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哲学の塔コミュの第一章2

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 時同じくして、ロンドン郊外の名門大学キャンパス内。
銀色のスーツに身を包んだ、肩まである銀色の髪の、端正な顔立ちをした男が両手を後
ろに組み、膝を少し曲げたような奇妙なポーズで立っていた。
そしてとある大きな塔を見上げていた。
窓ひとつない、円柱型のゴシック建築の塔の高さは77メートル、直径20メートルになる。
そして天地逆の構造という奇妙な外観をした茶色いレンガ造りの塔。
まるで空から逆さまの状態で垂直に落下してきたように、地面に突き刺さっていた。
銀色の男は、常に錠をかけられた硬く頑丈な鉄の扉を、隣の黒髪の東欧出身だという男
に開けてもらうと、ゆっくりと中に入っていった。内部は空洞となっており、屋上に続
く螺旋階段が延々と天に向かって伸びている。その階段を登りきった先に、屋上へ入る
ためのアーチ型の口が開いている。屋上には腰程の高さの手すりだけがあり、他には何
もない空間だった。そして、そこから見える景色は、広いキャンパスに広がるヒースの公
園と散在する校舎。空を覆うロンドンの雲、それ以外にこの塔よりも高い建築物もなけ
れば、木々もなかった。
一通り、“哲学の塔”を見学し終わると、満足そうな笑みを浮かべ、
「こんな最高の舞台はない。この塔でこれから起こる魔術的出来事で、君たちの腐りきっ
た常識を覆して差し上げましょう。ゆめゆめ、無駄な机上の空論説を唱えると良い。」
今世紀最後の魔術師は、言い放った。
すると周りに居る野次馬の学生たちから歓声が上がった。
「見ろよ!ロンドン屈指の奇術師ロッド・シルバーフィールドだ!」
「ここで何かするのかしら?」
「彼は、この時代の最後の本物の魔術師だって噂だよ!」
口々に学生たちは、彼、ロッド・シルバーフィールドの噂話を繰り広げた。
ロンドンでも有名な奇術師であり、その美貌と、類稀な常識を超えたマジックショーに、
人々は彼を、今世紀最後の魔術師と崇めた。そして、本物の魔術師の生き残りなのだと。
しかし、その素性は謎に包まれていた。
「神への冒涜だ!」
その怒れる一声に、ざわめきは掻き消された。
その声の主に、皆一声に振り返った。
そこには車椅子に乗った白髪の老人が居た。彼は口元をわなわな震わせていた。
インドの衣装を身に纏った女学生が駆け寄って、言った。
「サイロン先生!研究室からは出ないでと、注意していたのに…」
するとサイロン先生と言われた老人は、銀色の男に言い放った。
「この塔で神を侮辱したお主に、死の裁きが下るであろう。」
サイロン・ピッツァーノ。神学の名教授であり、崇高なクリスチャンであった。
元々牧師であった彼は、幾つもの書物を世に送り出し、信者たちからは崇められていた
が、この学園では、その偏狂ぶりに、学生たちからは変人扱いされていた。
インドの衣装を身に纏ったインド人の女学生が、サイロン教授をなだめている。
彼女は、サイロン教授の教え子であり、世界でも有名な占い師の娘でもあった。
エリ・マーリン。魔女ユーリ・マーリンの一人娘だ。
一説には魔女の血が流れていると噂され、サイロン教授同様に学園では煙たがられてい
た。その端正な顔立ちの持ち主の美少女は、独特な衣装と、雰囲気から、何物も寄せ付け
なかった。しかし、心の優しい普通の少女だったのだ。
「おやご老人、あなたは神の世界では、著名な方だとお見受けいたしますが…」
銀色の魔術師、ロッドは肩をすくめて付け加えた。
「少々、この現実世界では、奇人変人、すっとん狂、だとお噂を伺っておりますが?」
その言葉に、その場に居た学生たちは笑い転げた。
「違いない!このじいさんは頭が可笑しい!付き人は魔女だし!」
その発言に、エリ・マーリンは表情を歪めた。
「魔女とイカレ神父!お似合いだよ!」
すると、その発言をした学生の頭で何かが破裂し、髪から少し煙が出た。
次の瞬間、花束がパっと咲き乱れた。学生は馬鹿みたいな悲鳴をあげその場に倒れた。
「君、愚かな発言は慎みたまえ、愚民は愚民らしく、黙っていなさい。」
ロッド・シルバーフィールドは不敵な笑みを浮かべ、笑っていた。

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