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ワンコイン未満読書コミュの【災害】「天災と日本人」(寺田寅彦)角川ソフィア文庫

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webKADOMAWA
http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_detail.php?pcd=201104000498

500円

3月11日の東日本震災をうけて急遽出版された感のある本でした。
寺田寅彦の、日本における災害をめぐるエッセイだけを集めたもので、関東大震災のときに綴っていた日記から抄出したものもあります(昭和10年10月にまとめられたもの)。

地震災害には先見の明があったということで、災害関係の本にはよく引用されているものが中心です。
彼の随筆は他にも優れたものがたくさんあり、そちらも入手が容易にならないかな、と思っていたところでした。

折しも、読了の頃に、台風12号が和歌山県や奈良県に甚大な被害をもたらしました。
2011年9月5日22時現在で、日本全国での死者が34人、行方不明者が56人で、2004年の台風23号を超える台風災害となったそうです。

地震災害の他に、寅彦は
「颱風雑俎」
という文章もまとめていて(昭和12年2月)、当時は台風の進路予測もまだしっかり出来ていなかったことは勿論、明治以降の建築物の立地は、以前よりも台風に対する配慮が損なわれていることに警鐘を鳴らしていたのでした。

「甲州路へかけても到るところの古い集落はほとんど無難であるのに、停車場の出来たために発達した新集落には相当な被害が見られた。古い村落は永い間の自然淘汰によって、颱風の害の最小なような地の利のある地域に定着しているのに、新集落は、そうした非常時に対する考慮を抜きに発達したものだとすれば、これはむしろ当然すぎるほど当然なことであると云わなければならない。
 昔は『地を相する』という術があったが明治大正の間にこの術が見失われてしまったようである。」(77頁)

今回の台風被害が、果たして寅彦の指摘するような場所で起こったのかどうか、土地勘のない私にはわかりません。
3月の津波に際しては、しかし、寅彦の言うようなことが被災の有無を分けた場所もあったことには思い当たりました。故郷でことごとく波に呑まれた住宅地は、私が小さい頃までは、大人たちが
「あの場所に住まいを作っては絶対にいけない」
と口々に言っていたことではありました。

「誰の責任であるとか、ないとかいう後の祭りの咎め立てを開き直って仔細らしくするよりももっともっと大事なことは、今後如何にしてそういう災難を少なくするかを慎重に攻究することであろうと思われる。」(「災難雑考」88頁)

「事実を確かめないで学者が机上の論議を戦わして大笑いになる例はヂッケンスのピクウィック・ペーパー(注:原文通り)にもあったかと思うが、現実の科学者の世界にもしばしばある。たとえばこんな笑い話があった。ある学会で懸賞問題を出して答案を募ったが、その問題は『コップに水を一杯入れても水が溢れないのは何故か』というのであった。応募答案の中には実に深遠を極めた学説のさまざまが展開されていた。しかし当選した正解者の答案は極めて簡単明瞭で『水はこぼれますよ』というのであった。」(「颱風雑俎」83頁)

私は、この最後の一文を笑うことが出来ません。

被災された皆様やご関係者各位に、心からお見舞いを申し上げます。

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