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蘇る青春・1973年銀幕放蕩記コミュのワケありの8月?

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今回は8月下旬からの(変則的ではありますが)続きです。いつもキリのいいところで締めているのですが、それには理由がありました。それがなにかは本文中で明らかにしております。

この8月25日から始まった毎日ホールでの特集上映“日本の喜劇映画フェスティバル”は凄い企画だった。

ラインアップといい、ヴィデオも出ていない当時に、これほどのボリュームを自主映画会が持ちえたのである。

この上映会を逃せば二度と見られないものが沢山あった。キネマ旬報大阪読者の会でお目にかかる松田さんが当時のキネ旬に投稿されている。(73年10月下旬号)

★大阪毎日ホールの日本の喜劇映画フェスティバルは連日満員で、売店のおばちゃんも“面白い映画は古いもんでも、よおけの人が見にくるな”。中年のおっちゃん“エノケンもの何回見てもおもろいわ”、ヤングのにいちゃん“「生まれてはみたけれど」これチャップリンの「街の灯」とええ勝負や、リバイバルで一般に上映したらええのに”。その通りや。(尼崎市武庫元町・松田隆之・公務員・39歳)


<『丹下左膳余話・百萬両の壷』『赤西蛎太』『生まれてはみたけれど』> 
毎日ホール・自主上映(8/25)

 なんと言っても山中貞雄の『百萬両の壷』が面白い!

当時原作者サイドからクレームがついたというのも頷ける。この丹下左膳はまったく違うもの。人なつっこく、淋しがりやで、尻にしかれていて、愛すべきキャラクターではないか。これをニヒルそのもので売り出した元祖・左膳の大河内傳次郎が嬉々として演じているのが楽しいのだ。

84分間があっという間に終る。言葉のギャグ、身体のギャグ、繰り返しのギャグ。いずれもが若々しく快調。山中貞雄というひとは3本しか映画を残していないというが、この1本だけでものすごい才能を窺わせる。そういえば、この間会ったYさんという怪しげなおっさんも「山中貞雄だけは見ときなさいよ」と言ってた。

「ああ、『抱寝の長脇差(だきねのながわきざし)』のですか?」と聞いたボクに「だきねのナガドス、っていうんです」と教えてくれたっけ。

期待していた『赤西蛎太』は短縮版であり、フィルムの状態があまりにひどいので、論外だ。親父が昔『赤西蛎太』は『シラノ・ド・ベルジュラック』から出来てるぞと言っていた。

最近は『シラノ・ド・ベルジュラック』の映画化がないから比較しにくい。事典で見ると『アラビアのロレンス』でピーター・オトゥールの手羽先をつまんでいたホモの司令官をやってたホセ・ファーラーがやった名作があるらしい。

全くのサイレントで、伴奏音楽もない『生まれてはみたけれど』はボクにとって小津安二郎映画の最初となるものだ。昼間だというのに何百人もが入った毎日ホールが咳払いひとつなく。この名作に見入っていた!はじめて見る小津は、とてつもなく素晴らしい人間を看破するコメディであった。恐るべき名匠だ。 


<『エノケンのちゃっきり金太・総集編』『清水港・代参夢道中』『エノケンの法界坊』>
毎日ホール・自主上映(8/27)

山本嘉次郎はNHKの「それは私です」の回答者として知っていたが、実際の作品(『ちゃっきり金太』)に接するのはこれが初めて。佐藤忠男の名著「黒澤 明の世界」で読んだが、山本は黒澤の師匠だということだ。

エノケンに中村是好、如月寛多などお馴染みのメンバーが出ているが、総集編で70分しかなくブッツブツの印象。原作はマッカレーの『地下鉄サム』というスリのおはなしだという。

同じくエノケン主演の『法界坊』はドタバタ喜劇の王様と呼ばれている斎藤寅次郎監督作品。しかしこれも50分しかない。とにかくイキがよさそうなことだけは分るけど、ストーリーはパラパラ。『人間の条件』の円地二等兵こと小笠原章二郎がすでに老けてでている。

『続清水港・代参夢道中』は現代の劇演出家が演出がうまくいかず、うたた寝していると自分が石松になっているというコメディ。なんかどこかで見たことあるなぁと思っていたら中村錦之助と丘さとみで東映時代劇があった。小国英雄の脚本だが黒澤の映画といい、東映時代劇といい、テレビの傑作『剣』といい、すごい才能のひとのようだ。

少なくともエノケンの真骨頂を見ることが出来る映画は残念ながら現存していないようだ。『虎の尾を踏む男たち』は確かに凄いが、巨匠の映画だからチト違う。

戦前のオペレッタという意味では『エノケンの孫悟空』が堂々たる大作だがエノケンのパワーは薄い。シミキン、ロッパ、エノケン・・・、いずれもフィルムに限ればなんか違うのじゃないだろうか。



