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ハルカなる物語のお部屋コミュのおとぎ話「月と猫」

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「月と猫」


月の歌を知っていますか?
少しだけ風の吹く晴れた夜に月は歌います。
誰にも聞こえない、優しい歌。
だけど、その歌はいつもみんなの心に届いています。
だから心で聴いてください。
月の歌を…


月のキレイな夜、小さな黒にゃんこは夜のネコ集会の帰り途をトボトボと歩いていました。
にゃんこはまだ小さくて、いつもまわりの大人にゃんこに苛められていました。
「どうしていつも僕は苛められるんだろ…」
大好きなお魚を食べようとしても、すぐに大人にゃんこに横取りされてしまいます。
広い原っぱで日向ぼっこをしてても、大人にゃんこたちがやってきてどかされてしまいます。


「どうしたんだい、にゃんこ?そんなにしょんぼりして。何かあったのかい?」
電柱の上にいたカラスがにゃんこの前に飛んできました。
「カラスさん。大人にゃんこが、僕を苛めるんです。」
「それは仕方ないさ。だってにゃんこはまだ小さいんだから。」
「小さいと苛められるんですか?」
「そりゃそうさ。だって、にゃんこはまだ何も出来ないじゃないか。私を見てごらん。立派な羽に鋭い口ばし、利口な頭。人間からだってエサを横取りできるんだ。にゃんこはそんなことできるかい?」
「…できません。」
「そうれ。だから苛められるんだよ。カッカ―」
意地悪なカラスはそうやってまた、飛んでいってしましました。
にゃんこは苛められるのは小さいからなんだと言われて、悲しくなってきます。
おおきな耳は垂れて、尻尾にも元気がなくなります。
そのままにゃんこが歩いていると


「ちょっとそこのにゃんこ、何、泣きそうになっているんだい?」
今度は鎖に繋がれたわんこが話しかけてきました。
「カラスさんが、僕が苛められるのは小さいからだっていうんです。ちいさいと苛められるんですか?」
「小さいからだけじゃないさ。おまえは野良だろ?野良は誰にも飼われてない。だから、苛められるのさ。」
「野良だと苛められるんですか?」
「そりゃそうさ。だって、野良は何の役にも立たないじゃないか。俺を見てみろよ。番犬として怪しい奴が来たら、この大きな声と、鋭い爪と丈夫な歯で追っ払うんだ。野良にこんな立派な事ができるかい?」
「…できません。」
「そうら。だから苛められるんだよ。ウウ…ワン!」
わんこに吠えられて、にゃんこは急いで逃げ出しました。
にゃんこは苛められるのは野良だからと言われて、さっきより悲しくなりました。
流れそうになる涙を一生懸命止めて、にゃんこはトボトボと歩きます。


「お前、泣いているのかい?」
にゃんこの前ににゃんこより少しだけ大きな真っ白いにゃんこがやってきました。
「泣いてないです。」
「どうしたの?いったい何があったんだい?」
「カラスさんが僕が苛められるのは小さいからだって。わんこさんが僕が苛められるのは野良だからっていうんです。小さいと、野良だと苛められるんですか?」
「まさか!僕を見てごらんよ。僕は君より少し大きいけど、野良のにゃんこだ。それでも、僕は苛められないよ。君が苛められるのは、君が黒猫だからさ。」
「黒猫だと苛められるんですか?」
「そりゃそうだろ。だって、黒猫は不吉なんだって人間が言ってたよ。黒猫は悪い事を運んでくるって。僕を見てごらんよ。真っ白で綺麗だろ。どこへいっても人間たちは僕に餌をくれるし、優しく撫でてくれる。黒猫に誰かそんなことしてくれたかい?」
「…して、くれませんでした。」
「だろ?つまり、黒猫だから苛められるんだよ。アハハ」
そういうと、真っ白なにゃんこは走っていってしましました。


一匹になったにゃんこはとうとう泣いてしまいます。
泣かないと頑張ってみても、どんどん涙はあふれてきます。
「ひっく、ひっく、僕がちいさいから、野良だから、黒猫だから、誰も僕の側にはいないんだ。僕は、一人ぼっちなんだ。」
声に出すともっと悲しくなってしまいました。
にゃんこは一匹でトボトボと歩きます。
ふと、足元に影が出来ていることに気付きました。
顔を空へ向けると、まんまるいお月さまが明るく光っていました。
「いいな〜お月さまは。僕みたいに苛められたりしないんだから。」
そう言って、またトボトボと歩きます。
影はまだ、にゃんこの足もとにあります。
もう一度、空を見上げると、そこにはお月さまが光っています。
「お月さまついてこないで。お月さまがついてきてると僕が泣いてるのが見えちゃうよ。」
にゃんこは道の角を曲がって細い路地へはいりました。
そこは月明かりの届かない真っ暗な道です。
そこでにゃんこがしくしく泣いてると、道が明るくなりました。
見上げると、やっぱりお月さまがいます。
「ついてこないでって言ってるのに、どうしてついてくるの?お月さまがついてくると、僕、もっと悲しくなるのに」
にゃんこは路地を走り、道を走り、原っぱを走り、お月さまから逃げようとします。
走っているうちにとうとう、見知らぬ街のお家の庭にきていました。
でも、どこへ行っても必ず、お月さまはにゃんこの頭の上にいます。
「どうして?どうしてお月さまはついてくるの?どうして僕を一人にしてくれないの?僕を…僕を…?」
そこでにゃんこは気づきます。


