ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

蘇る青春・1973年銀幕放蕩記コミュの初の夏休み・7月

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
現役女子高校生の綿矢りさ(17歳)が書き、第38回文藝賞を受賞した『インストール』を読んでみた。

“1973年映画青春記”のボクは19歳であったけれど、あっけらかんに展開してはいく『インストール』の彼女に較べて、なんという幼き人格であったかと愕然とする。

父と母、そして社会がボクのような幼稚な人間を追い詰めず赦してくれていた時代だったと分かる。

夢があり、夢を追い続けることが赦された時代・・・、それはまた映画が夢を持って語られた時代でもあったのです。

映画館は古く汚く狭く、しかしスクリーンには大きな希望が描かれていた。どちらが幸福だったなどとは言えないが、映画しかなかったボクの青春を悔やみはしないが、『インストール』の高校生になってみないか・・・と言われたら、おそらく逃げ出したくなる。

それだけでも、今の若者に1翻(イーハン)つけちゃおう、かな。



<『股旅』『戦争を知らない子供たち』『赤い鳥逃げた?』>
テアトル新宿・名画座(7/4)

 遂にピリッとしない東宝青春映画に日活の藤田敏八が外部から招かれて演出に当たった。このところ肝心な喜劇路線においても湿りがちな東宝は生え抜きの監督を休ませ、松竹の前田陽一監督に撮らせたりしていたが、遂にそれがボクの愛する青春映画にも及んできた。

ここに描かれた若者像は過激で、従来の東宝からは考えつかないものである。はっきりいえば犯罪者であり、いくら泥棒の上前をはねるからといっても180度違う。だが、これが面白い。

新鮮なショックがあった。そして東宝の青春映画には常に前進しなくてはならない暗黙のルール、レールが敷かれていたが、見事に無気力、無作法、遊戯感覚のうちに犯罪になだれこむリズムなど「甘えっぷり」が気に入った。ここから新しい東宝青春映画が育つならどんなにいいだろう。


しかし東宝青春映画は数本の佳作を生んだものの、時代の潮流のなかで蘇ることはなかった。中流家庭に育った普通の若者の青春を撮り続けることの脆さ・難しさ。しかし最大の理由は“貧しさ”という要素が採りあげることが出来なくなったことではないか。

藤田敏八は日活においての秋吉久美子主演による『赤ちょうちん』『妹』『ヴァージン・ブルース』の3部作に独特の世界を開花。角川映画屈指の作品『スローなブギにしてくれ』を残す。しかし何といっても『八月の濡れた砂』のひとである。



<『さらば白き氷壁』> 
銀座ガス・ホール・試写会(7/6)

西ドイツの山岳記録再現映画。モンブランのフレネー岩壁遭難に関する再現部分が印象的だが、当然のことながらあまり楽しくない。

むかしから沢山のドキュメンタリーがつくられたが、山岳ものにはガストン・レビュアの『天と地のあいだに』という傑作があった。この映画には後年『新天と地のあいだに』という続編すらあった。

ボクが幼稚園のころ『秘境ヒマラヤ』という日本の記録映画は大変な評判を呼び、キネ旬ベスト・テンにも入った。ボクたち兄弟は喧嘩しながら「そりゃ卑怯ヒマラヤやで!」といった言葉遊びをしたものだ。

体育の授業で集団で走るときに「安保ハンタイ」と言いながらワイワイやっていたことも懐かしい。これも映画が少年のみならず庶民の興味の対象であった時代なればこそだ。

ディズニーだって『ジャングル・キャット』や『砂漠は生きている』など動物ドキュメントは重要なラインアップだった。現在はこの分野はヴィデオ映像に完全に取って代わられた。

『さらば白き氷壁』の作品そのものは決して悪いものではないが、ボクたちの日常そのものが変わってしまったために、起爆剤とはなるはずもない。




<『最後の猿の惑星』> 
久保講堂・試写会(7/9)

遂に最終篇である。しかしまったく面白くなく、消え去るのも致し方なし。『ナバロンの要塞』のJ・リー・トムプスン監督なのに困ったものだ。もっとも『0の決死圏』という前科があるものね。

ティム・バートンのCGだらけの『猿の惑星』のつまらなさは、もはやボクたちがなにも許容できなくなっていることのつまらなさではなかろうか。

『猿の惑星』5部作はメーキャップの大変さに由来した、(すべてのスタッフ・キャストへの)ネギライの感情が根底にあった。だからこそ、フランクリン・シャフナーの第1作目だけで十分だったのだ。

お岩を演じる女優さんにご苦労さんやね、といった気持ちがあればこそ、ひとは怖がっても見せるのではないか。知的遊戯のひとつなのだろう。

CGを駆使すればするほど、観客はこういった無機物的なものに対しては望むことに容赦しない。ひとが優しくなれるのは、ひとがなにかに耐えたり我慢しながら挑んでいることに触れ得たときなのだ。



<『運が良けりゃ』『馬鹿が戦車でやって来る』『喜劇・ソレが男の生きる道』> 
新宿名画座・名画座(7/11)

 喜劇3本立てを専門としている新宿座は、やくざ映画専門館である新宿昭和館と並んで、東京でしか成立しない映画館の雄である。

この山田洋次の旧作2本は少なくとも大阪では数年間上映されてはいなかった。『馬鹿が戦車(タンク)でやって来る』は『馬鹿まるだし』に匹敵するような哀愁に溢れた佳作だとおもう。

