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2018年03月03日07:12

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映画『 15時17分、パリ行き 』


事が煮詰まって、どうにもならなくなったところに、盟友P氏から映画への強烈なお誘いが入り、乗る。彼も相当、煮詰まっていて、目の前の仕事から逃避したかったようだ。

 『 15時17分、パリ行き 』は、3人のアメリカ人男性が欧州旅行中、アムステルダムからパリに向かう特急列車の車中、遭遇したテロ事件で何を見、いかなる行動をとったのかを描く映画である。予告編で観た時から、その緊張のシーンに釘付けになっていた。他の乗客が撃たれ、アサルトライフル(AK)を構えたテロリストが目前に迫る時、人は何ができるか?? 自分に真摯にそう問えるなら、この映画は観る価値がある。そうではなく、単に車中でのアクションシーンを期待して劇場に向かったとしたら、おそらく、期待外れに終わるかも知れない。事件が事件だけに、スリリングな展開、大きなどんでん返しという点では、同じクリント・イーストウッド監督の前作『 ハドソン川の奇跡 』に比べると、かなり小粒である。展開がよく似た『 アメリカン・スナイパー 』と比べても、同じだ。しかし、『 15時17分、パリ行き 』が、真面目に、丁寧に作られた「 良い映画 」であることは間違いない。

 物語は、アムステルダム駅ホームに向かう、テロリストの後姿から始まり、同時に、事件に遭遇することになるアメリカ人男性3人がなぜ親友になったのか、彼らの小学生時代に遡って、現在と過去が事件当日まで交互に描かれる。スペンサー・ストーン、アレク・スカラトスは共にシングルマザーに育てられ、小学校では二人とも問題児だった。母親二人は小学校から面談に呼び出され、教師から「 注意欠陥障害(ADD) 」だからと子ども達へ薬の服用を薦められるが、母親は拒否。さらに、「 統計上、大人になってから犯罪者になる可能性が高い 」と教師に言われると、彼女は「 私の神は、統計の数字より偉大です 」と言い放って、席を立った。母親たちは息子をキリスト教教育主義の小学校に転校させたが、スペンサーとアレクはそこでも問題児であることは変わりなかった。教師に反抗して校長室に呼ばれたある日、校長室から出て来たアンソニー・サドラーとすれ違う。アンソニーは口が達者で、他人をトラブルに巻き込む天才だから、決して彼に近づいてはいけないと校長に厳命されるが、スペンサーとアレクはアンソニーと気が合い、いつの間にか親友になって行くのだった ・・・。


 この先、ネタバレあり。まっさらな状態で映画をご覧になりたい方はご注意願いたい。











 この映画の大きな特徴は、事件に遭遇した3人の若者が原作者であると同時に、自分たちが本人役として主演していることだ。これは、事件の当事者である彼らが彼ら自身の役を演じることをクリント・イーストウッドが強く希望し、実現したようだ。驚くことに、車中に居合わせた乗客たちも、事件に遭遇したご本人なのだという。役者ではない本人が演じることがリアリティーに繋がるのかどうかは不明だが、これまでの映画とはやはりどこか違った印象を受けることは明らかだ。おそらく、イーストウッドは前作『 ハドソン川の奇跡 』で大量の素人さんを「 本人役 」で出演させた経験から、今回もそうしたのだろう。

 事件については、書かずにおく。ただ、

 「 5時17分、彼らは運命の列車に乗った 」 、3人の若者がなぜ、その列車に乗り合わせたのか。なぜ、彼らは行動したのか。それは決して偶然ではなく、運命(必然)であったことを観客は感じ取るはずだ。そして、彼らが生きて帰ることができたのは、間違いなく「 奇跡 」である。少なくとも、私も友人もそれを確信して、劇場をあとにした。

 我々は海外で実際にAKを何度も実弾射撃しているが、ファクトリーロードの実包が不発(ミスファイア)を起こしたことは一度もない。また、AKそのものもタフな銃器で、手入れをしなくても動作不良にならないことで有名だ。苛酷な戦場でAKが好まれる所以である。テロリストが、急接近してくるスペンサーに向かってトリガーを引いた、正にその時、薬室に装填されていた初弾が不発であったことは確率的に奇跡としか言いようがない。
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