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蘇る青春・1973年銀幕放蕩記コミュのやはり映画三昧・8月

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<『特攻大作戦』> 
千日前国際劇場・封切り(8/5)

 大好きなロバート・アルドリッチ監督の代表作リヴァイヴァル公開。(父と同行)もっともボクは初見であった。150分の大作で、クセモノ俳優のオール・スター映画でもある。だが、意外に面白くない。贅沢な望みなのだろうか?

これほどの顔ぶれなのに、大味なのである。面白いのは、生き残る3人がマーヴィンとブロンスン、そしてリチャード・ジェッケルだったことで、この頃からブロンスンは別格扱いになっていった。

この『特攻大作戦』に続編があったことは案外知られていない。ボクの知る限り2本ある。

いずれもリ・マーヴィンが主演しているのだが、ケーブル・テレビ用の映画だと見えて、3本目ではCMの入る暗転まであった。よぼよぼになってきたマーヴィンが『デルタ・フォース』シリーズなんかに出ながらキャッシュを稼いでいたと睨んでいる。



<『ジョニーは戦場に行った』『ラ・スクムーン』> 
新世界国際・名画座(8/14)

ティモシー・ボトムズ扮するジョニーは第1次世界大戦に出征.砲弾により両手、両足、音声、視覚、聴覚を一瞬に失い、生きてはいるが、一個の肉塊として生かされている。現在の病院内の客観描写(モノクロ)と、故郷での恋など輝かしい記憶の描写(カラー)での鮮烈な組み分けは、いわば陰と陽、絶望と歓喜を鮮やかに描き出す。

ベテランの脚本家が65歳にして撮った処女作はカンヌで絶賛を浴び審査員特別賞を受賞、昨年の芸術祭大賞も得た。地味な内容ゆえに、やっと公開にこぎつけたものだ。

正攻法、リアリズムでときに冷酷に、ときに抒情的に生命の尊厳を描き出すのだ。その重さゆえに、息が詰まるほどに迫ってくる。二度と見たくない傑作といったひともいる。

 トランボはこの映画を少年と少女の、父と息子の、看護婦とその患者の、病人と生命との愛の四重奏である。

愛が宗教なら『ジョニーは戦場に行った』は宗教映画であると語り、その意味であのルイス・ブニュエルが製作を希望したとき、彼以外の監督はまったく消え去ったとも答えている。

なぜなら、ブニュエルこそ世界でもっとも宗教的な映画監督であり、最も恐るべき、最も完全な映画監督であるからと発言していた。ブニュエルによる本作を見てみたかったとこころから思う。この頃、トランボが赤狩りを経て、仮名、偽名での執筆でようやく生き延びたシナリオ・ライターであることはまったく解らなかった


<『人間の条件』全6部一挙上映> 
毎日ホール・自主上映(8/19)

 全9時間31分一挙上映に父子で出かける。全6部といいながら、1と2、3と4、5と6というふうに、当時から2部ずつ3時間となるように作られ公開されていたものだから、どちらかというと全3部作というべきなのだろうが、五味川純平の原作のライン・アップに沿った命名なのであろう。

ボクは加藤 剛が梶を演ずるTBSテレビの『人間の条件』を繰り返し見て育った男だから、はなしのスジは熟知している。

この映画版があればこそのテレビ版だったことは自明の理なのだが、最初に出会ったものの影響は大きく、有名な小林正樹作品がテレビ版を凌駕する部分といえば
?1〜2部における中国人の奴隷に関する描写(差別的描写の規制による)が鮮烈。

?セットなどのスケールの大きさ。

?梶という主人公の性格設定の複雑さへの挑戦と成功。といったことになるだろう。

テレビの加藤 剛は誠実で真面目なストレートさは魅力だと思うが、仲代達矢の梶は例えば古年兵に鉄拳制裁を加えられているときなど、目の奥に加藤 剛のような理不尽なものに対する怒りの光を放つといった直接的な反応は見せないように思う。

なんともいえない得体の知れない不気味な雰囲気さえ感じることがある。こういうことが、映画の醍醐味のひとつであると解る。

そういえばテレビで円地二等兵を演じていた小笠原章二郎が映画でも同じ役をやっていた。この作品については、1時間もの全26回という長時間で描いたほうがテーマが浮き彫りになってよかったと感じた。

