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2016年09月19日23:54

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ぼくたちの失敗

日記が暫く停滞していたが
やはり仕事が立て込んでくるこの時期は例年のように
停滞してしまっている。
まだ大きなヤマは乗り切れていないが
今年に限ってはヤマが長いのでこれからである。

先日、の失敗談。
仕事で詰めて相手をしてもらっていた
某女史と打ち上げで食事をする事になった。
今までのパターンだと、こういう時に仕事をやり切った充実感から
セックスになだれ込んでしまうことも多いのだが
僕もいい年だし、相手も微妙な年齢で
なかなかそういう展開にはならなかった。
それはそれで良いんだけれども

そもそもが
1対1で食事をする機会が訪れようとは全く思わなかった。
今回の仕事も元々は僕が先輩で部下である某ワキガの男に命じて
担当させていた仕事だったのである。
真っ白の状態からどうにか仕事の形にするという作業が苦手な彼は
「できない」
と言い出したので
「だったら、僕がやるわ」
とあっさり引き取って自分の仕事にしたのである。
この時、相手の担当者は少し年下の男性であったが
今年になって女性に担当者が代わってしまったのだ。

さて、関係している人が次々と離脱していって
打ち上げがたった二人で行われようとは
相手も僕も予想だにしていなかったのだが
半個室の、広い部屋にテーブルが2つだけの
焼肉屋の一つのテーブルを広々と使って
お肉を焼き始めるころには
キャッキャ言い合いながら仲睦まじいカップルのようになって
食事を楽しんでいた。
元々女性を相手にそういう席で盛り上がるのは苦手であり
ブスッとしたまま話に相槌を打つだけか
ジッとしているとウトウトし始めるのが相場だった。
特に、自分以外の人間が勝手に喋って盛り上がるような席では
大人しくして、他人の話に頷くだけで時間を過ごすことが多いのだ。

そんなわけだから
女性と差し向かいで食事するとなると
何を喋っていいのか分からないし、
共通の話題も乏しい。5歳も年を離れると興味の対象もまるで違うのである。

ところがこの晩は違った
相手とは結構長く仕事で根を詰めて顔を突き付け合わせてきたし
共通の話題も多いので
一緒に居る間は、会話が途絶えることはなかった。
酒も付き合えるし、盛り上がることこの上なかった。

「ちょっと電話してきます」
僕が席を外して、会社に電話して戻ってくると
空いていたテーブルに年配の男性と
中年の男性、さらにその娘と思しき小学生の女の子が座っていた。
空間は広かったが、その中に二組の客、となり
何だか変な空気になっていた。
週末の焼肉屋の客は何となくベタな関西人が多く
声がでかいのだ。

「おっちゃん。聞いてくれや」
中年の男性が絡み口調で大声でわめく。
「まぁ、ええから。肉を食べえや。お嬢はどんな肉が好きなんや」
「アタシは、柔らかい肉なら、何でも好きや!」
思わず吹き出しそうになったが、それは堪えた。
そんな会話が全部聞こえるくらいの声の響き具合だから
艶っぽい会話も難しくなったし、何しろ子供がいる。

「俺は。。。肉はもう食わへんのや。婚活せなアカンからな」
中年男が出し抜けに大きな声で言った。
「半年前まで、分からんかったんや。あの女とアイツの居場所」
「それはお前、見つかったんやから良しとせな」
「そうやないねん、あの女は鬼や」

大して酒も飲んでいないし、
僕は一度もそのテーブルの方を見もしなかったし
何の確認もしなかったけれども
中年の男が壊れたテープレコーダーのように何回も言うので
十分に状況は分かった

その男には、妻が居て
隣に座っている女の子ともう一人男の子の二人の子供がいた。
妻は、男に何も言わず
男の子だけを連れて家を出て
半年前に行き先が見つかった。

男の子は今年7歳らしい。
男は、やり直すつもりで
弁護士に相談して妻に接近を試みたが
つい最近になって元妻は
新しい男と入籍したらしい。
ということは、どこかのタイミングで離婚が成立したか
最初からその親子は内縁関係にあったのかどちらかである。

そして、最近入籍したことで
男の息子は、戸籍の上で元妻の新しい男の扶養に入り
「親権を取り戻すのは無理や」
と嘆いているのである。
それと婚活とは全く別の問題であるが、
それを年配の男性が宥めている、というのが
その席の主旨らしい。

相手の女性は独身だが僕は結婚していることは知っていて
いわゆる仕事をやり切った高揚感に任せて
その場限りの夜の契りを交わそうという
何となく艶っぽい空気が漂っていたのは事実だが
隣のテーブルの会話が生々し過ぎて
それらは吹き飛ばされてしまった。

「お前の無念は分かる。しかしな、今分かってる事を踏まえて
前に進むことを考えないとアカンやろ」
年配の男性が含蓄ある言葉を吐く。
「せやけどな、アイツは。アイツは鬼や。
自分の都合で子供らの兄弟を引き裂いても平気で
最近、入籍するまでそんな事はちっとも言わなんだんや。
メールで連絡だけ、それも自分の都合のいい時だけ返信してきてな。」
辺り構わず大声で喚く

「おとうちゃん、おっちゃんも言うてるんやから。お肉食べな」
娘は健気に父親の皿にお肉を運ぼうとするのだが
「俺はエエと言うてるやろが!」
と更に大声で激高する。ガチャンと皿を避ける音がする。
「お前、お嬢が何を悪いことしたと言うんや」
年配の男性も静止する。
クックックッと中年男性は嗚咽している。

もう、目の前の色っぽい女性を口説くような気分ではない。

「あのな。あの子(元奥さん)が、出ていったんは
お前にも原因があるんや。それは分かるな?
せやから、そこから前向きに考えた時にやな。
お嬢が横に居てくれてるのは救いやと思わんか」
年配の男性は男に、前向きに生きる事を諭す。

「あの女は、鬼なんや」
「違うんや。お前に原因があるんや」

こちらも会話が進まない。
次はいつ会うのかわからない。
ひょっとしたら、今回で仕事を一緒にするのは最後ではないかと
僕は思っている。
だが、次にもう一度仕事をする機会があっても
僕は先輩だが部下の某ワキガ男にこの仕事を振ろうと思う。

ワキガ男は
いつまで経っても自分が
「仕事だけは出来る」
と信じているようだが
仕事も出来ないし、ワキガのせいで女性も近寄らない。
「昔、結婚を約束した女も居たんや」
と言うのだが、誰も顔も見たことが無ければ
今のワキガにも気づいていない。自覚がないのである。

僕は
いや、僕たちは幾つも失敗しているのかもしれない。

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