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哲学の塔〜改〜コミュの第6章〜クロエ・ウェンブリー〜

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 ―クリスティーヌが誘拐された。
 マシューは、送られてきたメールの内容を確認し、慌ててハイドパークに駆け出した。
その後を、妹のアリス、そして弟のドムが追いかけてくる。彼らに残された時間はなかっ
た。彼の身体中は汚れと傷だらけだった。それは後ろのふたりも同じだった。3人の兄弟
は、姉クリスティーヌを救うため、ハイドパークを目指す。
 突然の兄弟宣告に、困惑は隠せなかったが、“ふたつの塔”の崩壊が、彼らの迷いを決断
に変えた。自分たちの運命を受け入れた。
 名探偵シャーロット・ロンドンの正式な後継者、“戦乙女”アリス、“救世主”ドム、そし
て、“探求者”マシューとして。
 “ミネルヴァの梟”クリスティーヌを救い、5人目の子供、“影法師”を暴くために。

『“ミネルヴァの梟”クリスティーヌの身柄は預かった
 彼女を救いたければ、ハイドパークの、私と出逢ったベンチに来たまえ
 そして真実を暴きたまえ、後継者たちよ

                  5人目の子供“影法師”シルエット・L・ワルツ』

 マシューは、痛む足に鞭を打ち、走り続ける。自分の運命に立ち向かうために。
 シャーロット・ロンドンの最後の言葉が脳裏に響きわたる。

 ――5人目の子供はいない!それは“幻影の子供”。君が見たシルエット・L・ワルツは
幻だ。その目を凝らしてよく見るのだ、真実を!迷信が盲目にするなら、心の恐怖を取り
除け!そしてあるがままを見るのだ!想像するな!そして創造もするな!――

「最初から!最初から…」
 マシューは悔しさで涙を流した。

 ――我は言葉の妖精、クロエ・W・ウィスパーだ――

 彼の手に持つ“禁断の言葉”のノートには、最初から書かれていた。
『クロエ・“W”ウェンブリーが“ウィスパー”囁く』と。

 ――我がチャイルド、よく聞け。母の本名は…――

「“幻影師”エヴァン・ウェンブリー…、いや、クロエ・“W”ウェンブリー!」
 幻影の霧は晴れた――。

 シャーロット・ロンドンの後継者たちは、ハイドパークの“真実の間”に降り立った。
「まさか、あなたがシルエット・L・ワルツの本当の正体だったとは驚いたよ」
 マシューは息を切らせながら、必死に言葉を紡ぎだしていく。そのすぐ後ろにアリス
とドムもやってきた。彼らの視線の先に、ベンチに腰掛けるひとりの人物、クリスティー
ヌが居た。彼女は、右手に持つカフェラテをゆっくりと飲むと、静かに口を開いた。
「ミネルヴァの梟は夜飛ぶ、ですわ」
 彼女は笑みを浮かべていた。それに呼応するようにマシューも笑い出した。
「シャーロット・ロンドンも、“幻影騎士団”も、そして僕たちも、20年間欺かれていた」
 時がゆっくりと流れる。静かに木々がざわめく。太陽に照らされた木漏れ日が、彼らを
包み込む。歴史の埃が積もるように、光が麗らかに溢れていた。
「だけどもう、幻影の霧は晴れたんだ、シルエット・L・ワルツ。いや…
 “ハイドパークの亡霊”はあなただ、クロエ・ウェンブリー!」
 マシューは手に持った“禁断の言葉”のノートと、“金の梟”のペンを足元に投げ捨て、
クリスティーヌを指差した。
 いや、彼女ではなく、その後ろにひっそりと隠れるもうひとりのシルエットに。
 そして木の影に隠れていたそのシルエットは、彼らの前に姿を現した。太陽の光に照
らされて、彼女の姿はようやく晒された。
 肩まである金の髪を風に揺らせ、蒼い知的な瞳を輝かせていた。スラリとした身体に
透き通るような白い肌をのぞかせ、瑞々しいピンク色の口元に微笑をたたえていた。
 20年間、幻影の影に隠れてきた母、クロエ・ウェンブリー。
「よく見抜いた、私のチャイルドたち」
 マシューは、その実の母、クロエに言った。
「想像せよ。そして創造せよ。あなたはこの言葉で20年間魔法をかけ続けてきたんだ」
「ええ。私は高名な“幻影師”エヴァン・ウェンブリーですもの。
 このハイドパークで、ずっとこの時を待っていたの、この瞬間を。
 私は、“ハイドパークの亡霊”となってね」
 風が吹く。4人のチャイルドたちは、静かに聞いていた。そんな中、マシューはひとり、
探求していく。
「ロズウェル・アンダーソン、いや、ローズが見たハイドパークで目撃した“消えた乗客”
 の姿も、あなたが見せたイリュージョンだった?」
「その通り。自分の身を守るためにね。“ハイドパークの亡霊”事件そのものが私の仕掛け
 たイリュージョンだった。空で消えた飛行機。消えた乗客。そして目撃された乗客。全
 てはありもしない事件。その噂は瞬く間に広まり、いつしか、“ハイドパークの亡霊”事
 件は、人々の中で現実となった。人は常に、想像し、そして創造し続ける生き物」
「でもあなたはもう、8年前に死んでいる…」
 風が静かに吹き抜けていく。


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