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ハルカなる物語のお部屋コミュの「アキラと高村、㊙デート」

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「ゴメン!」
アキラは伊沢と会って開口一番にそう言った。頭は深々と下げられ、両手を合わせられていた。
「いきなりどうした?」
「実は…今度の日曜、急用ができたんた…」
伊沢から目を逸らしながらアキラはバツが悪そうに言った。
二人はここしばらく大学だったりバイトだったり高村と祥のいざこざだったりの関係でほとんど会えず、会えたとしてもほんの数時間だけで、次の日曜にお互いの休みが重なったことを伊沢は平静を装いながらも実はけっこう楽しみにしていた。
「いきなりどうして…」
「その…ば、バイトで人手が足りなくて!どうしてもって言われて、それで…」
「そうか。それなら仕方ないな。」
しどろもどろになりながらドタキャンの理由を話すアキラに少しだけため息をつきながらも優しい声で納得をする。その言葉にアキラは驚いて目を丸くして顔を上げた。
「い、伊沢、怒らないのか?」
「どうしてもと言われたんだろ?責任感のあるお前のことだ、もし、俺との約束を優先させてもバイトの事が気になってどうせ楽しめない。だから気にするな」
そう言うと優しく微笑みながら(とは言ってもアキラ以外にはいつもと同じ無表情にしか見えない)アキラの頭をそっと撫でる。
「ご、ゴメン。ホントに、ゴメン…」
「だから気にするな。また時間は作ればいい」
「…ゴメン…」
「…?」
あまりにも謝り続けるアキラに違和感を感じつつもずっと頭を下げて申し訳なさそうに謝るアキラを問い詰めることもできないまま、時間は過ぎていった。

日曜日。伊沢は弟・一成を連れてアウトレットモールに来ていた。
つい最近できたそのアウトレットモールには数多くの店が出店し、近隣では最大級を誇っていて、そこへ家族の服や靴といったものを買いに来ていたのだ。
「吉兄、これからどうする?」
入り口ゲートが見下ろせるカフェでお茶をしつつ、一成が訪ねた。
二人が座る席のテーブルの下には紙袋が一つあるだけ。本当は両手いっぱいになって持ちきれないくらい買ってたのだが、その量に配送サービスが使える事が分かり自宅へ送ってもらう事にしたため、紙袋が一つだけ残った。
「そうだな……あれは!」
「吉兄、どうしたの?」
伊沢が入り口付近の人混みを見ながらいきなり立ち上がる。その音と行動に一成はビックリしてあたりをキョロキョロ見回しながら訪ねた。
「一成、悪いが用事が出来た。」
そう言うと伊沢は会計を済ませてカフェを出てしまった。
「…すみませ〜ん、ジュースのお替りお願いしま〜す」
伊沢がいなくなった店内で一成は何事もなかったかのように笑顔で店員にジュースのお替りを頼んでいた。

人ごみの中を伊沢は階段を駆け下り、入口へ向かう。
「アキラ…」
ほんの一瞬だけだけれど、どれだけ多くの人ごみの中でも見分けられる自信が伊沢にはあった。他の客へはぶつからないよう気遣いながら階段を降りると、そこに見慣れた人物がいた。
こそこそとしゃがみこんで隠れながら何かをじーっと見ている。
「くっそー、人が多くて見えねぇな」
「何が見えないんだ?」
「ふぎゃ!」
後ろから声をかけるとその人物はネコのように鳴いた。
「いいいい、いきなり驚かすんじゃねぇ!」
「そんなところで何をしてる祥(・・・)」


「今日は本当にありがとうございました、高村さん」
「ああ、いいって。俺も欲しかったやつあったしな。おまえはもういいのか?アキラ」
和やかな雰囲気で高村とアキラはある店から出てきた。
2人とも手には手提げ袋をもっていた。すでにいくつか買い物をしたらしい。
「ええ。俺、コレ目当てだったんで」
そういうと、小さな手提げ袋をそっと持ち上げる。
「そうか。じゃあ、あとどうすっか?ちょっとメシには早い…ような…」
その時、高村は見た。
黒いオーラを身にまとった伊沢とその伊沢から逃げている祥の姿を。
瞬間的に高村はアキラの手を取り、二人がいる方向は逆へ歩き始める。
「高村さん、どうしたんですか?」
「い、いや〜ちょっと、その辺をぶらつくのも良いかと思ってな。さぁ行くぞ!早く行くぞ!」
「…え、は、はい。」