佐田啓二よりは中野誠也、田中邦衛よりは梅津 栄といったようにお馴染みのテレビのメンバーのほうが親しみやすい。なかでも逃避行の挙句日本兵たちに犯されて死んでいく少女は中村玉緒よりは、はかなく美しい高野通子がふさわしかった。

この12時間にわたる映画の1日興行で思い出すのは、父がまだ元気な頃でヘビー・スモーカーだったため、禁煙を守れずにタバコを吸ってしまい、となりの大学生に計5回は注意されたこと。

吸うときだけロビーに行って吸えばいいだろうに、それが我慢できないとは情けない。だけど、逢いたいです。



<『子連れ狼・冥府魔道』『御用牙・かみそり半蔵地獄責め』> 
新世界東宝敷島・封切り(8/22)

 この日ボクは見知らぬ人から呼び出され、新世界に出向いた。どうやら興行畑にいる人らしく、ちょっとお話したいということだった。

Yさんと名乗り、調べてみるとキネ旬などにもチョコチョコ投稿している、関西では有名な人らしかった。年の頃65歳前後で、落ち合うと「ちょっと、頼ンます」と新世界東宝敷島のテケツを顔パスで通過。まず見せてくれる。

 おなじみ勝プロ2本立て。『御用牙・かみそり半蔵地獄責め』は増村保造演出ということで期待大であったが、結局第1作よりは面白いものの、増村にすればどうということもない出来。ただ草野大吾や石橋蓮司、松山照夫などのクセもの俳優の助演ぶりがおもしろい。

このYさんというひとがボクに関心をもったのも、お世話になっている新世界のことをキネ旬に投稿した次の文章があったからだった。



【 嬉しい時代錯誤の街「新世界」キネマ旬報1973年4月下旬号掲載 】

安い値段で映画が見れることはファンにとって一番嬉しいことである。そして安い上にチットやソットじゃお目にかかれない作品が上映されるとなればこれほどファン冥利につきることは無い。

大阪にあってこの様な夢の権化のみたいな映画館が隣接している街があるといったら、さっしのいい人なら,何処を指しているのかがお判りだと思います。

その街は通天閣の真下に広がる繁華街、その名も楽しい『新世界』なのデス。名前に反してこの街ほど時代を超越した処も珍しい。映画館が12、ボウリング場、スナック、ありとあらゆる娯楽設備が整っているのだが、この街にはボウリング場が何と不似合いなことか。

スナックはカフェー、映画館は活動小屋と言った方がピッタリなのです。実に、常軌を逸したというか、嬉しい時代錯誤なのだ。

どんな変わり者の街かは、全映画館は8時半〜9時半に開映、串カツなど飲み屋は朝9時に営業開始というだけでお分かりでしょう。どう見ても昭和初期のムード。映画館にしても今ごろ12月になると、必ず“忠臣蔵”をかける映画館があるでしょうか。

ここ一年にどんなにスゴいう番組があったかを詳しくお知らせしましょう。封切館は東映、東宝、松竹、日活がありますが、大人は550円で入場できます。そして名画座は、ほとんどが3本立て300円。売店は50円いじょうのものは余り置いていない。今どき、映画館でコーラが40円で飲めますか?

【新世界東宝敷島】
平常は東宝封切り。ところが時代劇か怪獣モノ以外の番組は長くて1週間しか上映せずに、旧作3本立てに変更。『忍ぶ川』はなんと4日間で打ち切り。その代わりに登場する旧作が、8・15シリーズ以前の戦記もの「キスカ」、稲垣 浩の「佐々木小次郎」や15年前の「柳生武芸帖・双竜秘剣」、大作時代劇の「怪談」「上意討ち」「待ち伏せ」「御用金」等で、つい最近も三船敏郎主演の『国定忠治』なんていう珍しい作品が上映され、『沖縄決戦』が公開されたときには、嵐寛寿郎が牛島中将に扮する大蔵映画『太平洋戦争と姫ゆり部隊』が時を同じくして上映された。黒澤特集もやっており、ここ15年間の旧作時代劇(東宝のみ)を見たいなら、注意して待っていれば必ず上映してくれる。

