原始仏教コミュの縁起の詳細　　　（サーリプッタの縁起説）

釈迦が給孤独園に滞在しているとき、サーリプッタが比丘たちに説いた。ポイントは縁起のそれぞれの言葉の定義をサーリプッタが明らかにしていること。
はじめに善悪、食、四諦の三つを説く。次いで、老死←生←生存←執着←渇愛←感受←接触←六入←名色←識←行←無明←漏煩悩←無明となる。

ⅰ　不善を知り、不善の根を知り、善を知り、善の根を知る。
不善：殺すこと、盗むこと、不正な性行為、嘘、二枚舌、粗暴な言葉、飾りの駄弁、貪欲、怒り、邪悪な見方。
不善の根：貪り、怒り、愚かさ。
善：殺さない、盗まない、邪悪な性行為をしない、嘘つかない、二枚舌を言わない、粗暴な言葉を言わない、飾りの駄弁を言わない、貪らない、怒らない、正しい見方。
善の根：貪りがない、怒りがない、愚かさがない。

ⅱ　生きて行くために、生まれるものを援護するための四種の食を知る。
第一：丸めて作る食
第二：接触
第三：意思
第四：識別知
渇愛が生起すると食が生起し、渇愛が消滅すると食が消滅する。
八正道だけが食の消滅に赴く実践修行である。

ⅲ　四諦を知る。
苦：生老病死、憂い、悲しみ、苦痛、愁い、悩み、求めて得られないこと、即ち、「五取蘊が苦である」。
苦の生起：渇愛があり、それは再生するものであり、喜びと欲情をともない、それぞれに大きな喜びを持つ。即ち「欲望の渇愛、生存の渇愛、虚無の渇愛である」。
苦の消滅：渇愛そのものの余すことなき離別・消滅であり、捨であり、放棄、解脱、無執着である。
苦の消滅に赴く実践修行：八正道。

ⅳ　老死を知り、その生起、消滅、その道を知る。
老：それぞれ老い、老衰し、壊れ、白髪になり、皺がより、寿命が減り、もろもろの感官が壊れる。
死：それぞれ死去し、死し、壊れ、滅し、死を迎え、命を終え、諸蘊が壊れ、死体を捨てる。
生まれが生起すると老死が生起する。生まれが消滅すると老死が消滅する。その道は八正道。

ⅴ　生まれを知り、その生起、消滅、その道を知る。
生：それぞれ、生まれ、出生し、現れ、再生し、諸蘊が明らかになり、もろもろの感官を得る。
生存が生起すると、生まれが生起する。生存が消滅すると、生まれが消滅する。その道は八正道。

ⅵ　生存（有）を知り、その生起、消滅、その道を知る。
生存：三つの生存がある。欲望あるものの生存、色形あるものの生存、色形のないものの生存。
執着が生起すると生存が生起する。執着が消滅すると生存は消滅する。その道は八正道。

ⅶ　執着を知り、その生起、消滅、その道を知る。
執着（取）：欲望の執着、見解の執着、戒や務めの執着、自説の執着である。
渇愛が生起すると執着が生起する。渇愛が消滅すると執着が消滅する。その道は八正道。

ⅷ　渇愛を知り、その生起、消滅、その道を知る。
渇愛：六つの渇愛の集団がある。色形あるものへの渇愛、音声への渇愛、香りへの渇愛、味への渇愛、触れられるものの渇愛、考えられるものへの渇愛である。
感受が生起すると渇愛が生起する。感受が消滅すると渇愛が消滅する。その道は八正道。

ⅸ　感受を知り、その生起、消滅、その道を知る。
感受：六つの感受がある。眼で触れて生じる感受、耳で触れて生じる感受、鼻で触れて生じる感受、舌で触れて生じる感受、身体で触れて生じる感受、心で触れて生じる感受である。
接触が生起すると感受が生起する。接触が消滅すると感受が消滅する。その道は八正道。

ⅹ　接触を知り、その生起、消滅、その道を知る。
接触：六つの接触の集団がある。眼で触れ、耳で触れ、鼻で触れ、舌で触れ、身で触れ、意で触れること。
六つの感覚の場（六入）が生起すると接触が生起する。六入が消滅すると接触は消滅する。その道八正道。

ⅹⅰ　六入を知り、その生起、消滅、その道を知る。
六入：眼がはたらく場、耳がはたらく場、鼻がはたらく場、舌がはたらく場、身がはたらく場、意がはたらく場。
名前・色形あるもの（名色）が生起すると六入が生起する。名色が消滅すると六入が消滅する。八正道。

ⅹⅱ　名色を知り、その生起、消滅、その道を知る。
名前（名）：感受、概念化（想）、思念、接触、意を注ぐこと。
色形（色）：四大要素、地水火風および四大要素によって色形あるもの。
識別して知ること（識）が生起すると名色が生起する。識が消滅すると名色が消滅する。その道八正道。

ⅹⅲ　識を知り、その生起、消滅、その道を知る。
識別して知ること：眼で識別して知る、耳で識別して知る、鼻で識別して知る、舌で識別して知る、身で識別して知る、意で識別して知る。
行が生起すると識が生起する。行が消滅すると識が消滅する。その道は八正道。

