韓流を擁護する気は全くないが、かといって全否定する気もない。たまたま気に入った作品が「 韓国映画 」だったに過ぎない。日本映画でも韓国映画でも、傑作もあれば駄作もあるのは至極当然である。韓国映画だからといって観もせずに否定するのは差別だが、出来栄えの善し悪しによらず韓国映画全体を賛美するのは、これもまた逆差別だろう。
『 僕の彼女はサイボーグ 』繋がりで、クァク・ジェヨン監督の『 彼女 』三部作を観ることになり、『 僕の彼女を紹介します 』で『 ・・・サイボーグ 』以上に激しく感動させられた。こんな場外ホームラン級の傑作を「 韓国映画だから 」と避けて通って来たことは、正に痛恨の極みである。主演した女優チョン・ジヒョンに興味を抱き、彼女の主演作全8本をDVDで観たので、総括の意味で勝手にランキングをつけることにした。興味をもたれた方は騙されたと思って、上位作品だけでもご覧いただければ幸甚である。
ランキング作成については、感動の大きさ、チョン・ジヒョン演じるキャラの魅力、そして、何度も観たくなるかどうかを評価基準としている。したがって、作品全体のクオリティは高くても彼女の存在感が小さかったり、キャラの魅力に乏しい場合は評価が低くなっているのでご容赦願いたい。
第一位 『 僕の彼女を紹介します 』
2004年クァク・ジェヨン監督作品、『彼女』シリーズ第二弾。前作『猟奇的な彼女』でチョン・ジヒョンが演じた「乱暴だが繊細な心をもつ彼女」のキャラを踏襲し、彼女はソウル市警の熱血警官ヨ・ギョンジン巡査を演じる。偶然知り合った女子高の物理教師コ・ミョンウと彼女が繰り広げる笑いと涙のラブファンタジー映画。『猟奇的な彼女』を観ると、前作のパーツをうまく強化・再構成していることがわかる。チョン・ジヒョン出演作品の中では最もバランスが良く、強烈なパワーに溢れている。チョン・ジヒョン24歳。彼女の女優としての魅力を最も巧みに引き出したのは、ヨ・ギョンジンというキャラとクァク・ジェヨン監督の演出だったのは間違いない。おそらく、本作がチョン・ジヒョンの最高傑作となるだろう(私見)。
第二位 『 デイジー 』
2006年アンドリュー・ラウ監督作品。祖父が経営する骨董屋の手伝いをしながら、休日は広場で肖像画を描く画家の卵・ヘヨンを演じる。全編オランダロケ。初の個展開催のため、デイジーの咲き誇る郊外に画を描きに出かけた彼女は、丸木橋から小川に転落、画の道具をなくしてしまう。恐くて丸木橋が渡れなくなった彼女は、再び出かけた川に「手作りの橋」がかけられているのに気づく。橋の欄干には、彼女がなくした画の道具がかけられていたのだが・・・・。別視点で再構成された『 デイジー アナザーバージョン 』も存在するので、必ず、『 デイジー 』を先に鑑賞することが重要。ネタバレがあるので、ジャケットの解説を読んだり、YouTubeの予告編を観てはいけない。チョン・ジヒョン26歳。美しく可憐なチョン・ジヒョンが堪能でき、ファンにとっては全編がプロモーションビデオである。
第三位 『 猟奇的な彼女 』
2001年クァク・ジェヨン監督作品、『彼女』シリーズ第一弾。女優チョン・ジヒョンの名を世に知らしめることになった記念すべき作品である。物語の主人公・優しい心をもったぐうたら学生のキョヌが電車で知り合った「彼女」は美人だが乱暴な、とんでもない女学生だった。ネットで発表された「事実を基にした小説」の映画化という点で、韓国版『電車男』といえる。原作者が彼女の名前を明かさなかったため、チョン・ジヒョンの演じる「彼女」には役名がない。乱暴で自己中心な彼女にてんてこ舞いさせられるキョヌだったが、彼女には大きな秘密が隠されていた・・・・。チョン・ジヒョン21歳。初々しく繊細な面と暴力的なコントラストが凄い。日本では、彼女の出演作としては本作が最も高く評価されているようだ。
第四位 『 イルマーレ 』
2000年イ・ヒョンスン監督作品。チョン・ジヒョンは海辺の家「イルマーレ」に住む声優・ウンジュを演じる。引越しをすることになったウンジュは、次の住民に郵便物を転送してもらおうと、郵便受けに依頼の手紙を残すが、転居先には一向に郵便物が届かない。不審に思った彼女が郵便受けを覗きに出かけると、そこには「イルマーレの住人」を名乗る男性からの手紙が入っていたのだが・・・・。物語が高く評価され、ハリウッドではキアヌ・リーヴス、サンドラ・ブロック主演でリメイクが制作されたことで有名だが、基本設定は岩井俊二監督作品『Love Letter』(1995年)の影響を受けていると思われる。チョン・ジヒョン19歳。
第五位 『 星から来た男 』
2008年チョン・ユンチョル監督作品。チョン・ジヒョンは、小さな番組制作プロダクションの敏腕ディレクターのスジョンを演じる。視聴率をとることしか興味のない彼女は、ある日、「自分はスーパーマンだ」と名乗る男が街で熱心に人助けをしている現場に遭遇する。彼は宿敵・ハゲ頭によって頭の中にクリプトナイトを埋め込まれたことで超能力を失ったと説明。空を飛ぶことはできないが、自分が正義の味方だと忘れないために日夜活動しているのだという。日々、男が街で起こす「小さな奇跡」を追ううちに、ある事件がきっかけでスジョンは彼の頭の中に何かが埋め込まれているのを発見するのだが・・・。作品としてのクオリティは高く、本来はもっと上位にすべき作品である。主演のファン・ジョンミンの怪演に圧され、チョン・ジヒョンの存在感は正直乏しい。チョン・ジヒョン28歳。ほぼノーメイクのすっぴんで櫛が通っていないボサボサ髪、ヘビースモーカーという女性ディレクターを好演したが、彼女でなければならないキャスティングの必然性があったかどうかははなはだ疑問だ。
