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2016年04月24日08:26

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映画『 提督の艦隊 』


イミクAkiさんのお勧めでオランダ映画『 提督の艦隊 』(原題:ミヒール・デ・ロイテル)をレンタルビデオで観た。いや、これは驚いた。帆船時代の海戦を描いた、これほど素晴らしい映画が存在したとは、夢にも思わなかった。2004年に公開され、戦争映画ファンに大いに支持された『 マスター・アンド・コマンダー 』を面白いと感じた諸氏はぜひご覧になられることをお勧めする。帆船同士の追いかけっこや一騎打ちではなく、大艦隊が洋上で激闘する桁違いの海戦シーンがふんだんに楽しめる。映像は美しく、音楽も実に良い。

 しかし、この映画はいささか問題作でもある。オランダの歴史をよく知らないと、オランダがなぜ近隣諸国から狙われ、執拗に戦いを挑まれているのか、さっぱりわからない。映画の半分は海戦、半分は紛糾する議会の様子を描いているのだが、オラニエ派と共和派が激しく対立する理由も最初はつかめず、困惑する。要するに、オランダがいち早く共和制をとり、自由な貿易で富を築いていることが、王政を維持する近隣諸国にはたいへん疎ましく、それを口実に攻め込んで国土の切り獲りを目論んでいるのだ。オラニエ派は英国王チャールズ二世の甥ウィレム候を祭り上げる貴族達で、英仏の言いなりに共和制を捨て、さっさとウィレム候を王位につけてしまえば戦争を回避できると考えているが、議会政治によってオランダの自由を守ることこそが大事であり、近隣の強国と戦争をしてでも共和制を維持しようとする平民派共和党とは絶対に相容れない。戦争(独立)か和平(恭順)かを巡って議会は常に紛糾し、首相に選出された共和党のヨハン・デ・ウィット首相は戦争に勝つために有能な海の男ミヒール・デ・ロイテルを提督に推挙する。こういう政治的状況を理解していることが映画を楽しむ上で必須なのだが、日本人にはどうもわかりにくい。

 もうひとつ残念なのは、せっかく大海戦シーンを描いているのに、ミヒールが意図する戦術がいかなるものかよくわからず、戦況の推移もはっきりとつかめないことだ。これが大変惜しい。単縦陣同士の反航戦(敵味方が一直線になり、すれ違いながらの砲撃戦)からいかに敵の分断包囲に展開するのか、もっと映像的にうまく描けなかったのだろうか。帆船の動きそのものの描写は素晴らしいのだから、艦隊戦の推移がわかれば手に汗握る緊迫感は跳ね上がったに違いない。ちなみに、ミヒール・デ・ロイテルという軍人の存在はこの映画で初めて知ったが、17世紀のオランダ海軍における「 砂漠の狐 エルヴィン・ロンメル将軍 」といえるだろう。斬新な戦術を駆使し、強大な英仏海軍を手玉にとって戦況を優位に導くが、最期は最高権力者の怒りを買う「 悲劇の英雄 」である。
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