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2011年01月01日22:55

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映画『 レオニー 』

く予備知識なしに映画を観るのは良いものである。盟友プロデューサー氏から頂戴した4枚の前売チケットを無駄にするのは忍びなく、大晦日に家族で劇場に出かけてきた。タイトルは、『 レオニー 』。イサム・ノグチ氏のご母堂の物語で、どうやら中村獅童が出演しているらしいという情報しかない。もっとも、イサム・ノグチ氏が芸術家であることは知っていても、建築家なのか彫刻家なのかさえ私は知らないのだ。かくして、『 ハリー・ポッター死の秘宝 』を観たがっている家族を連れ、『 442日系部隊 』を観た横浜ニューテアトルに向かった。

 タイトルのレオニーとは、イサム・ノグチ氏の母親レオニー・ギルモアの名前であった。ドウス昌代氏の『 イサム・ノグチ 宿命の越境者 』をベースにして、監督の松井久子氏が脚本を書いているというのだ。なんという奇妙な符合であろう。ミリタリーマニアならば、442連隊戦闘団をテーマとした名著『 ブリュエラの解放者 』の著者として、ドウス昌代氏の名を知らぬ者はいない。彼女の著作を原案としているというだけで、自ずと期待は高まった。



 20世紀初頭のアメリカ。レオニー・ギルモア(エミリー・モーティマー)は大学で抜群の学業成績を上げて奨学生となり、2年生の時にソルボンヌ大学に留学を許されたほどの才女である。大学を卒業し、教職を経て、出版社に勤めた彼女は、日本からやって来た新進気鋭の詩人・野口米次郎(中村獅童)に編集者として雇われる。レオニーは米次郎の天才を見出し、米次郎もまたレオニーの優れた表現力と行動力を信頼して、いつしか二人は愛し合うようになった。米次郎が「 新しい試み 」として日本人女性の視点で書いた小説は、レオニーの校正で見事な英文学となり、彼は一躍人気作家にのし上がる。しかし、日露戦争を契機に米国内で日本人差別が激しくなったことで米次郎は米国での生活に嫌気がさし、妊娠したレオニーを残して逃げるように帰国してしまう。カリフォルニアの母親の元に身を寄せ、息子を出産したレオニーは大自然の中で子育てをするが、息子に名前をつけるのをためらったため、母親は大好きな場所である「ヨセミテ 」を略して、ヨーと呼んだ。米国内で出版を続ける仕事のパートナーとしてレオニーが不可欠な米次郎は彼女に再三「 日本へ来るように 」と手紙を送ってくるが、レオニーは自分と息子を捨てた彼を信じない。しかし、ヨーには父親が必要だと感じ、「 ヨネは信用できない 」と母親が止めるのを振り切って、ヨーを連れ、日本に渡る。横浜港でレオニー母子を出迎えた米次郎は、ヨーに「 イサム(勇) 」と名付けた。こうして、米次郎と三人の生活が始まるが、言葉も通じない異国の地は何もかもがアメリカとは違っていた・・・。

 物語は、唐突に過去と未来を頻繁に往復するため、多少なりとも芸術家イサム・ノグチに関する予備知識がないと戸惑ってしまう厄介な展開ではあるが、想像をはるかに超える良い映画だった。特に、レオニー母子が日本に移り住んでからが抜群に面白い。自己中心的で本来「嫌な男」に映って当然であるはずの米次郎が、明治という時代性と彼の天才ゆえの「気まぐれ」なのだと理解できたのは中村獅童の好演によるところが大きい。また、レオニーを演じたエミリー・モーティマーが実に自然だった。強く、確信に満ちた女性レオニー。レオニーなくしては、芸術家イサム・ノグチは文字通り誕生しなかっただろう。エミリー・モーティマーの出演作は他に知らないが、私には今後、レオニー・ギルモアにしか見えないと思う。普段はアクション映画、戦争映画しか観ない私だが、こういう繊細で詩情溢れ心温まる映画に触れるのも良いものだと痛感した。

 遅くなりましたが、謹んで新年の訪れをお慶び申し上げます。今年も備忘録替わりの日記とフォトアルバムですが、なにとぞお付き合いのほど、よろしくお願いします。
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