中国を旅したときのこと。
神戸港から船で天津に向かうと
2泊3日で到着する。
そこからどうにかこうにかして
白タクで北京市内に到着したときは既に夜も更けていた。
道中で知り合った、合計7人の日本人で中国最初の夜は
大いに盛り上がり酒を飲んだりしたのである。
しかし、トラベラーズチェックも日本円も「どこか」で
中国元に替えないと宿泊代も食事代も払えないし
本来の目的地である西安の勝利飯店というところにも向かえないのである。
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学生寮の仲間であるその友人の名はタンゲという。
その後、彼は流転の人生を送るのであるが
タンゲは西安でスリに遭い
帰国するための航空券などを失っているのである。
現金も僅かに数万円しか残っていないという。
幸い、数万円あれば数週間は中国内で滞在できる。
そこで僕は彼の帰国費用分のトラベラーズチェックと
自分の旅行費用分の日本円を持って旅に出たのである。
因みに金額はどちらも7万円。
結果から言うと、最初の船賃は12000円
帰りの船賃は22000円だった。
旅程の日数は26日で
うち、船中泊が4日ある。
タンゲは7月末に中国に渡って1週間も経過した頃に
西安に着き、そこでスリに遭っているのだ。
それからエアメールを発送して
下宿している寮に届くまで4日が経過していた。
消印との日数差はそんなもんだった。
それから船を予約して、
翌週早々の船で僕は天津に向かった。
そこでも2泊3日。
当夜のうちに北京には入ったが
まだそこからどうすれば西安の方に移動できるのか分からなかった。
一泊して、日本円を中国元に換金するために
建国門の前にある友誼商店というところの
外貨交換所に行くことになった。
数年前にそこで換金したことがある、と言いだしたのは
「染谷」さんだった。
「仮に無くなっていたとしても、近くに幾つか国際飯店があるはずだから
そこで換金できるだろう」
と軽く考えていたようだ。
「じゃあ、そうと決まったら!」
とピエールが「人体の秘密展」に誘ってきた。
「どうせ、午前中に他にやること無いだろう」
楽天的な男はさすが違う。
一泊の宿泊代は最初に泊まった宿は
ひと部屋が105元だった。
冷房が完備している個室にはベッドが3つあって
3人で泊まれば、1人で35元だが
一人で泊まると高くつくのである。
因みに、最初の晩は青学コンビの片割れのスーさんと
染谷さんと三人で泊まった。
ドミトリーという同じ部屋にベッドが並ぶだけの
共同房で泊まるのが一番安くつくのだが
多少お金を払っても、少人数での宿泊を選択したのが
この3人である。
旅慣れているはずの染谷さんも同室にしてくれたのは
色々考えあってのことに違いない。
僕が何回か行った「人体の秘密展」はいずれもインパクトがあるものだったが
この時見た、展覧会が
一番グロテスクで一番生々しく
強烈で忘れられないものになった。
人体の秘密展を見たあとに道端で売られていたシシカバブ店で
何本か食べたシシカバブを
青学コンビの二人は食べた直後に吐いた。
シシカバブは一本1元と一本3元とがあったが
安い方はパサパサで
高い方はしっとりしていたが
そいつが良くなかった。
直前まで切り刻んだ人体の解剖見本を見ていたわけだから
口の感触と脳内の記憶がリンクしてしまったのだろうか
北京南站は通常は「ナンジャン」と言われていて
永定門近くにある。
そこから徒歩で北に4キロほど北上すると
前門という紫禁城の真南にある門に面した大通りに到達するのだ。
そこまで行くと、東西に走る地下鉄に乗ることが出来る。
昭和の時代にはよく見かけた競輪場の
車券販売所によく似た手売りの薄汚い窓口で
枚数だけ告げると素早く券をもぎってくれる。
それを見せて改札をくぐって、出るときに渡す、というのが
地下鉄の乗り方だった。
今は自動改札も普及していると思うが
昔ながらの改札というのは実に強いノスタルジィを感じさせる。
前門站から東に何駅か行くと
建国門站という駅にたどり着くのである。
昔の北京城の見取り図でいうと
おおよそ右下の方にある位置だけれども
その辺にお洒落なお店も集中している。
いや、していた。
それもこれも
2008年の北京オリンピック開催に向けて
当時あった古い町並みの殆どが失われてしまっている。
お洒落なお店というものの概念というか定義も変わっているはずだからである。
そんなこんなで建国門前の友誼商店で
待望の外貨交換を行った時には
すっかり夕方になっていた。
タンゲがSOSを発信してからは12〜15日が経過しているはずであるが
僕も僅かな予備知識で計算した積もりだったが
「中国に入ってから一週間程度で西安に入る」との目標を掲げていたのである。
「明日、西安への切符を買いたい」
染谷さんにそう告げると
「週に何便かしか出ていないけれど、直通特急(直快)に乗らないと
しんどいと思うよ。お金あるんなら紫金車とかいう
高い列車に乗ればいいけど。。。片道3万円くらいするよ」
もっと深い問題もあったので、
とりあえず情報収集のために
僕たちは北京駅に向かうことにした。
「夜になったら、ブルースター食堂で!」
という合言葉でそれぞれ解散した。
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