【新世界日劇】
東映の新作1本に五社の旧作2本との3本立てが普通。この旧作に東映時代劇や初期のやくざ映画、名作と言われる仁侠映画を上映する。時代劇は『旗本やくざ』『股旅三人やくざ』から内田吐夢の『大菩薩峠』まで豊富。任侠ものも沢島 忠の『人生劇場・飛車角』正・続・新編3本立ては痛快!昨年秋には『三代目襲名』『誇り高き挑戦』『ジャコ万と鉄』など配給停止など何処吹く風といったアンバイ。東千代之介や大友柳太朗に会いたいひとは見逃せません。このほか実にユニークな映画がひしめきあっているのですが、それを語るにはちょっと資料不足なので、後日にその機会を譲りたいと思います。
(兵庫県堺市大豆塚町1−17−10・学生・19歳)

大阪府を勝手に兵庫県と書かれたのはご愛嬌としても、この文章は全国の映画ファンにインプットするきっかけにはなったようで、東京に行ってからも2人ほどの人に指摘された。

Yさんというひとは、初めて会ったとたんに、なにやらいかがわしい印象のおっさんで、どうやらなにか映画のことで手伝わせるつもりで呼びつけた、というのが真相だろう。こっちがまったくなびいてこないのでぐったり。「じゃあ、私は省線で帰りますので」と寂しくかえっていった。

 新世界には国鉄天王寺民衆駅(こりゃいかん、死語だ死語)。

JR天王寺駅ビルから天王寺公園・天王寺動物園を縦断して着く。通天閣を目印に徒歩7〜8分だ。1970年の大阪万国博から田中角栄の唱えた日本列島改造論による空前の建設・土木ラッシュにより、新世界は沸きかえっていた。

というのも近くには釜ヶ崎があり、ドヤ街も働けば働くほど稼げる時代の到来に沸きかえっていたのだ。掲載された73年とはそんなころだった。しかし現在の新世界は、冷え切った経済状況を背景に、労働者の高齢化に比例するように、映画館も半減し映画館も老朽化。

そのかわり新世界をなんの屈託もなく、ディープ・タウンだと面白探検にくる女子大生が串かつ屋に行列する、妙な状態になっている。

 天王寺は東映『関東テキヤ一家・天王寺の決闘』でタイトルに登場。大映作品によく出ていた関西の個性派脇役・天王寺虎之助は動物園があることから付けた芸名。

釜ケ崎は長門裕之主演の『当たりや大将』、若山富三郎の『極道』シリーズがある。『じゃりん子チエ』は釜ケ崎の住民が生活用品を買いにいく萩の茶屋商店街が舞台と思しい。

この釜ケ崎には有名な飛田遊郭が隣接している。(ロマン・ポルノにはその名も『赤線飛田遊郭』という映画があった)天王寺動物園は増村保造監督の『悪名縄張り荒し』で朝吉が琴糸(十朱幸代)と一緒に遊びにいくシーンあり。新世界を舞台にした映画は数知れずだ。

余談となるが、この投稿文が掲載されたちょうど2ヵ月後の6月下旬号の巻末“私はこう思う欄に次のような文が載った。

★読者の皆様、4月下旬号の“キネ旬ロビィ”の吉川氏の文章を読んでくれましたか?新世界こそ大阪の名所なのだ!近頃、通天閣に来る客がへったという。人はここをキタナイといいやがる。しかし、ここにこそ、映画狂の楽天地があるのだ。(大阪府茨木市別院町・大塚敏生・中学生・14歳)

今回30年ぶりにキネ旬を読み返していて、やっと思い出したものだったが、今は親の立場で見るからか、心配になってしまう。大塚クンがこの後ちゃんとした人生を歩んでくれただろうか?ボクにも経験があるから判るのだが、こういった熱の入り方をするタイプは少し危険なのだ。

中学生でこういう内容を投稿するやつは極めて珍しいはずで、出来るなら人知れず探索したいほどだ。

恐らく、落伍者とは言わぬまでも、随分とまわり道する人生ではなかったか。思えばボクなどは、人にほとんど影響を与えるようなことのない人生だったが、19歳のときにちょっとしたムーヴメントは起こしてはいたのかな。

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