多くの人でにぎわうアウトレットモールの中を二人の男女が走りまわっていた。追われているのは祥、追っているのは伊沢だった。
「何でここに伊沢がいるんだよー!」
逃げても逃げてもしつこく追ってくる伊沢を後ろに見ながら祥は叫んだ。
「それはこっちのセリフだ。どうしてお前がここにいる。そして、アキラはどこだ?」
「だからしらねぇって言ってるだろ!」
「そんなはずはない。俺があいつを見間違えるわけがない。」
「くっそー、げっ、行き止まり!」
そこは従業員専用
「さあ、話してもらおうか…」
ポキリと軽く拳を鳴らす音が祥をさらに追い詰めた。しかし、祥としても本当のことを言うわけにもいかず、つい、
「あ〜あそこにアキラが!」
伊沢の後ろを指さして叫んだ。伊沢はつい反応して後ろを振り向く。
もちろん、アキラがいるなんて祥のとっさの言葉だったが、そこには手をつなぎながら(伊沢視点)エスカレーターで上の階へ向かうアキラと高村の姿があった。その瞬間、伊沢から負のオーラが噴き出す。
「なんで、お前らがそこにいるんだー!」
「なるほど、上か」
そう言うが早いか伊沢は猛スピードで二人の後を追い始めた。
「お、おい、待て伊沢!」
今度は祥が追いかける。しかし、元々の脚の長さが違うので、あっさり逃げられてしまった。仕方なく祥は携帯を取り出して話し始める。
「ヤバい、伊沢がいた!どうする?…わかった。なら、とりあえず俺もそっちに向かう。ああ、ああ、じゃあな」


「…どうすっかな〜」
「どうかしたんですか、高村さん?」
携帯を握りしめて青ざめる高村を心配して声をかけるアキラに高村は死人のような顔を向けた。
「ああ、平気、平気」
「平気そうには見えませんが…」
「…アキラ、俺の頼みを一ついいか」
「た、高村さん、どうしたんですか?そんなこと言わなくても、俺、高村さんのためならなんでもします!」
「なら、ちょっとコーヒー買って来てくれないか?そうだな〜某メーカーの某コーヒーがいいな〜あんまりその辺の自販機にはないから、食品街まで行ってもらうかもしれないけど、俺は疲れてるから行きたくないし。頼めるか?」
わざとらしくはぁと息を吐いて演技をしてみる。
「分りました!高村さんはどうぞ座っててください。ほら、ここなら風が気持ちいいですから。じゃあ、俺、行ってきます。」


伊沢はアキラを見つけ、祥を振り切ってからモール内を走り回っていた。それも闇雲にではなく、高村とアキラが歩いたルートを正確に辿りながら。「…上か。レストラン街…じゃないな。屋上か」
すでに超能力レベルの勢いで二人がいる場所を当てるとエスカレーターを駆け上がっていく。そして、屋上の入り口の前でちょうどエレベーターから降りてきた祥と再会した。
「げっ、伊沢!」
「なるほど。祥がいるということは、屋上で間違いないか」
「ちょ…待て、今、お前がここに来てるのをアキラに知られるわけにはいかないんだよ!」
「どういうことだ?」
「わけはきかずにいてくれよ、伊沢」
いつの間にか高村が祥と伊沢の前にいた。
「どういうことだ?」
「確かに今日、アキラは俺といた。けど、これにはちゃんとしたわけがある。」
「なら、その理由を話せ」
「だからそれが話せないからこうやって真正面から言いに来てんだろ」
「…」
「…」
高村と伊沢の間で殺気にも似た空気が流れる。祥は二人の気迫に押されて、少し後ずさる。
そこへ…
「高村さ〜ん、どこですか〜?」
「げっ!アキラ!もう戻ってきたのか」
「高村、ここは俺が何とかする!」
「サンキュ、祥!」
そう言って、高村は屋上へと戻って行った。その後を守るように祥は両手を広げて伊沢の進路をふさぐ。
「祥、どうしても俺の邪魔をするつもりか」
「言ったろ。今日だけはお前とアキラを合わせるわけにはいかねぇんだ」
「そうか。なら…」
伊沢の敵意が祥へと向かう。ビリビリと肌に突き刺さる空気に動じることなく祥は屋上のドアの前に立った。
そこへふと、高村はとアキラの会話が聞こえてくる。
「高村さん、どこへ行ってたんですか?」
「あ、ああ、ちょっと便所に…それより、早かったじゃねぇか」
「そこで、荷物を重たそうにしてるおじいさんと会って、手伝ったらくれました」
「…(ジ・ジ・ィ〜!)」
「今日は本当にありがとうございました。伊沢(・・)の(・)誕生(・・)日(・)プレゼント(・・・・・)選び(・・)に(・)つき合って(・・・・・)いただいて!」
「「…!ああああああああ〜…」」
高村と祥の声にならない魂が叫ぶ
「…なに?」
「ど、どうしました?高村さん」
「い〜え、何でもありません…それより聞いてもいいか?」
「はい」
「伊沢の誕生日ってまだ2カ月も先だろ?なんで今買うんだ?」
「えっと、あの、この間雑誌を見て『いいな』って言ってたんです。伊沢、そういうの言わないから忘れないうちにと思って…」
「そ、そっかぁ〜あいつは幸せ者だなーあははー」
青空を見上げながら高村は泣いた。
「って、わけだから知らないフリしとけよ」
「…帰る…」
「お、おい」
フラフラとヨロメきながら伊沢はエレベーターへ向かい、無言のままのって行った。


―2ヶ月後―
「伊沢、はいコレ。気に行ってくれると良いんだけど」
「ありがとう」
何も知らないアキラが心からの笑顔で伊沢へ笑いかける。伊沢も普段は崩れない表情を軽く崩して笑いかける。
「なぁ、俺たち、何であんな苦労したんだ?」
「そりゃ、アキラのためだろう」
少し離れた所で高村と祥が2カ月前の苦労を思い出し、ポツリと呟きあった。

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