10年くらい前、色々あって家族と離れて単身生活を送っている時期があった。
その時は放蕩生活をしていたと言えばしていたのだが、
仕事に身を入れるという点では物凄く効果的で、
一方で家族に対しては放任的な態度であった。
僕が単身で住んでいると知ってか知らずか、
短い間に何人もの女友達が入れ代わり立ち代わり僕の部屋に泊まりに来た。
酷い話だが、本当の事である。
その内の一人は、凄く以前に知り合っていた女性で
既婚だが離婚して単身者であり、
その前からまあまあ長い期間、
肉体関係があった(し、その後も続いた)のだが
部屋に泊まりに来たのはその時が初めてであった。
その人とは、大半はどこか旅行に出てデートしていたのである。
残りは元交際していた女性(当時は独身で現在既婚)と、
同級生の人(ずっと既婚)と
行きつけの居酒屋で仲良くなった既婚女性で、
その居酒屋で知り合った女性とは、泊まりには来たが、
色々あって泊めただけで、関係は拒んだ。
理由は色々あるが、後にも先にも「明確に拒む」というのは
その時だけであって、交際相手との云々では無くて
そういうシーンに普通は、「なる前に回避する」ものである。
その時も
「今、お店に来てるの」
と突然電話して来たので、仕事上がりで疲れていたところだったが
まぁ、良かろうと呑気にのこのこ出掛けて行ったのが間違いだった。
店に行くと、やはり同じくして知り合った男性の知人とそのお連れが
一緒に飲んでいて、既に彼女は結構ベロベロだった。
「困るよねぇ?」
と男はにやにやしながら僕に酒を勧めてきた。
その前の月に、僕は彼女の住む街に出張があって
帰りに彼女を呼び出して飲んで帰った事がある。
その「お返し」なのかな?などと勘ぐったがどうも様子が変である。
彼女は「物凄くセックスがしたい」と
酔った勢いからなのか連呼していて
「だったら、早く帰って旦那に抱いてもらえ」
と僕は即座に言ってやったのである。
寧ろ僕は、男性のお連れの女性が気になって
恥ずかしながらちょっと興奮すらしていたのであるが
「今から、彼とお泊りするのか?」
と軽くかますと
「ふふふ。いやねぇ」
とはぐらかすものだから、きっと彼とは既に
そういう事になっているに違いないと確信した。
まてよ
だとすると、この状況で呼び出された僕は
彼女の相手として呼ばれたのでは無いだろうか。
彼女の住む街は、その居酒屋からタクシーで10分ほどにある新幹線の駅から
新幹線で小一時間離れている。つまり、終電が早いのである。
「そろそろ帰らないと不味いよね。送るわ」
僕の家も新幹線の駅から近かったので、
呼び出されてタクシーで店に駆け込んだが
程なくして僕は彼女を拾い、タクシーで帰るという、
展開になっていた。
「ねぇ、泊めてよ」
タクシーに乗っている間、半分眠りながら、肩にもたれ掛かって
彼女は僕にそう呟いた。
確かに、彼女の街に行った時に面白半分に
「今度、デートしよう」
と誘いかけるような文句を言った罪はある。
その気にならないような魅力ない女性ではない。
だが、突然であり理不尽だったから
受け入れられなかったのである。
ぎりぎり最終の新幹線に間に合ったので
切符も買って、乗せてあげた。
酔った彼女は挙動不審そのものであったが
やれやれ、と言ったところか
夏の話であるから、もうその時点で汗だくである。
帰り道のドラッグストアで入浴剤とチューハイとロックアイスを買い込んで
帰宅すると、改めてシャワーでも浴びようかと
していた時である。
また、携帯電話が鳴った。
彼女専用の着信音を設定していたので、電話の主は直ぐに分かった。
「さっきはありがとう」
「気にしないで。今日はゆっくり休んでな」
それは彼女に言いつつ、自分に言っているのだ。
「どこやと思う」
「まだ酔うてんのん?」
「どこやと思うかって訊いてるのよ」
てっきり、彼女は自宅の最寄り駅からかと思ったら
どうやら、折り返し終電で戻ってきたらしく
