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2010年04月24日19:04

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小説八大龍王 【065 人の和】


いつもお読みいただいている皆様、ありがとうございます

それでは早速、小説八大龍王をはじめます


【065 人の和】


〔本編〕
さて龍王暦一〇五〇年九月一八日午後〇時三十五分、カムイ湖沖で戦っていた聖王国の人和将軍ムーズやマーク達百名弱はようやく北岸に上陸した

ほとんどの者が傷を負っていたが、死亡した者は三名であった

つまり、帝國軍玄武兵団の副官ケムローンに射抜かれた三人だけが亡くなったのである

生き残った中で一番深刻な傷を負ったのは、おそらくマークであろう

マークの怪我はケムローンに右腕を射抜かれた傷であったが、それは完全に神経系を射抜いており、右腕はほとんど麻痺して動かない状態だった

治癒の呪文などによって回復は可能であるが、傷を負う以前の力には戻らないであろう

弓兵にとって利き腕は弓を引き、目標を定めることから非常に重要である

その利き腕に以前の力、それは筋力だけでなく矢に対する微妙な調整技術を含むが、それがなくなれば、弓兵としての存続が致命的である

まあ今はほとんどの者が生き残ったということを素直に喜ぶべきなのであろうが…

「お主がハクビ殿か!噂に違わぬ剛の者じゃなぁ〜!」

ムーズ将軍はそう言うと、大きく哄笑(こうしょう)した

ムーズ将軍は、真っ白な髪と髭を有しており、髭は胸のあたりまで伸びている

そして肌の色は褐色であり、同じく褐色の色をした大きな瞳を持っていた

とても齢(よわい)七十を超えているとは思えないがっしりとした体つきに鋭い眼(まなこ)であった

しかし笑うと、無邪気な童子のように屈託(くったく)がなかった

「ご援軍感謝いたします ムーズ将軍!援軍がなければ今回の戦い、勝利を拾えなかったかもしれません」

「確かに!しかしこのようなぎりぎりの勝利は、老いたこの身においても熱く血がたぎりましたぞ」

ハクビに答えたムーズ将軍はまた大きく笑った

ハクビも釣られて笑ってしまった

ハクビは思った

《この方(ムーズ将軍)は、名前のとおり人の和を尊ぶ人徳の人だ 良い方とめぐり合った》

と…

その反面、今回の戦いはハクビにとって非常に拙(まず)いものであった

《水上での戦いを軽く見ていた 機動力のなさがこんなに苦戦を強いられようとは 二度と同じような轍(てつ)は踏むまい》

その時、北岸の掃討戦を指揮していたエアフェーベンがハクビに話しかけた

「ハクビ殿!これを見てください!ハクビ殿が討ち取った弓兵(ケムローン)の懐(ふところ)から出てきました」

見ると、馬(ホース)の皮で作られた一枚の紙であった

それは、シェーレからケムローン宛に出された書状であった



〔参考一 用語集〕
ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年)

マーク(ハクビの親友 ハクビの小隊に所属)

ムーズ(ソルトルムンク聖王国の人和将軍)

エアフェーベン(マクスール軍の小隊長 以前はグラフ軍の小隊長)

シェーレ(帝國の女兵 今は聖王国の食客)

ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国 第八龍王ウバツラの建国した國)

バルナート帝國(北の強国 第七龍王マナシの建国した國 金の産地)

カムイ城・カムイ湖(ツイン城を守る城、通称「谷の城」 その城が中央の島に築かれている湖)


〔参考二 大陸全図〕
フォト



〔参考三 マルシャース・グール周辺拡大地図〕
フォト



〔参考四 あらすじ〕
龍王暦〇〇〇一年 八大龍王によって八つの國(くに)が建国される

龍王暦一〇四九年八月 ソルトルムンク聖王国にあるクルス山でハクビが発見される ハクビは記憶喪失

龍王暦一〇五〇年二月一五日 ソルトルムンク聖王国のコリムーニ老聖王とバルナート帝國のロードハルト帝王がバクラにて会談 その席上コリムーニ老聖王が急死する

同年同月一八日 ソルトルムンク聖王国、バルナート帝國に対して宣戦布告

同年三月一〜三日 ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國が国境の町バクラで交戦、ソルトルムンク聖王国側大敗(バクラの戦い)

同年同月一〇日 ソルトルムンク聖王国の王城陥落 聖王国滅亡 ジュルリフォン聖王子は大陸最南端のツイン城に逃げ込む

同年五月三日 コムクリ村にバルナート帝國軍が襲撃、ハクビが隊長を倒す 以後、グラフ将軍に助けられ、残党軍の拠点であるアユルヌ渓谷に到着する 

同年八月初頭 バルナート帝國とミケルクスド國連合軍がジュリス王国を滅ぼす

同年同月二〇日 ハクビを始めとする十人がジクリー山のガーンの砦に潜入 一方、帝國軍によりマルドス城陥落

同年同月二三〜二四日 グラフ将軍の軍がガーンの砦を襲撃し、占拠する

同年同月二七日 グラフ将軍の軍、モクル海岸に到着する

同年同月二八〜同年九月三日 ハクビ小隊、モクルラビリンスを使いヴォウガーの軍と戦う

同年同月三日 グラフ軍、ツイン海岸に到着

同年同月四〜五日 聖王国軍と帝國軍がツイン盆地で激突(ツイン城の戦い)、帝國軍、ツイン盆地より撤退

同年同月一四日 帝國軍のマルドス城がハクビの策により陥落 帝國軍撤退

同年同月一七日 ハクビ他五十人が、カムイ湖に到着

同年同月一八日 ハクビが帝國軍ケムローンをカムイ湖の戦いにて倒す 帝國軍カムイ湖より撤退
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