公開初日に、『 ボーン・レガシー 』を観た。全く期待していなかったが、ボーンシリーズのファンの一人として、主役のジェイソン・ボーン不在で物語をどう締めくくるつもりなのか興味があったからだ。いや、むしろ、劇場予告編のキャッチコピー「 ジェイソン・ボーンは、氷山の一角に過ぎなかった 」という挑戦的な切り口が不愉快に感じたから、という方が正確だろう。ボーンなしで「 まともな映画 」に仕上がったのかどうかを確認するために劇場に足を運んだわけで、最初からハードルは高かったのは間違いない。いきなり評価を下すので、これからご覧になる予定の方はこの先、ご遠慮願いたい。
はじめに、この映画をシリーズの正統な後継作品として、『 ボーン・レガシー 』と名乗った勇気は称賛すべきだろう。私が脚本家か監督だったら、とても恥ずかしくて、シリーズに名を連ねるなどできない。『 ボーンの遺物(レガシー) 』ではなく、「 残骸 」と呼ぶ方がよほどふさわしい内容だからだ。この映画が『 ・・・レガシー 』だとすれば、ボーンの名をつけることで、その威光を最大限利用して、シリーズの熱烈なファンを動員できるという皮肉でしかない。『 ボーン・レガシー 』は残念ながら多くのファンが懸念した通り、生みの親ダグ・リーマン、マット・ディモン、ポール・グリーングラス達が築き上げた偉業を汚すだけの結果となった。
ポール・グリーングラスが降板させられ、主演のマット・ディモンまで出演しないと決まった時点で続編制作は諦めるべきだった。ボーン(マット・ディモン)不在のまま、彼のドラマと同時進行する「 もう一つのドラマ 」を描くことに何の意味があったのだろう。『 ・・・レガシー 』が前作『 ・・・アルティメイタム 』の映像を活用したり、登場人物を継承することで「 あたかもボーンが存在するかのごとく 」物語を展開するのは、しょせん小細工でしかない。ボーンの影が演出されるたびに、鼻白むばかりだ。前作の秀逸なシークエンス「 タンジールの追跡 」を意識した追跡劇も登場するが、肝心のアクションはもちろん、撮影も編集も雑で全く盛り上がらない。つい、苦笑してしまった。ボーンシリーズの高いクオリティで目が肥えたファン達が、こんな質の悪い作品で納得できるわけがないのだ。仰々しいがスケール感、スピード感に乏しく、なまじ「 ボーンの影 」を演出したことで物語全体のバランスが崩れてしまっている。これではフーテンの寅さんが登場しない『 男はつらいよ 』、ダースベイダーの登場しない『 スターウォーズ 』のようなものだ。芯がなく、気が抜けている。ボーン三部作がいかに優れた作品であったか、つくづく痛感させられた。
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