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2009年04月19日00:54

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八大龍王伝説 【002 白眉】

10日に一度アップすることにしました
月の9日、19日、29日にアップします
なるべく休まないようがんばってみます

(※ここからは、二〇一〇年八月一二日改訂バージョンです)

八大龍王伝説


【002 白眉】


〔本編〕
ホルム一家は四人家族である

ホルムと妻のスリサ、息子のマーク、娘でありマークの妹でもあるレナである

仕事はホルムの狩猟によって生計を立てている

さて、記憶喪失の青年だが、眉が白いところから「ハクビ(白眉)」と呼ばれることになった

当然、行く当てもないため、この家で家族として暮らすようになった

ホルム一家は皆、ハクビを温かく迎え入れた

そして、その年の一〇月一〇日、五人は連れ立って村祭りに行った

この年は大豊作で、祭りに来た人々は皆明るく、とても楽しそうであった

「ハクビ!こっちこいよ!」

マークがハクビを呼ぶ

「ハクビ!お祭りのメインイベントの『選定式』がもうすぐ行われるわよ!」

レナも楽しそうにハクビの手を引っ張って祭りの会場の中心部まで連れてきた

「今年は、五人が選定の儀式に臨むようだな!」

先に行って場所取りをしていたマークがレナとハクビに話しかけた

「センテイシキ?何がはじまるのだ?」

ハクビがマークとレナの顔を交互に見ながら聞いた

「そうか!ハクビは選定式を知らないかぁ」

「誰かハクビに教えてあげなさい」

ホルムとスリサが後から三人に合流した

「私がハクビに説明する」

レナが言った

「お前にうまく説明出来るのか」

「出来るよ!マークの馬鹿!」

マークの言葉にレナがふんとそっぽを向いた

そしてハクビの手を取ると

「こっちに来て…今話すから…」

そして家族三人から少し距離をとった

「ねえハクビ!ハクビはこの世界の人が生まれながらに兵士−つまりポーンになるっていうのは知っている?」

「ううん…えっ!そうなの?」

「まあ、人が勝手に決めた決め事のようなものだけど…『いついかなる時でもヴェルト大陸の者は動物や竜と戦う為の術(すべ)を身につけなければならない』っていう考え方が根底にあるの とにかく時代が平和であろうが、女性であろうが例外はないの…ここまで分かった」

「うん!何となく」

ハクビは頷いた

「そして十歳になった時に、一つ武器を選ばせて、同時に「ポーン」という称号を親や親戚から送られるのだけど… このコムクリ村では『選定式』として秋の村祭りの時に選定の儀式を行うの

そこで対象になる十歳の子供を全員集めて、その場で武器を選ばせて、さらにその場で村長自らが称号を与えるのよ あっ!式が始まっちゃう 後は見ながら説明していくわ」

レナはそう言うとハクビの手を引っ張り家族のいる会場の方へと戻った

会場の中央の広場には五人の子供と村長とその他数人の大人達がいた

村長が口を開いた

「今年も多くの稔りを得、ここに五人の者の選定式が無事執り行われることが出来る 前途洋々たる、このおちびちゃん達に武器を授け、ポーンの称号を賜ろう」

「先ずはバーノ!」

「はい!」

大人の呼びかけに、一番背の高い子供が前に出た

前には四種類の武器が置かれていた

バーノと呼ばれた男の子は、迷いなく槍を手にした

「それでいいのか?」

大人が聞いた

「これでよろしいです!」

とバーノ

ここまでは打ち合わせ通りなのであろう

村長が高らかに宣言した

「バーノなる者に『ランスポーン』の称号を授ける これからランスポーンとして、日々の精進に励むように…」

式はこのように一人一人に対して行われた

ハクビの横でレナがその都度説明していた

「ほら!今のバーノって子、槍を選んだでしょ!だから『ランスポーン』(槍兵)なの」

「次の女の子は魔道書を選んだわ 魔法の道具を選ぶと『マジックポーン』(魔兵)ね」

「三人目も四人目もランスか…」

「あっ五人目の一番小さい子、剣を選んだ!『ソードポーン』(剣兵)ね」

「今回は誰も選ばなかったけど弓を選んだら『ボウポーン』(弓兵)になるのよ!この四種類が基本だね 私がマジックポーンでお兄ちゃんがボウポーンだよ」

「ふうん そうなのか!ホルムさんやスリサさんは…?」

「お父さんが『ハンター』、第二段階の弓兵だよ!お母さんは『シスター』でやはり第二段階の魔兵になる」

「それってレナより上の階級?」

「もちろんよ!ポーンは皆第一段階の兵だけど、精進が認められると段階(レベル)があがっていくの 第二段階の上は第三段階、そしてさらに最終段階という位まであるのだから…」

「ハクビ!これから村長にお前を紹介する 一緒に来なさい」

ホルムが急にハクビに呼びかけた

選定式は既に終わっていた

ハクビはホルムに連れられて村長のいる場所にやってきた

「お主がハクビという者か!ホルムの親戚で間違いないか?」

「はぁ〜」

「何かはっきりしないのぉ」

と村長

ホルムが口をはさんだ

「私を訪ねて来る途中、山の中で遭難に遭いまして、そのショックで少し記憶が曖昧になっているようです」

「そうか!それはしょうがない!ところで兵の称号は?年齢は?」

ホルムが慌ててフォローした

「ランスポーンで二十四歳になります」

と…

とにかく村長への挨拶もすませ、ハクビは晴れてコムクリ村の一員となった

ハクビは翌日からホルムとマークと共に狩猟にでかけるようになった

ハクビは自分が倒れていたとき握っていた両斧(りょうふ)を常に身につけ、猟の時にはその斧を使った

ハクビは、迫ってくる獲物は長斧(ちょうふ)を振り下ろして仕留め、逃げていく獲物は短斧(たんふ)を手裏剣のように投げ仕留めた

その技量にはホルムも舌を巻くほどだった

ホルムが尋ねる

「本当にその斧には憶えはないのかい?」

「はい憶えていません しかし何故かこれは僕の物のような気がします 手放してはいけないという気持ちが強く感じます」

ホルムが続けて尋ねる

「記憶は戻りそうか?」

「いえ!思い出そうとすると黒い闇のようなものが頭全体を覆うような感じがして苦しくなります」

ハクビは困った顔をして答えた 



〔参考一 用語集〕
ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年)

ホルム、スリサ、マーク、レナ(コムクリ村の住人 ホルムが父、スリサが母、マークが息子、レナが娘)

ランスポーン(第一段階の槍兵)

ソードポーン(第一段階の剣兵)

ボウポーン(第一段階の弓兵)

マジックポーン(第一段階の魔兵)

ハンター(第二段階の軽装備の弓兵)

シスター(第二段階の白魔法のみを操る女性専用の魔兵)


〔参考二 大陸全図〕
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