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2023年04月09日12:30

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がんばれ、将棋の渡辺くん

先の第48期棋王戦で、虎の子のタイトルだった棋王位を遂に藤井聡太に奪われ、
渡辺明から藤井が奪ったタイトルは3つ目となった。そして
4つ目が名人のタイトルである。
未だ藤井はタイトル戦番勝負は全勝で、挑戦者としてタイトルホルダーに挑んだ時、
タイトルホルダーとして挑戦者に受けて立った時、負け知らずである。
従って、ここ3年の間次々と
自らが奪取したタイトルを藤井に奪われていった渡辺は
藤井の顔は見るのも嫌なほど苦手にしているはずである。
無論、逃げるわけにも戦わないわけにもいかない勝負の世界で
「対策を練って、勝つ」以外に出来る事はあるまい。
第1局は渡辺の先手番であり、ここの勝敗が趨勢を大きく左右すると
周囲は目していた事もあり、渡辺の敗戦はこの
お気楽極まりない見出しも無理からぬ印象を与えてしまった。
しかしながら、彼は藤井の主戦法である「角換わり」の対抗策として
角道を止めて対峙する戦略を採った事からも
新たな戦略で「対藤井」を目指している事が明らかであり、
決して気弱に向き合っているのではないと感じるところだ。


渡辺は藤井のほか森内、郷田、羽生以外にタイトルを奪われたことはなく、
初めて年少者の藤井に奪われた時の彼の敗北は、
将棋界の世代交代を強く意識させるものであった。

つい先般も羽生善治が王将戦の挑戦者となり、
タイトルホルダーの藤井に挑んだ時も「世代交代に抗う」という構図が
マスコミ的には面白おかしく扱われていたのであるが
今朝4/9付の毎日新聞に丸山という記者が
人物像を中心に彼の記事をデカデカとスペースを取り書いていたが
記者本人が良く分かっていると思うのだが
「そんな簡単なもんじゃない」世界が棋界には訪れているのである。

将棋の人気は一定ではなく、ある時期にヒーローが現れ、
アンチヒーローが登場し、盛り上がりを見せる。
それが平らかになると、瞬く間に人気が低下し、
それまでの盛り上がりが信じられないほどにつまらなくなる。

今から27年ほど前、史上初めての7冠同時制覇の偉業を達成したのは、
羽生善治であり、それ以降の将棋は長期にわたり低迷した。
様々な「新手」が開発され、羽生にぶつけられたが
殆ど羽生には通用せず、次の世代の台頭まで20年かかる事になった。
羽生の前には谷川浩司、中原誠、大山康晴という
同じようにスーパースターがあったが、
大山には升田幸三、中原には米長邦雄、
そして本来なら谷川の相手が羽生だった筈だが、年齢差があり
あっという間に抜き去って、羽生が「1強」となってしまったのである。

言うなれば「羽生より年長の世代」はもう通用しない、事を
羽生が示してしまったわけであり、
1995年の羽生の7冠達成以降で羽生より年長者がタイトルを持ったのは
その後も羽生とタイトル争いを続けた谷川を除けば皆無なのである。
現・連盟会長の佐藤康光が僅かに1歳年上で
タイトルホルダーになった例もあるが、プロ入りは羽生より遅く
「後輩」扱いであり、むしろ「チャイルドブランド」と呼ばれた
「羽生世代」の一人として「同年代」扱いされている。

はっきりと羽生時代が終わりを告げたと言われた時期は
2018年の夏だと言われている。
羽生が棋聖戦に敗れ、竜王1冠に後退し、
8人が8つのタイトルを分け合っていた時期があった。
タイトルの序列1位が竜王であるから、形の上では羽生が頂点にあったが
そのような事態は20年余り無かったことで、現にその年の秋に
羽生は竜王を失冠し、29年ぶりにタイトル無冠となったのである。
羽生は29年間タイトルで呼称を持っていたため、
初めて「羽生九段」と呼ばれる日が来たのである。

何が言いたいかというと、この時と同じ流れが
藤井に置き換わって起きつつある、と指摘したいのである。
AIによる研究が進んで序盤将棋の真価が著しいとされる現代将棋においても
藤井はAIを利用した将棋に勝つ力を持っている。
無論、もっと進化したAIで藤井将棋を研究すれば、
それはそれで良い勝負ができるかも知れないが
それを乗り越える術を知っている、とでも言うべきだろうか。

テレビや中継サイトで「評価値」を見ながら観戦している人は
もうお気づきだろうが、殆どの手を「最善手」で指している藤井が
稀に最善手ではない手で動いた時、決まって相手も釣られて手を乱すのだ。
つまり、AI研究が及ばない「次善手」を使って
相手の最善手研究から逃れることができるのである。
この技術は後手番で主に発揮されるわけであり、
藤井は先手番の時はそもそも有利とされる「最善手」を指し続ければ
終始優勢に進めて勝てるのだから、誰も太刀打ちできないのである。

若干二十歳にしてこれであるから、これを打ち砕くには
早くも次世代の登場が望まれる、というわけである。
250人から居るプロ棋士の中で、彼より年少者はまだ僅かであり
次世代の台頭にはまだまだ時間がかかりそうである。
この時間稼ぎのためには、年長者がしっかりと対抗していくしかなく
そういう思いも働いて、名人戦では渡辺を応援する声も大きいと聞く。

「将棋が、終わってまう」
僕はそういう危機感を抱いているのである。


■藤井六冠が先勝=記録更新へ「いいスタート」―将棋・名人戦
(時事通信社 - 04月06日 22:00)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=7366101
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