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2010年07月19日09:05

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八大龍王伝説 【082 血戦!マルシャース・グール(十二) 〜ステイリーフォン聖王子〜】


いつもお読みいただいている皆さま、ありがとうございます

それでは早速、八大龍王伝説をはじめます


【082 血戦!マルシャース・グール(十二) 〜ステイリーフォン聖王子〜】


〔本編〕
「ムーズ殿!ここは退いてください ここにいる聖王子は偽者です」

ハクビはムーズに会うなりそう切り出した

「やはりそうか!さっきから疑問には思っていたのだがな…」

その時である

バルナート帝國のライアス軍の到着の知らせが部下から入った

ムーズは背後のライアス軍への対処を指示しつつ、ハクビとともに黄金の戦車に向かった

その時、黄金の戦車から一人の男が顔を出し、ムーズ将軍切り出した

「む・ムーズ殿!わ・わらしのことは、か・構わずに、せ・戦線を、り・離脱してください わ・わらしは、に・偽者ですから…」

「その声はステイリー様!まさか!」

ハクビの後ろから一人のシスターがびっくりして尋ねた

そのシスターはハクビと共に援軍でやってきたカリムであった

「あ・あっ!か・カリム様!れ・レナ様は、お・お元気ですか?」

「はい!あの節はありがとうございました」

その男に対してカリムがにっこり笑いながら答えた

ステイリーはマクスール将軍に所属していた黄金仮面を付けていた男で、カムイ城の戦いで気を失ったレナやカリムをはじめとするシスター達を介抱した人物である

「ステイリー?も・もしやステイリーフォン聖王子様ですか?おお!生きていらっしゃったとは…」

ムーズ将軍はびっくりしてステイリーに尋ねた

「は・はい!わ・わらしは、す・ステイリーフォンです!で・でも、わ・わらしは、ひ・必要のない者!

こ・ここで…に・兄さんの み・身代わりとして…、し・死にます む・ムーズ様は、い・生き残ってください」

「何をおっしゃる!!」

ムーズは黄金の戦車の中に入りながら続けた

「この爺にとって…ジュルリフォン聖王子様もステイリーフォン聖王子様も大切な御仁です ここで見殺しにはできませんぞ!」

ハクビとカリムも黄金の戦車の中に入ってきた

「どういうことなのでしょうか?」

ハクビはムーズ将軍に尋ねた

「うむ!ハクビ殿は知らないことであったな…実はこのお方は十年前の事故で亡くなったと言われていたジュルリフォン聖王子様の双子の弟君のステイリーフォン聖王子様なのだ」

ムーズ将軍は続けた

「十年前の夏、ジュルリフォン聖王子様とステイリーフォン聖王子様は三人の従者を連れ、近くの湖に舟遊びにいかれたのじゃ!その時、急に空が曇り大雨になったのじゃ

そして湖が荒れ五人の乗っていた船が転覆して、我らが駆けつけたときには、時すでに遅く、四人が死体としてあがったのじゃ 三人が従者で、一人が聖王子様だったのだが、ジュルリフォンとステイリーフォンの二人の聖王子様は瓜二つなのでどちらか判断がつかなかった

しかし、しばらくして水辺で倒れている聖王子様を見つけたのだが…その聖王子様がジュルリフォン聖王子様だったため、死体のほうはステイリーフォン聖王子様ということに必然的になってしまったのじゃ」

