルの地点だから、当然そこにレナはいる

霧(レーベル)の術により視界が極端に狭まった

「何のつもりだ!そんなことしても、『五感増幅スキル』で増幅した視力の前ではほとんど意味をなさないぞ!」

ナンダはそう言うとハクビに向かっていった

その時である

ハクビの姿が忽然と消えた

訝(いぶか)るナンダは、ハクビのいた地点に到着し合点がいった

そこは断崖絶壁の崖になっていた

ハクビはここから下の草原に飛び降りたのであろう

霧(レーベル)の呪文により、十メートル程崖下の草原にハクビの姿は見出せないが、ここから飛び降りたことに間違いはない

ナンダの騎乗するファイアーホースは、ナンダを乗せたまま、そこから崖下の草原へ向かって跳躍した

《よし!かかった》

ハクビの策略は成功した

ハクビは崖から飛び降りたのは事実であったが、崖の途中−二メートル程落ちた出っぱりの部分に短斧(たんふ)を引っ掛け、崖にぶら下がった状態になっていた

その崖は一メートル程度出っぱりがせり出している関係で、その出っぱりの裏側にぶら下がっていたハクビを、崖の上のナンダには見つけることが出来なかったのである

その崖からナンダは草原に向かって跳躍した

ハクビの眼にはナンダの背中が見えた

ハクビは岩肌を大きく蹴り、ナンダの背中に向かって跳躍した

付帯能力(アドバンテージスキル)の『単独行動スキル』により、重力を二倍にして、ナンダにみるみる迫っていく

あと少しでナンダの背中に追いつく

ハクビは短斧(たんふ)をナンダの背中目がけて投げ、長斧(ちょうふ)を両手でしっかりと握り頭上に振りあげた

ツイン城攻略戦の折、玄武兵団ヴォウガー軍団長の武器である『漆黒の槍(シュワルツランツ)』を、折った技である

後、十数センチメートルで、ナンダの背中に両斧(りょうふ)が届くという時である

ナンダの落下速度が急に上がった

「『単独行動スキル』はお前だけの専売特許ではないぞ!」

ナンダの声が聞こえた

それは紛れもなく付帯能力(アドバンテージスキル)の『単独行動スキル』であった

それも、ハクビより落下速度の速い重力の三倍化で、炎馬もろともの『単独行動スキル』である

いや、既に炎馬一緒であれば、『単独行動』という言葉自体がおかしいが、紛れもなく『単独行動スキル』である

これによりナンダとハクビの間の距離は一気に広がった

《馬鹿な!あのスピードでは馬(ホース)の足が砕けるぞ!!》

ハクビは思った

「グサッ!」

草原の土に炎馬の前足が突き刺さった音がした

《ホースの足が砕けない!》

ハクビは愕然(がくぜん)とした

ナンダは炎馬の後ろ足が地面につく前に馬上で体を捻り、炎馬の前足を軸にして百八十度回転した

そこに、ハクビによって投げられた短斧(たんふ)と、振り下ろされた長斧(ちょうふ)が同時に襲いかかった

「キィィィィ〜ン!」

金属の高い音が辺りに響き渡る

ナンダの徒手(としゅ)の左手は、ハクビの短斧の柄を掴んでおり、右手でハクビ目がけて繰り出された『紅き火の槍(ロートフォイアーランツ)』は、ハクビの長斧の刃先を自らの槍の穂先で捉えていた

回転しながら飛んでくる短斧の柄を素手で捉えるのは、それはそれで驚愕(きょうがく)的な技量ではある

しかし、斧の刃先を槍の穂先で捉える技量とは比べようもない

それほど、ナンダのこの時の槍捌(やりさば)きは尋常ではない奇跡とも言えるレベルのいわゆる神技(しんぎ)であった

ハクビの両斧による攻撃が全く意味を成さなかった

次の瞬間、長斧の刃に強烈な衝撃が走り、一筋の亀裂が刃先から柄の方へ走った

ハクビは直感的に長斧を握っていた両手をすぐに離した

もし離していなければ、槍から斧へと伝わった衝撃が、ハクビの両腕の骨をバラバラに砕いていたであろう

「グッ!」

続いてハクビが呻(うめ)いて、そして柔らかい草原の草の上に落ちた

ハクビが草原に落ちる前に、ナンダの『紅き火の槍』の見えない突きが放たれ、ハクビの右の太腿を貫いたのである

「これで最後だな!」

ナンダは左手に掴(つか)んだ短斧を後ろに投げ捨て、目の前に倒れているハクビに槍の穂先を向けた



〔参考一 用語集〕
ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年 ソルトルムンク聖王国の人和将軍)

レナ(マークの妹 ハクビ将軍の副官)

ナンダ(バルナート帝國四神兵団の一つ朱雀騎士団の軍団長)

ヴォウガー(バルナート帝國四神兵団の一つ玄武兵団の軍団長 故人)

ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国 第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)

バルナート帝國(北の強国 第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國 金の産地)

ツイン城(ソルトルムンク聖王国の最南端の城)

付帯能力(その人物個人の特有の能力 アドバンテージスキルという 十六種類に体系化されている)

五感増幅スキル(十六の付帯能力の一つ 視・聴・嗅・味・触の五感を増幅させる能力)

単独行動スキル(十六の付帯能力の一つ 飛翔する物を何も用いず単独で空中に静止または移動する能力 場合によっては、重力を二倍以上にして落下することも可能である) 


〔参考二 大陸全図〕
フォト



〔参考三 あらすじ〕
龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國(くに)が建国される

龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される ハクビは記憶喪失

龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談 その席上コリムーニ老聖王が急死する

同年三月一〜三日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國が国境の町バクラで交戦、ソルトルムンク聖王国側大敗(バクラの戦い)

同年同月一〇日 ソルトルムンク聖王国の王城陥落 聖王国滅亡 ジュルリフォン聖王子は大陸最南端のツイン城に逃げ込む

同年五月三日 コムクリ村にバルナート帝國軍が襲撃、ハクビが白虎騎士団のバルゴー隊長を倒す 以後、グラフ将軍に助けられ、残党軍の拠点であるアユルヌ渓谷に到着する 

同年八月初頭 バルナート帝國とミケルクスド國連合軍がジュリス王国を滅ぼす

同年九月四〜五日 聖王国軍と帝國軍がツイン盆地で激突(ツイン城の戦い) 帝國軍ツイン盆地より撤退

同年一〇月一〇日 マルシャース・グール奪回の戦いにおいて、聖王国軍が勝利する

同年同月一五日 バルナート帝國とカルガス國連合軍がクルックス共和国を滅ぼす

同年同月二六日 バルナート帝國がゴンク帝國を滅ぼす

同年同月三〇日 ジュルリフォン第四十九代聖王誕生 ソルトルムンク聖王国の復活

同年一一月一一日 ハクビとバルナート帝國朱雀騎士団の軍団長ナンダが対峙する
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