アクションスターとして、今や不動の地位を築いたジェイソン・ステイサムの最新作『 メカニック 』を観た。スタローンの『 エクスペンダブルズ 』で、彼の片腕を演じたステイサムが、スタローンをはるかに超えるアクションで圧倒的な存在感を示したのは記憶に新しい。『 メカニック 』はスピード感あふれる硬派なアクション映画だが、1972年チャールズ・ブロンソン主演の同名映画のリメイクだとは知らなかった。近いうちにオリジナルを観てみることにしよう。
この映画は、「 機械のように正確に標的を抹殺する 」ことでメカニック(機械)と呼ばれた殺し屋の物語である。彼の名前は、アーサー・ビショップ(ジェイソン・ステイサム)。殺し屋という職業はその特殊性ゆえに、凄腕になればなるほど個性的な殺人哲学を持っている。依頼された標的を確実に殺すことは当然として、自分が安全に逃げのびなければならないからだ。アーサーの場合は徹底的に殺人の痕跡(=自分の存在)を消し、それが殺人であると悟られないよう標的を殺すことにこだわる。事故死や自然死に擬装すれば、侵入者の存在を気づかれず、追撃を受けることもない。アーサーは標的の行動パターンを研究し、最善のプランでミッションを遂行するプロ中のプロ、組織で最も優秀な殺し屋だった。彼は長年、組織の幹部ハリー(ドナルド・サザーランド)の指示で仕事をこなして来たが、ある日、ハリーのパートナーである組織の大物サンダーソンから直接暗殺の指示が来る。標的は、ハリーだった。彼は組織を裏切って暗殺計画を外部に洩らし、出動した暗殺チームがそのために全滅したのだった。死んだ暗殺チームの中には旧知の殺し屋ベンジャミンの顔もあった。アーサーはハリーと会って真意を正したいとサンダーソンに伝えるが、暗殺チームの詳細は彼とハリーしか知らない極秘事項。ハリーの裏切りは疑う余地のないものだったが・・・・・。

「 殺人の痕跡を残さず、自らの存在を消す 」というアーサーの手法は、超人的な狙撃テクニックを誇る『 ゴルゴ13 』をも凌駕する完璧な殺人哲学である。いかに神がかりとはいえ、狙撃である以上、必ず弾痕や銃創を残さざるをえず、殺人の動かぬ証拠となってしまうからだ。『 ゴルゴ13 』の場合、常識をはるかに超える困難なシチュエーションの狙撃を成功させること自体、彼が関与した決定的な証拠となってしまうのだから、もはや本末転倒している。臆病な小動物のように強い警戒心が自らの身を守る、というゴルゴの信条から考えれば、『 メカニック 』のアーサーの手法こそ、ゴルゴの最終到達点であるはずだ。それほど、アーサーは進歩的で確実なのだと言える。しかし、アーサーがゴルゴより優れているのは「 そこ 」までだ。彼の場合、組織からの暗殺司令に黙々と従い、確実に標的を倒すことを最善としており、司令の中身を吟味することは全くない。これでは押されたボタンが機械的に動作するのと変わらない。ゴルゴなら、暗殺依頼の内容や標的について精査することを怠らず、依頼人の「 嘘 」はしばしば死のペナルティとして厳格に遂行される。誰であろうと、自分で調べて納得してから依頼を請けるゴルゴと、組織の司令に盲従するアーサーの「 殺し屋としてのあり方 」に大きな差が生じるのは至極当然であろう。映画『 メカニック 』の主人公アーサーはかなりの凄腕ながら、ゴルゴには遠く及ばない。
YouTubeのトレーターをリンクするが、これはネタバレ満載である。こういう何でもアリの映像は単に本編鑑賞の興を殺ぐものであって、予告編としてはいただけない。未見の方はご覧にならない方が良い。
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