ⅹⅳ　行を知り、その生起、消滅、その道を知る。
行：これら三つの行（なにかを作ろう、為そうという意志）がある。身でつくりなそうという意志、ことばでつくりなそうという意志、心でつくりなそうという意志。
無明が生起すると行が生起する。無明が消滅すると行は消滅する。その道は八正道。

ⅹⅴ　無明を知り、その生起、消滅、その道を知る。
無明：もろもろの苦を知らないこと、もろもろの苦の生起を知らないこと、もろもろの苦の消滅を知らないこと、苦の消滅におもむく実践修行を知らないこと。
漏煩悩が生起すると無明が生起する。漏煩悩が消滅すると無明は消滅する。その道は八正道。

ⅹⅵ　漏煩悩を知り、その生起、消滅、その道を知る。
漏煩悩：三つの漏煩悩がある。欲望の漏煩悩、生存の漏煩悩、無明の漏煩悩である。
無明が生起すると漏煩悩が生起する。無明が消滅すると漏煩悩は消滅する。その道は八正道。

「これらのうちどれか一つでも知るならば、かれはあらゆる欲情の潜在を捨て、怒りの潜在を除去し、わたしはある、という見解による自負心の潜在を根絶して、無明を捨てて、明知を生起させて、もう現在のままで苦の終わりを作るものとなる。このかぎりでも、たしかに、尊者たちよ。聖なる弟子は正しく見るものであり、かれの見方は真っ直ぐに行き、法に対して絶対の浄信をそなえて、この正しい法に通じた者である」

－－『中部経典　第九経　正しく見る――正見経』

☆定義の抜粋

不善：殺すこと、盗むこと、不正な性行為、嘘、二枚舌、粗暴な言葉、飾り
　　　の駄弁、貪欲、怒り、邪悪な見方。
不善の根：貪り、怒り、愚かさ。
善：殺さない、盗まない、邪悪な性行為をしない、嘘つかない、二枚舌を
　　言わない、粗暴な言葉を言わない、飾りの駄弁を言わない、貪らない
　　怒らない、正しい見方。
善の根：貪りがない、怒りがない、愚かさがない。
四種の食：丸めて作る食、接触、意思、識別知
苦：生老病死、憂い、悲しみ、苦痛、愁い、悩み、求めて得られないこと、
　　即ち、「五取蘊が苦である」。
苦の生起：渇愛があり、それは再生するものであり、喜びと欲情をともない
　　　　　それぞれに大きな喜びを持つ。即ち「欲望の渇愛、生存の渇
　　　　　愛、虚無の渇愛である」。
苦の消滅：渇愛そのものの余すことなき離別・消滅であり、捨であり、放棄
　　　　　解脱、無執着である。
苦の消滅に赴く実践修行：八正道。
老：それぞれ老い、老衰し、壊れ、白髪になり、皺がより、寿命が減り、も
　　ろもろの感官が壊れる。
死：それぞれ死去し、死し、壊れ、滅し、死を迎え、命を終え、諸蘊が壊
　　れ、死体を捨てる。
生：それぞれ、生まれ、出生し、現れ、再生し、諸蘊が明らかになり、もろ
　　もろの感官を得る。
生存：三つの生存がある。欲望あるものの生存、色形あるものの生存、色形
　　　のないものの生存。
執着（取）：欲望の執着、見解の執着、戒や務めの執着、自説の執着である。
渇愛：六つの渇愛の集団がある。色形あるものへの渇愛、音声への渇愛、香
　　　りへの渇愛、味への渇愛、触れられるものの渇愛、考えられるものへ
　　　の渇愛である。
感受：六つの感受がある。眼で触れて生じる感受、耳で触れて生じる感受、
　　　鼻で触れて生じる感受、舌で触れて生じる感受、身体で触れて生じる
　　　感受、心で触れて生じる感受である。
接触：六つの接触の集団がある。眼で触れ、耳で触れ、鼻で触れ、舌で触れ
　　　身で触れ、意で触れること。
六入：眼がはたらく場、耳がはたらく場、鼻がはたらく場、舌がはたらく場
　　　身がはたらく場、意がはたらく場。
名前（名）：感受、概念化（想）、思念、接触、意を注ぐこと。
色形（色）：四大要素、地水火風および四大要素によって色形あるもの。
識別して知ること：眼で識別して知る、耳で識別して知る、鼻で識別して知
　　　　　　　　　る、舌で識別して知る、身で識別して知る、意で識別
　　　　　　　　　して知る。
行：これら三つの行（なにかを作ろう、為そうという意志）がある。身でつ
　　くりなそうという意志、ことばでつくりなそうという意志、心でつく
　　りなそうという意志。
無明：もろもろの苦を知らないこと、もろもろの苦の生起を知らないこと、
　　　もろもろの苦の消滅を知らないこと、苦の消滅におもむく実践修行を
　　　知らないこと。
漏煩悩：三つの漏煩悩がある。欲望の漏煩悩、生存の漏煩悩、無明の漏煩悩。