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2026年02月17日01:33

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印象操作

昔、僕は「いじめっ子」だった。

そう述べると叩かれる時代が来ているみたいだが、
自覚が無いからと言って完全否定できるものでもないらしい。
人は無自覚に人を傷つけている可能性があるからだ。

小学5年生の時に、仲の良い同級生が転校した事があった。
その時に「A(僕の事)がいじめたから」とその彼が言ったらしい。
本当はいじめてもいないし、周囲の人間もその発言を驚いて聴いていたようだ。
真相は親御さんの転勤による転校であり、
彼には虚言癖があった事が後に確認されるのだが、
彼がホームルームで転校を発表した時に
「(大阪から)東京に行く」と言ったので、僕が
「東京のどこや?」
と尋ねたら、
「コシガヤというところ」と答えたので
「それは東京じゃなくてサイタマではないのか」
とみんなの前で指摘してしまった事があった。
それがどうやら彼にとって屈辱的だったらしく、
質の悪い意趣返しをした、というものである。
もっとショックだったのは、自分が虐められていた、と主張した原因が
本人が皆の知らない所で別の子を虐めていた事が発覚して
かなりこっぴどく叱られた事が原因だった、という事である。
彼が転校して暫くして担任が調査をして
僕にそう教えてくれたのである。

しかし、ほぼ同時期に僕は別にトラブルに巻き込まれていて
教師からマークされていた。
僕は、隣の席に座る男子児童に彫刻刀で腹を刺されたのである。
男子児童はその理由を頑なに話そうとはせず、
軽傷で済んだ僕は相手を責める事もしなかったのだが
それも良くなかった。
「Aが彼を虐めたから、逆襲したのだろう」
と推測が働いたからである。

僕は生徒指導の先生に呼び出され、色々と質問された。
「どうしてお前はアイツを責めないのだ」
「大して怪我もしていないし、許してもいないけど責めもしないだけだ」
そう答えると更に先生は訝しんだ。
親御さんが学校に謝りに飛んできたが、「気にしていない」と答えた。
問題はその後である。
「じゃあ、彼とも仲良くしてくれるか」
と生徒指導の先生に言われた時である。
「どうして?」
僕がそう言い返したのである。
「クラスメートやないか」
諭すように僕に言う先生も些か苦し気であった。
「彫刻刀で人を刺すような人と、仲良くしろは無いよ。先生」
「もうしないから。先生からも言っとくからさ」
さらに苦しい説明である。
「授業でも何でもないのに、机に隠してある彫刻刀で人を刺す奴が
もうしない、とは俄かには信じがたいし、油断は出来ないと思う」

実際に、その後再び机の中から彫刻刀が発見されて騒動が起きるのだが
その時は刺すという事は無かった。
「先生、仲良くもしたくない人と『仲よくしろ』はないんじゃない?」
「そう言わないでくれよ」
「限られた仲良くしたい人とだけ、仲良くしたい。これが僕の気持ちね」
「じゃあ、彼を虐めないでやってくれよ」
その言葉で僕はキレた。
「誰かを虐めた事なんて、一度もないねん。
向こうが仲良くしたいと思っても
あまり相手にしなかったのかも知れないけど、
友達を選ぶ権利くらい、僕にだってあるやろ。
彼だけじゃない、同級生全員の被害妄想を
僕の上っ面の優しさで呑み込めとでも言うの?」
以来、事の真相に気付いた生活指導の監視の矛先は僕ではなくなった。
学校とは、とかく面倒が多い場所なのである。

暫くして大人になって気が付いたのだが
その後も友人と呼べる関係が続いたのは
当時「ガキ大将」と呼ばれていた連中だけで
ガキ大将では無かった多くの同級生たちも大人になると
皆、家庭を持ったり、社会の一員として活躍しているのである。
だが、当時のメンバーで集まるとどうしても
ガキ大将とそれ以外には溝が生まれがちである。
僕は高校から地元を離れたから、地元に居続けたら
普通の関係に修正が掛かっていたのかも知れないが
久しぶりに会うと「気後れする嫌な奴」と思われるのかも知れない。
「そんなことないと思うけど」
と地元の友人は言ってくれるが、逆の立場ならそう思わないのではないか
偉そうにしていた積りは無いが
中学時代に暴れ過ぎたせいで、良い印象はきっと無い(笑)
早熟で分かってくれる奴以外はたぶん無理であろう。

もう齢五十を過ぎたので、印象回復するチャンスは巡って来るまい。

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