今夜、にゃんこはずっと一匹でしたが、一人ぼっちではありませんでした。
意地悪なカラスに会った時も
怖いわんこに会った時も
真っ白なにゃんこに会った時も
ずっと、お月さまはにゃんこの上にいました。
にゃんこが悲しんでいる時も
泣いている時も
寂しい時も
ずっと、お月さまはにゃんこの上にいました。
「お月さま、もしかしてずっと、僕と一緒にいてくれたの?僕が一匹にならないようにずっと明るく照らしててくれたの?」
お月さまはただ、優しい月明かりでにゃんこへ照らしていました。
そのうち、にゃんこはお腹のあたりが温かいような、くすぐったいような気分になりました。
涙はいつの間にか止まってて、そわそわと落ち着かない気分になります。
空を見ると、お月さまが光っています。
その光を見てるうちににゃんこは笑っていました。
面白い事があるわけじゃないけど
楽しい事があるわけじゃないけど
お月さまが自分とずっと一緒にいてくれたというだけで、にゃんこは笑いたくてしょうがなくなりました。
「お月さま、お月さま、僕ね、ずっとさびしかったの。だから、誰かと仲良くなりたくて、でも、どうしたら仲良くなれるのか分んなくて・・・あのね、ずっと、僕と一緒にいてくれてありがとう」
そうやって、あるお家の庭で一生懸命にお月さまへ話しかけていると、突然、ガラス戸が開いて女の人が現れたました。
“怒られる”
そう、にゃんこは思いました。いつも人間はにゃんこへ大きい声をだして、棒を振り回してにゃんこを追い出そうとします。叩かれた事もあります。
痛くて、悲しくて、「やめて」と叫んでも人間はやめてくれません。
ビクビクとおびえていると、女の人はそっとにゃんこの前に座って、何かを差し出してきました。
ヒクヒクと臭いをかぐと、それはミルクでした。
女の人は器に入ったミルクをにゃんこの前に差し出すと、少し下がって、にゃんこを見ています。
そ〜っと、にゃんこがミルクに近づきますが、女の人は大きい声を出しません。棒でたたいたりもしてきません。
さらにそ〜っと、ミルクを一舐めします。ずっと走っりしていたせいか、すごく喉が渇いていて、勢いよくミルクを飲みます。
そして、ミルクを最後の一滴まで舐め終わると女の人は笑顔になって、喜んでいました。
「おいしかった?」
そう言うと、そっと、手をにゃんこの前に出してきました。
「ありがとう。すごく美味しかったです。」
にゃんこはお礼に指をペロッとなめました。
女の人はそのままにゃんこの首元を撫でます。温かくて優しい手です。にゃんこは気持ち良くなって喉をゴロゴロと鳴らします。
すると女の人は頭を撫でたり、体を撫でたりしてきました。
にゃんこは人間の手がこんなにも温かくて優しい事を初めて知りました。
「ねぇ、黒にゃんこ。あなた、私の家族にならない?ずっと可愛がっていたにゃんこが死んでしまってさびしかったの。どうかしら?」
にゃんこはビックリしました。
この女の人といれば自分はもう、一人ぼっちじゃなくなる。
嬉しくて嬉しくて、女の人の足元へすり寄りました。
女の人からは甘いいい匂いがします。
ふと、にゃんこはお月さまを見ます。
もし、自分がこの女の人と家族になったらお月さまはどうなるんだろう?
ずっと僕と一緒にいてくれたのに、僕がいなくなったらお月さまは寂しがるかもしれない。
にゃんこは女の人の足元で、お月さまを見あげます。
すると、さあぁーと風が吹きました。
風はにゃんこを通って去っていきます。
「…にゃあ♪」
にゃんこはひょいと女の人の膝へ飛び乗りました。
「家族になってくれるの?ありがとう」
そういって、女の人はにゃんこを抱き上げました。
女の人の腕の中からお月さまを見上げると雲がお月さまを隠し始めていました。
にゃんこは、僕が女の人の所へ行ったらから悲しくなっちゃったのかな?と思いましたが、さっき聞こえたお月さまの言葉を信じることにしました。



「もう、一人じゃないんだね。良かったね。」



「ありがとう。お月さま」
そしてにゃんこはもう、一匹じゃなくなりました。






今、私たちの生活には電気が必需品となっています。
夜になっても明かりは消えず、月を見る機会も昔よりずっとへりました。
だけど、人は昔から太陽と月の両方からエネルギーをもらってきました。
太陽からは進む力を、そして、月からは休む力を
毎日じゃなくても、たまにでいいです。
月を見て、エネルギーをもらってください。
心を休める、優しいエネルギーを…

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