僕の自宅の近くから電話していたようである。
最初から仕組んでたのか。。。
そこで最初に苛立ったが、何か彼女なりに思うところもあるのだろう。
セックスがしたいと言うのなら、お望み通りお相手しようか
くらいの軽い気持ちで駅まで迎えに行った。
「ねぇ、泊めてくれる?」
まだ酔っていたのだが、こちらも既に下心が湧き始めていたので
自宅に招き入れる事になった。
自宅までの短い道のりだが、僕は彼女の小さな手を
ぎゅっと握りしめて、体も彼女の方からぴったり寄せて来て
ムードは満点と言ったところだった。
恐らく、いや、それまでの実績から言えば
こういう流れで部屋に女性を入れたら
ドアを閉めた瞬間からキスを始めて
場合によってはシャワーも浴びず、避妊具もつけずに
直ぐにセックスを始めて夜通し激しく求めあうものなのであるが。。。
その日の僕は、彼女の泥酔の理由を質す冷静さが残っていた。
しかし
彼女が酔っていた理由は
彼女の夫が浮気していたからだという
それまでも怪しいところだったらしいのだが、
その日とうとう物的証拠を晒す事になって
それを彼女が夫に突き付けたのだそうだ。
すると、ものも言わずプイと外出されてしまったのだという。
それで腹を立てて、わざわざ新幹線に乗って
飲みに出かけだのだという。ちょっとした家出である。
だから、セックスがしたかったのである。
そう聞いて僕の下心は吹き飛んだ。
旦那の代わりにセックスをしてやるほど、僕はお人よしでも暇でもない。
百歩譲って最初から話を聞いていて
「慰めて欲しいの」と言われていたら
少しはその気になったのかも知れないが
僕は、男友達を介して飲みに誘われ
「セックスがしたい」のを先に知り
一旦、駅までお見送りした上で
その事情を知ったのであるから、腹が立ったのである。
部屋で、彼女は服を脱いだが
殆ど相手しないで、いや指で弄んだかな(笑)
兎に角、挿入しないで眠りに就いて
翌朝一番の新幹線の時間に彼女を送り返した。
帰り道でも不満げな様子だったが
「浮気された腹いせに、他の男と寝た」という
十字架は背負わさずに帰宅させたのだから
その後の彼女の立ち回りには貢献したし、悪い裁きだったとは思わなかった。
後日、例の男性の知人にその話をすると
「そりゃあ、可哀想な事をしたね。道理で暫く怒っていたわけだ」
と笑われた。
いや、理由は分かっている。彼女だって僕の前で裸になった以上は
覚悟も勇気も費やしたはずであるから
その時は黙って抱いてあげれば良かったのだと言う。
彼女は死んでも僕に抱かれた事を他人に言う事は無いだろう、と。
そりゃそうだ。
「でもさ。僕は彼女にはそんな義理も興味も無いんだけどね」
「それが残念だねぇ。彼女は君と『したいしたい』、って
君が店に来るまで連呼していたからねぇ」
「理由が分からないね。前に軽く誘った時は、やんわり断られてね」
彼女は、僕の誘いを断った後に
僕の日記かブログかを読んで
興味を抱いたらしいと、彼には吐露していた。
「長く持つんだろ。遅漏とか」
恥ずかしい事をズバリ指摘する。
「女が逝っても逝っても、ずっと入れっぱなしで続けるんだろ」
その通り書いてしまっていた。
「結構な事じゃないか。それを味わいたかったんじゃないか」
「僕の興味や気分は考慮されていないのね(笑)」
「ま、そりゃそうだ」
男にだって「気分が乗る乗らない」の問題がある。
特に僕はデリケートである。
一言、気の乗らない言葉を言われただけで
僕は萎んでしまう。
それに、一瞬でも愛おしさを覚えないとしたいとも思わない。
女性だってそうじゃないか
ぽっかりと開いた夏の終わりの休日になると
この時の出来事をしばしば思い出すのである。
他の残りの女性との記憶について述べると
ここが変な感じになるので割愛する。
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