「しかしステイリーフォン様が生きているのですから、それではその時の死体は誰なのでしょうか?」

ハクビはムーズに尋ねた

「分からん!その遺体は歴代の聖王が眠る霊廟に葬られたが…はて?稀代なことよの?」

ムーズも首を傾げるばかりであった

「しかし、それではステイリーフォン聖王子様がこのまま生きて戻れば、それこそ王子(ステイリーフォン聖王子)の命が危ないのでは…」

「確かに…そうじゃな」

ムーズもハクビの言葉に頷かざるをえなかった

「そこから東へ一キロメートルの地点に来い その者は我輩があずかろう!!」

ハクビは驚いた

カムイ城で聞こえた謎の声が突然聞こえたからであった

もちろんこの声に反応したのは、ハクビだけであった

他の者にはやはりその謎の声は聞こえていないようであった

「お前は誰だ!」

ハクビは言ったが、答えはなかった

「どうしたのじゃ!ハクビ殿!」

ムーズが不審そうに尋ねた

「実は…」

ハクビは今、謎の声がしたこと

以前カムイ城でも同じことが起こったなど…ムーズをはじめカリム、ステイリーフォン聖王子にも話して聞かせた

「それは不思議じゃ!でも…」

ムーズは続けた

「それは信用してもよいと思うぞ!年寄りの勘じゃがな…」

ムーズはニヤリと笑った

その時、黄金の戦車の中にドンクが入ってきた

「ハクビ殿!ムーズ殿!お急ぎください 帝國軍の勢いが凄まじく、これ以上もちそうにありません」

「急ぐのじゃ!ハクビ殿!聖王子様を連れて、その『声』が示した場所に向かうのじゃ」

ムーズがハクビに言った

「ムーズ殿はどうされるのですか?」

「わしはここで帝國軍をおさえる その間に早よう」

「ムーズ殿をおいてはいけません」

ハクビのこの言葉に、ムーズは怒った

「馬鹿者!聖王子様を救うのが我が聖王国兵の任務であり義務だ わしの…この人和将軍の命令が聞けぬのか!!」

ハクビはうなだれ、そして言った

「分かりました!ステイリーフォン聖王子様を救った暁にはここに戻ります その時までご無事で…」

「おう〜わしは死なぬぞ」

ムーズ将軍はどこまでも明るかった

そして、黄金の戦車から降り、戦場に舞い戻っていった

「よし…コリード!おぬしは北方のヴォウガー軍にあたれ、わしは南方のライアス軍を相手にする」

同日午前十二時五十分頃のことであった



〔参考一 用語集〕
ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年 グラフ軍の副官)

ムーズ(ソルトルムンク聖王国の人和将軍)

ステイリーフォン聖王子(ジュルリフォン聖王子の双子の弟)

カリム(元ハクビ小隊の一人)

レナ(元ハクビ小隊の一人)

ドンク(元ハクビ小隊の一人)

コリード(ムーズ将軍の副官)

マクスール(天時将軍ブルムスの息子 将軍位)

ヴォウガー(バルナート帝國四神兵団の一つ玄武兵団の軍団長)

ライアス(バルナート帝國四神兵団の一つ白虎騎士団の軍団長)

ジュルリフォン聖王子(ソルトルムンク聖王国の王子)

ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国 第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)

バルナート帝國(北の強国 第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國 金の産地)

マルシャース・グール(元ソルトルムンク聖王国の首都であり王城 今はバルナート帝國が占領している)

カムイ城(ツイン城を守る城 通称『谷の城』)


〔参考二 大陸全図〕
フォト



〔参考三 マルシャース・グール周辺拡大地図〕
フォト



〔参考四 あらすじ〕
龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國(くに)が建国される

龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される ハクビは記憶喪失

龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談 その席上コリムーニ老聖王が急死する

同年三月一〜三日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國が国境の町バクラで交戦、ソルトルムンク聖王国側大敗(バクラの戦い)

同年同月一〇日 ソルトルムンク聖王国の王城陥落 聖王国滅亡 ジュルリフォン聖王子は大陸最南端のツイン城に逃げ込む

同年五月三日 コムクリ村にバルナート帝國軍が襲撃、ハクビが白虎騎士団のバルゴー隊長を倒す 以後、グラフ将軍に助けられ、残党軍の拠点であるアユルヌ渓谷に到着する 

同年八月初頭 バルナート帝國とミケルクスド國連合軍がジュリス王国を滅ぼす

同年九月四〜五日 聖王国軍と帝國軍がツイン盆地で激突(ツイン城の戦い)、帝國軍、ツイン盆地より撤退

同年同月一四日 帝國軍のマルドス城がハクビの策により陥落 帝國軍撤退

同年同月一八日 ハクビが帝國軍ケムローンをカムイ湖の戦いにて倒す 帝國軍カムイ湖より撤退

同年一〇月五日 聖王国ジュルリフォン聖王子、グール平原南にて、グラフ将軍等と合流 五千人の兵を前に演説を行う(グール平原での演説)

同年同月一〇日 聖王国軍がマルシャース・グール奪回に向けて進撃開始

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