<『ビリー・ザ・キッド21歳の生涯』> 
大阪フィルム・ビル試写室・試写会(8/28)

滅多にないことだが、キネ旬からの試写会招待による大阪での上映だ。フィルム・ビルというのは各映画会社がひとつのビルに集まっていて、試写室を共有した建物だ。

2時間以上のペキンパーとしては大作なのだが、あまり面白くはない。クリス・クリストファーソンのビリー・ザ・キッドにジェームズ・コバーンのパット・ギャレット。シンミリ・ネッチリの暗い映画だが、このキッド&ギャレットのエピソードはついこの間『チザム』で描かれたばかりだ。

あのピート・デユバルとグレン・コーベットによるコンビは良かったからなあ。たしかに『チザム』は『任侠東海道』みたいなピーカンの大作で、今度のは集団抗争時代劇みたいなもんだから、面白さの質が違う。



<『にっぽんのお婆ちゃん』『気違い部落』> 
毎日ホール・自主上映(8/30)

今井 正の『にっぽんのお婆ちゃん』は随分と厳しい映画で、最初は老人を主人公としたコメディかと思っていたら、流石は今井 正だ。

社会派の重喜劇で、ひとの死も絡んだ展開は重たく鋭い。北林谷栄、ミヤコ蝶々、飯田蝶子、原泉、浦辺粂子、村瀬幸子、岸 輝子、東山千栄子などにっぽんの婆さん女優総出演の感あり。『気違い部落』はむかしNHKで何度も放映されているから何度も見たが劇場でみるのは初めてだ。

東京郊外の極貧の村が舞台のやはり重々しい喜劇である。淡島千景が綺麗だ。水野久美はこれがデビューなのか?松竹映画の水野をみたのは初めてだった。きだみのる原作。菊島隆三脚本。

きだみのるは三好京三原作の『子育てごっこ』の主人公のモデルと言われている。それにしても差別用語2連発のこの映画は題名だけでもテレビ放映はむりだろう。

そこに極貧を描いたのだから、いまのような事なかれ主義の安全路線では極貧だけでも差別と考えて放映されるはずはない。人間観察が行き届いた重喜劇、決して大笑いしたりする映画ではない。



この映画を見て、その足で新学期のために帰京することになった。いつもの新幹線。新大阪〜東京間4130円也。水了軒の八角弁当とお茶を買い込み座席に着く。

丁度名古屋を過ぎたあたりであったろうか、ボクは週刊誌の記事の1行に目が釘付けになってしまった。そこには8月2日に亡くなったフィルム・ノワールの巨匠ジャン=ピエール・メルヴィル監督の回顧上映が東京の名画座で早速企画された・・・、という記事だった。

何だって!メルヴィルが死んじゃったんだと!初耳であった。

ボクにとって一生に1本という映画『影の軍隊』を見せてくれた恩人メルヴィル。

初めてひとりで名画座通いを始めた頃シビレた『ギャング』、親戚のいとこのお姉さんに奢ってもらった『サムライ』、遺作となった『リスボン特急』はついこの間のことじゃないか!

後で分かったことなのだが、ボクが映画開眼したジャック・ベッケルの『穴』はメルヴィルのスタジオで撮影されたものであった。

そういう因縁の運命の糸によって関係が確かめられたメルヴィルとボク。若いからこその強引なる理由付けだったかもしれないが、初めて人間は死んじゃうんだと新幹線の座席で思い知ったのである。

そこでボクは決心した。

恩人の喪に服すことを。

1ヶ月はどんなことをしても映画を絶って、我慢することにしたのである。


だからこのコラムも、9月編というのは真っ赤な偽りで、9月は服喪期間であったため、ついに我慢したのでした。

来月号からは喪が明けた身に、どんな出会いが待っているでしょうか。

コメント(1)

1973年9月の映画鑑賞記録・浪人生侘助の場合

9月も少ないです。けっこう、けっこう。ちゃんとお勉強しているようです。

9月4日「濡れた荒野を走れ!」澤田幸弘、「一条さゆり 濡れた欲情」神代辰巳(並木座)200円
9月10日「関の弥太ッぺ」「日本侠客伝 昇り龍」ともに山下耕作(並木座)180円
9月11日「日本脱出」「エロス+虐殺」ともに吉田喜重(蠍座)350円
9月15日「女教師 私生活」田中登、「非情学園ワル 教師狩り」三堀篤(三ノ輪文化映画)250円
9月21日「囁きのジョー」「小さなスナック」ともに斎藤耕一(蠍座)300円
9月28日「新宿アウトロー ぶっ飛ばせ」藤田敏八(文芸地下)150円


9月10日の「関の弥太ッぺ」は、この時初めて観たのですが、えらく感動しました。

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