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2011年07月15日08:29

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映画『 レバノン 』

ンタルDVDショップで見つけて、借りて来た。今まで色々な戦争映画を観たが、『 レバノン 』はあらゆる点で異色中の異色作品であることは間違いない。戦車内部で展開される密室劇を中心に、戦車の外で起きることは全て主砲光学照準器の視野内で見せるという手法は斬新で、面白い。しかし残念ながら、カメラを戦車内に留めるという制約が十分に活かされているとは言えず、「 極めて異色な作品ではあるが、凡庸な戦争映画 」になってしまっているのは、惜しい。名作『 ボート(原題:Das Boot) 』を引き合いに出し、「 『Uボート』の戦車版 」と予告編で銘打っているが、『Uボート』の制作関係者や戦争映画ファンが聞けば、噴飯ものであろう。

 物語は、レバノン進攻作戦に参加した、1輌のセンチュリオン戦車内部から始まる。乗員4人は、車長の優柔不断なアシ、操縦士は若いイーガル、砲手は臆病なシムリーク、装填手は反抗的なヘルツル。戦車は、空爆で破壊された小さな町の事後処理に向かう歩兵小隊と共に前進することを命じられた。街道を進む歩兵小隊に後続していると、前方から乗用車が猛スピードで接近して来た。歩兵小隊長ジャミールは、車長アシに威嚇射撃を命じ、威嚇射撃で停車しない時はエンジンを撃つように指示したが、砲手シムリークは実戦経験がなく、撃つことができない。歩兵達の一斉射撃を受け、乗用車は停止すると、中から銃を乱射しながらテロリストが飛び出して来て、激しい銃撃戦がはじまったのだが・・・・。


 戦車内部での乗員達のやりとりを中心にして、カメラが一切戦車の外に出ないことで観客は情報が遮断され、戦車内部にいるような閉塞感が体感できるのは良いと思う。しかし、そのアイデアひとつに留まって、他に何も工夫がないのがこの映画の致命的欠点だ。肝心のドラマはスカスカで、何が起きているのか把握できないのは勿論、結局、何が言いたいのかもよくわからない。

1.乗員が戦車兵に見えない不思議  4人の乗員が戦闘帽もヘルメットもかぶっておらず、ヘッドセットもつけていない。ヘッドセットがないのだから、彼らは戦車内部でインカム無しに肉声で会話するのだが、これは絶対ありえない。エンジンの轟音、射撃音が響く車内では肉声が聴き取れるはずがないのだ。しかも、彼らは汗と油と泥で汚れている上に、どうしたわけか乗員全員が「 やる気のないヘタレ 」である。乗員は車長の命令に反抗し、車長は何を為すべきか迷ってばかりで精神的に不安定だ。こうなると、戦車兵どころか、軍人にも見えない。

2.戦車内部が広すぎる不思議  センチュリオン戦車の内部に入ったことはないが、この映画を観る限り、砲塔内部は3畳ほどの広さがあるようだ(もしかしたら、4畳半かも知れない)。いくらセットとはいえ、広すぎるだろう。座席に座っているのは操縦士だけで、他の乗員がみな砲塔内で立ったまま会話するのだから、凄い。天井高すぎ! しかも、乗員以外に色々な登場人物が戦車内に入って来て、会話をする。歩兵小隊長は何度も砲塔内に降りて来るし、戦闘で戦死した味方の亡骸を収容したり、シリア人テロリストを拘置所代わりに拘束したり、どれだけスペースがあるのだ。せっかくの戦車内密室劇という設定が、「 ありえない展開 」に繋がってしまうのだから本末転倒だ。

3.主砲照準器で外を見る不思議  この映画では戦車兵が外を見るのは主砲の光学照準器だけである。これは、砲手の視点を中心としていることもあるだろうが、戦車兵が外を見るなら、車長のペリスコープか各員の観測窓の方が普通だろう。特に、コマンダーズハッチの観測窓は全周が見渡せるので、ずっと便利だ。砲手が砲塔を旋回させ、主砲照準器の視野内で外を観察すると、実は、味方に対しても主砲と同軸機銃を向けていることになる。これは非常におかしい。味方兵士の背中に、照準器のレティクルが合っているだけで妙に気分が悪い。カメラが戦車内から出ないのは良いとして、やはり、観測窓からの映像を多用すべきだったろう。ちなみに、実際の光学照準器映像ではなく、カメラ映像にマスクをかけ、レティクルを表示させたものなので、画角や拡大倍率などはかなりいい加減である。

 戦車が登場する映画だが、戦車らしさはほぼ皆無である。戦場を舞台にする映画だが、訓練された兵士達の合理的な動きは一切見られない。車長は一度も外界を観測することなく、誰だか正体不明の人物がいきなり砲塔に上がって、ハッチを開けて自由に出入りするのだから、もはや「 戦車 」ではない。もし敵だったら、乗員は手榴弾を投げ込まれて一瞬で全滅している。間違いなく、イスラエル陸軍最弱最悪のヘタレ戦車クルーだ。小部隊の戦術行動や戦車を理解している制作陣が撮っていれば、この設定をもっと巧く活かすことができただろう。そういう意味で、非常に残念な作品だった。
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