渡辺美里がアーティストとして意識されたアルバムは前回紹介した「BREATH」からだったと思われる。
1st「eyes」では、アーティスティックな、程度で、まだまだアイドル色の強い作品だったが時代的にこれは「当たり」だったと言える。同じ事務所の白井貴子を意識した売り出し方だったと言われているが、いやいやどうして、白井貴子よりも評価されるべき作品に仕上がっている。
次作の「Lovin' You」はさらに意識を強め、ヒットシングルにも恵まれ、遂には作詞作曲まで挑戦して高評価を得る事になる。現在でも10代が発表した2枚組のアルバム(当時はLPとカセット)としては、日本では唯一無二の存在らしいが、そのトピックに負けぬ名作と言えるだろう。
そして件の「BREATH」は全曲作詞、一部作曲を手掛けたが、彼女の高まる人気の一方でコンポーザーというよりはパフォーマーとしての傾向をはっきりと見せる事になる。シングルの「It's Tough」は象徴的だが、他の楽曲も彼女のヴォーカルの魅力は満開だが、果たして楽曲が或いはアルバムが人々の印象に残る作品だったかと言われれば懐疑的だ。
しかし、それらのもやもやした印象をすべて振り払い、金字塔と言っても過言ではない彼女の代表作が今回紹介する「ribbon」である。
85年19歳でリリースした「eyes」、翌年誕生日前のリリースの「Lovin'You」、翌年21歳の誕生日直後にリリースした「BREATH」、さらに翌年5月に21歳で発表した「ribbon」と僅か3年足らずの間に4枚のアルバムを世に送り出した精力的な音楽制作には実に頭の下がる思いである。しかも着実にステップアップを行っていて、本作は「全曲外れ無し」という究極の出来、である。
このアルバムでは小室哲哉2曲、木根尚登1曲、佐橋佳幸2曲、伊秩弘将2曲、岡村靖幸2曲、大江千里1曲と渡辺美里自身が1曲が作曲となっており、曲ごとに表情が異なっているものの、それぞれの作品がひとまとまりになってアルバムを構成しており、全曲通して聴いても飽きが来ない作りになっている。
恐らく、そのバランスを取るために採用されたと思われるのが「19歳の秘やかな欲望」(作曲:岡村靖幸)の再録と「Believe」(同:小室哲哉)の2曲である。
前者は既に「Lovin'You」に収録された別バージョンをファンクを強調したリミックスとして収録しており、その間にデビューした作曲家だった岡村靖幸がデビュー後2枚目のアルバムを同時期にリリースした際にもセルフカバーするなど、シングルではない曲が短期間に複数の別アルバムに収録されるという珍現象を起こしている。
また後者は前作「BREATH」のリリース前に発売されたシングルであるが、非常に強い曲調のシングルで、小室作品らしい曲だが、アダルトでジャジーな「BREATH」にはコンセプトが合わず本作まで収録を見送ったという話である。
そんな具合であるから、それぞれの個性的な曲がいずれも突出し切らずに一つのアルバムにバランスよく収まったのではないかと思われる。
タイトルの「ribbon」にあるように、このアルバムのシンボリックな存在は一曲目の「センチメンタルカンガルー」であり、その最初の歌詞が「ribbon」である。作曲を担当する
前作「BREATH」から加わった佐橋佳幸は、渡辺美里の高校の先輩にあたる人物だが、さらに先輩のプロデューサー・清水信之が引き合わせたことで一気に美里の楽曲の看板コンポーザーとなるのである。
因みに佐橋の現在の妻は松たか子で、清水の元妻は平松愛理である。
全曲外れ無し、88年にリリースされた邦楽アルバムの中では三本の指に入る傑作、
と僕は思っているので
評価は★★★★★
1.「センチメンタル カンガルー」
2.「恋したっていいじゃない」
3.「さくらの花の咲くころに」
4.「Believe(Remix Version)」
5.「シャララ」
6.「19才の秘かな欲望(The Lover Soul Version)」
7.「彼女の彼」
8.「ぼくでなくっちゃ」
9.「Tokyo Calling」
10.「悲しいね(Remix Version)」
11.「10 years」
ログインしてコメントを確認・投稿する