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2024年11月04日23:31

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「国境ナイトクルージング」感想

 これは偶然出会った3人の若者たちの心の変化を描く青春映画。
 出演は「少年の君」のチョウ・ドンユイ、「唐人街探偵」シリーズのリウ・ハオラン、「あなたがここにいてほしい」のチュー・チューシアオ。監督・脚本はアンソニー・チェン。

 中国と北朝鮮との国境の街・延吉。上海で大企業に勤めるハオフォンは友人の結婚式に出席するため、延吉にやって来ていた。披露宴が終わり、翌朝のフライトまでの暇つぶしに観光ツアーに参加するが、不運にもスマートフォンを紛失してしまう。
 ツアーガイドのナナは、お詫びにとハオフォンを夜の延吉に連れ出す。そこにナナの男友達のシャオも合流しての飲み会は盛り上がり、ナナの部屋になだれ込んで朝方まで飲み明かしてしまい、翌朝、寝過ごしたハオフォンは上海に戻るフライトを逃してしまう。
 週明けまで飛行機の便はなく、ぽっかり空いた週末。シャオの提案で3人はバイクに乗って、国境クルージングに出掛ける。極寒の街をクルーズするなか、彼らの凍り付いた心がほどけてゆく……

 これは、ふとしたきっかけで出会った3人の若者が過ごした週末で、それぞれの人生を変える出来事に遭遇する――そんな、奇跡のような出会いと、人間関係の不思議さを、延吉や周辺の風景を織り込みながら描く青春映画。
 北朝鮮に近い中国の国境地域と言う事で、朝鮮族も多く暮らす延吉の街並み、冬の長白山(朝鮮民族発祥の地とされる白頭山)の風景、と映像は美しくも興味深くもあるし、先の見えない青春の鬱屈を、煌めく映像美と叙情的音楽で綴るのは、中国映画らしからぬ内容――と思ったら、監督のアンソニー・チェンはシンガポール人とのこと。なるほど。チョウ・ドンユイが見せる生々しいベッドシーンの演出にも納得だ。

 母からのプレッシャーで己を見失い、死ぬ事ばかり考えているハオフォン、怪我でフィギュアスケートの五輪代表選手を辞退して以降、何事にも打ち込めないナナ、あてもなく故郷を飛び出したのに、延吉に住む叔母の下で料理人をしているシャオ……そんな3人は、凍てつく延吉の冬空の下、周囲以上に心を凍りつかせている。心を閉ざし、享楽的に時を過ごす3人が、口には出さなくともお互いの境遇に共感し、やがて、固まった心を開いて行くのには心動かされる。
 その中で、決定的になるのが、長白山山頂の天池行……ここで、3人は冬眠をせずに放浪するクマと出くわすのだ――これには布石があり、天池にまつわる伝承として、人に憧れ人になりたいと願うクマの話が語られている。だからこそ、3人はクマに憧れられる人であるのかを己に問う事になる――正直、ここは判り辛いと思うし、自分の理解にも自信がない……だが、この後、3人はいずれも立ち止まる事を止め、新たな一歩を踏み出すのだ。

 3人の凍っていた心が解け、再び動き出すラストには胸が熱くなる――その意味では、邦題はいささか意味不明で、原題の「燃冬」、英語タイトルの「The Breaking Ice」の方が相応しいものであるように思えた。
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