第六位 『 ホワイト・バレンタイン 』
1999年ヤン・ユノ監督作品。チョン・ジヒョンの映画デビュー作で、撮影時点では高校在学中だったという。いかにも女子高生という初々しい彼女の姿が観られることが本作の最も評価すべきポイントであろう。幼い時に両親を亡くしたジョンミンは画家になるために高校を中退し、祖父が営む書店の手伝いをしながら、画の勉強を続けていた。ある日、ジョンミンの住む町に小鳥屋を営む青年ヒョンジュンが引っ越して来た。接点はないが、公園で鳩に餌をやったり、怪我をした鳩の世話をする優しい彼の存在がジョンミンは気になって仕方なかったが・・・・。チョン・ジヒョン18歳。悪戯っぽさや一途さという彼女の魅力が第一作目から見事に生かされていることは注目に値する。
第七位 『 4人の食卓 』
2003年イ・スヨン監督作品。『猟奇的な彼女』で大ブレイクしたチョン・ジヒョンが多くのオファーの中から自ら選んだのが本作だったという。彼女は病気治療のため、精神科クリニックに通う主婦ヨンを演じている。結婚を間近に控えた新進気鋭のインテリアデザイナーのジョンウォンはある日、キッチンのテーブルに見知らぬ子ども達が眠るように座っているのを目撃する。それは地下鉄の車内で毒殺された幼い兄弟の姿だった。なぜ、彼にそんな光景が見えるのか。ジョンウンの幼い時の体験に理由が隠されていることに、彼はまだ気づいていなかった。チョン・ジヒョン23歳。精神を病んでいる主婦を演じているだけに、チョン・ジヒョンがとにかく暗く生気がないという点で異色の作品だ。ホラー映画としてはもっと恐く仕上げることができたはずだが、全体に散漫で残念な出来になっているのは惜しい。
第八位 『 ラスト・ブラッド 』
2009年クリス・ナオン監督作品。日本のアニメ『BLOOD The Last Vampire』の実写版。チョン・ジヒョンは人類の未来をかけて鬼族と戦う少女サヤを演じている。ホラーアクション映画としては「なかなか面白い」のだが、チョン・ジヒョンの魅力が生かされているとは到底言い難いのでこの評価となった。だいたい、感情表現の巧みな彼女をキャスティングして台詞もほとんどないようなアクション演技ばかりとは、なんとも勿体ないではないか。チョン・ジヒョン29歳。
余談。
あれだけ感動し、深くはまった『 僕の彼女はサイボーグ 』をこのランキングに入れたら、どうなるのか。もちろん、主演がチョン・ジヒョンではないのだが、クァク・ジェヨン監督『 彼女 』3部作で考えても、やはり、『 僕の彼女を紹介します 』に次いで第二位となるだろう。
もうひとつ、余談。
急に韓国映画にはまった私に、友人が「 岩井俊二監督の『 Love Letter 』(1995年)こそ韓国映画に多大な影響を与えた元ネタである。きちんと評価しなければ失礼だろう 」と強く薦めてきた。それじゃあ、と初めて観たのだが、これが驚いた。静かでゆったりとした展開、郷愁をかきたてる懐かしく切ない物語は韓国映画に非常に近い。韓国では大ヒットとなり、物語の舞台となった北海道・小樽には多くの韓国人ファンが押し寄せたそうだ。主演の中山美穂の「 ある台詞 」が韓国の観客の心を捉えたのだろう。彼女の台詞「お元気ですか〜? 私は元気で〜す!」(もちろん日本語)は、かの国で大流行したという。映像の雰囲気や構成もさることながら、興味深いのは「 うり二つの人間が存在する 」という設定と、過去と未来をつなぐ重要なアイテムとして「 手紙 」が有効に使われている点だ。「 韓国映画はみな『 Love Letter 』のパクリだ! 」とまでは言わないが、少なくともクァク・ジェヨン監督『 彼女 』三部作とイ・ヒョンスン監督の『 イルマーレ 』にはその影響が色濃く認められるのは間違いない。
※この日記にコメントをつけてくださったマイミクの「ブタネコ」さんは2018年8月に急逝されました。謹んでご冥福をお祈りします。映画やドラマについて多くの感想を残された彼のブログ『ブタネコのトラウマ』はご友人のご厚意によって、ネット上に保存され、現在も訪問することが可能です。ただし、膨大な数の画像の多くはリンク切れしている可能性があります。
https://web.archive.org/web/20160823091938/http://buta-neko.net:80/
◆関連過去日記 映画「僕の彼女を紹介します」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1767044097&owner_id=6007866
チョンジヒョン ぼくのかのじょをしょうかいします
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