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2023年05月07日20:59

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その名を知らぬ街

この大型連休は仕事の予定は入っていたが、中止になったり変更されたりで
概ね家の用事などで時間を使った。今日は予定されていた仕事は雨で流れた。
それはそれで結構なのだが、自宅にいると寝る以外に時間の使い方を知らない。
改めて思い知ったが、以前なら体を使った時間の使い方をしていたのだが、
先年から痛めている「五十肩」の傷みが酷く、それどころではない。

明日からは「通常運転」の予定だが、色々と慌ただしい。
元から詰め込まれていた予定の上に、順延された仕事が乗っかかってくるからである。
最近、しばしば昼食後の一服に利用する大阪駅前第一ビルの地下にある喫茶店
「マヅラ」は、店主は中国人である。姿は見なくなって久しいから
健康かどうかも知らないが後継ぎらしい男性がレジにいるので
機会を見つけて店主の近況を確認したいところであるが、
あれだけ閑古鳥が鳴いていた駅前ピルにもサラリーマンたちが戻ってきて
昼時は活況の様相である。
少し気になるのは、観光客らしき若い女が連れ立って入店する姿が
近年になって目立つことである。
純喫茶というかオーソドックスな喫茶店が激減し、
「おひとり様」用のブースも設置されている事が珍しくない喫茶店事情ではあるが
「昭和レトロ喫茶」を巡るブームが訪れたらしく、
店内でも携帯で写真をパシャパシャとる姿を見掛ける。
(冗談じゃないよ)
内心そう思いながら、その様子を煙草の煙を燻らせて遠目に見ているのだが
彼女たちにとっては、僕の「日常」の一部が「非日常」なのだろう。
どうでもいい事だが、時間の流れというか時代の変化を
感じずには居られない。
若かりし頃から、その喫茶店で午前中によく見かけていたサラリーマンを
今も良く見かける。少し禿げ上がり年を取った様子だが
いつもそこで一人座って長時間居座っている。
僕がその店に行く時間は以前は不定期だったが、最近は固定されていて
不定期だった頃は商談で入ったり休憩で入ったり時間潰しで入ったり
色々用途が分かれていたのだが、現在は完全に「食後の一服」である。

この喫茶店をはじめとする、「駅前第〇ビル」の地下に展開する数多くの飲食店は
殆どが昭和の中期にこの地域が再開発される時に、
地上部に不法占拠していた店たちの転じた姿である。

僕が幼いころに、父親に連れられて大阪に出てくる時は
まだ阪神電車の福島駅は地上にあって、野田駅も高架ではなかった。
今の福島駅の地上入り口付近から地下に潜り、阪神梅田駅に繋がっていた。
大阪環状線もその頃にやっと「環状」になったのであり、
まだ全線が繋がっていなかったように思う。
そんな折に、父親が「ここが旨いんだ」と連れて行ってくれた
お好み焼き屋が第一ビルの地下にあった(随分前に無くなっている)。
その店を探し始めたのは大学生の頃だったと思うが、
以来、駅前ビルの地下は僕にとっては「巣」のようなもので
地上部はあまりよく知らないのだが、地下にはやたら詳しく、
最近では上にも下にも詳しくなってしまった。

だが、そんな大阪キタの「九龍城」である駅前ビルにも
とうとう分かれ目が訪れそうである。
以前の中央郵便局があったところに見上げるばかりの巨大ビルが
今まさに完成しようとしているのである。
KITTEになるのかどうかは分からないが、
鉄道駅と一体化した本格的な「駅ビル」になる事は間違いなく、
完成してオープンした暁には
人の流れが劇的に変化するのではないか、と言われている。

思えば、高校生のころまでは、現在のヨドバシカメラ梅田のある場所は
ダイテツと呼ばれた「大阪鉄道局」の重厚な建物が鎮座していて、
ストライキばかり打って、私鉄と比してもろくに顧客の輸送に無頓着だった
国鉄の本丸があった。民営化してJRになる時に
現在の、場外馬券売り場裏にあるJR西日本本社ビルに移ったのだが
その西側に大きく展開していた貨物駅やらコンテナヤードが
今度の「うめきた再開発」の中心になるようである。
まだ立ち入りが自由だった頃は、壊れたフェンスから中に入って
うろうろした事もあったが、現在ではちょっと考えられない。

そうやって考えると巨大ターミナルである大阪駅のすぐ北側の
「超」一等地は、30年近く放置されていたのだから、
JR西日本も何を考えていたのかと思う。
実は、再開発は20年ほど前を目標に、当初進められていたのだが
バブル崩壊でご破算になってしまい、このような展開になったのである。
同様に
舞洲や夢洲といった大阪湾の巨大埋め立て地も
巨額の税金を投入して開発したにも関わらず、
荒れ地のまま長年放置されてきた。
ここ10年、いやここ5年の「巻き返し」は万博見合いなのだろうが、
その前は2000年もしくは2008年の実施を目指していた「大阪五輪」の
開催予定地として埋め立てを行っていた事を
多くの人は忘れてしまっているんじゃないか。
2021年にエセ五輪を東京で開催したので、
今度こそ日本で五輪は当面は行うまい。
東京でやる意味は殆どない!と繰り返し訴えてきたのであるが、
まさか一般観客入れずにやる五輪を「やった」とカウントするほどに
地に落ちるとは思わなかった。
「電車が桜島から伸びて、夢洲まで行くんだよ」
と鉄道研究会に居た同級生に教えてもらって30年。
まだいつ延伸するとは決まっていないようだ。

僕の「巣」がいよいよ役目を終えるのか廃れていくのか、
そういう分かれ目を迎えようとしているのだが
僕の日常は変わらず大阪駅前ビルにあり続けるのだろうか。
それすら自分でも分からないのである。
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