森崎 東脚本、渡辺祐介監督の陽のあたらない傑作喜劇『日本ゲリラ時代』は、犬塚 弘のキャラクターなどはこのあたりから継承されていると見た。

『運が良けりゃ』は古典落語を題材にしたものだが、あまり胸に迫るという映画ではなく、むりやり笑っていればいいのだろうが、山田洋次でなくても撮れる映画で、今日のフィルムは雨あられが降っていて状態悪し。

新宿歌舞伎町の一角、ミラノ座会館の新宿東急の隣で、地球座会館との角にあった新宿名画座は懐かしい小屋である。

老朽化した一戸建ての映画館で、歌舞伎町広場に向けて新宿名画座の1文字ごとの大きな館名のネオン・サインは目を引くものだった。

新世界の小屋に通ずる雰囲気があり、観客はほとんど中年以上の男性だ。売店には冬場にはおでんがあったこともある。
迷惑なのはカップ・ラーメンを映画を見ながら啜られると、音よりも匂いが強烈だったこと。

番組がほとんど東宝、松竹に限定されてしまうことで、東映のブッキング停止策のあおりを喰らっていた。

そういえば、このとき一緒にいったのは大学の同級生のTくんで、相当なカルチャー・ショックだったとみえ、「吉川さあ、映画はやっぱバマツにかぎるよね」という迷言を吐いた。場末をバマツと読んだわけだ。



<『ローズマリーの赤ちゃん』『赤ちゃんよ永遠に』『見えない恐怖』> 
テアトル新宿・名画座(7/14)

 どうせなら『屋根の上の赤ちゃん』を入れて赤ちゃん3本立てにするか、『赤ちゃんよ永遠に』をはずし『フォロー・ミー』を入れてミア・ファーロー特集にすれば良かったのに。

それでも『見えない恐怖』には大満足。ミア・ファーローが盲目の若妻で、自宅での連続殺人事件に巻き込まれていくサスペンス映画だ。

ただ座頭市でも描かれているように、盲人は嗅覚には敏感なはずで、自分の寝室に血みどろの死体が転がっていたら血の匂いでわかるんじゃないかしらん。娯楽映画の達人職人監督リチャード・フライシャーの腕はたしかに鋭い。

『トラ・トラ・トラ!』『ドリトル先生不思議な旅』といった大作から、『ミクロの決死圏』のようなパイオニア的嚆矢たるSF映画、『恐怖の土曜日』のようなサスペンスまで作品の種類・幅・懐の深さ。こういうひとが何人かいれば、映画界は安泰だ。



<『八月はエロスの匂い』『戒厳令・叛乱北一輝と二・二六』>
北野シネマ・封切り(7/17)

北 一輝とはいったいいかなる人物なのか?吉田喜重監督の『告白的女優論』に続く新作は、北 一輝という得体の知れない人物を中心に2・26事件の首謀者と言われる彼の複雑な人間性を引き締まった画づくりのなかに描いている。モノクロ映画の魅力が溢れており、いまやATGしかモノクロの新作が公開されない現状では、ATGに頑張ってもらうしかない。



<『忍ぶ糸』> 
敷島シネマ・封切り(7/18)

 この原作自体は昨年朝日放送ラジオの朝の連続ラジオ・ドラマで毎日聞いていたから、よく知っていた。原作者の北泉優子さんは伊賀上野市議会議長の娘さんだという。

出目昌伸の演出は、こういう文芸作品を撮るのは初めてだが、やっと作品に仕立てたという感じで余裕はあまりないようだ。

生硬な印象が栗原小巻の演技にも反映していて、若いうちはキリッとした意思の強さを思わせるのだが、これが映画デビューとなる真野響子の母親になってからも同じような演技に終始するものだから、結局演技の幅があまりないことが露呈してしまった。

やっと『忍ぶ川』で名実ともに認知されスケール・アップしてきた栗原小巻にこういう古臭いだけの企画を立てたこと、責任だ。とにかく19歳のボクには面白く感じられる部分は極めて少ないといわざるを得ない。

出目昌伸監督には『俺たちの荒野』『誰のために愛するか』以外では、まったく裏切られ通しだ。『忍ぶ糸』は単に『忍ぶ川』と音韻が似ているだけで企画が通ったのではないか。

唯一伊賀上野に長期ロケしただけあって、風景だけが取り柄だ。河原崎長一郎が公開直前になんだったか事件を起こしニュースになったため、彼が出てくると笑いが起こった。

このことはキネ旬にも同じことが報じられていた。河原崎は、ここ十年間の連続テレビ時代劇ドラマの傑作『清佐衛門残日録』の“平八の汗”でタイトル・ロールの平八を演じて名演を見せた。平八は脳卒中を起こして倒れる役だが、河原崎長一郎自身も脳卒中で倒れ,ついに亡くなったと聞く。この数年奥さんの伊藤栄子と、成長した娘さんが女優になって画面に登場している。

『黄金孔雀城』のお子様映画からスタートし、『幕末残酷物語』『宮本武蔵』など東映時代劇の脇役として多くの作品があるが、なんといっても浦山桐郎監督の傑作『私が棄てた女』であろう。長髪の河原崎は浦山監督にそっくりで、彼に浦山監督が自分を投影していることは間違いなかろう。



<『BIRD★SHT』『おかしなおかしな大追跡』『爆笑・大沈没』> 
新世界国際・名画座(7/25)

 ルイ・ド・フィネス主演の『爆笑・大沈没』は東京ではチャップリンの『モダン・タイムス』の2番封切りに2本立てとしてスプラッシュ公開された映画。

監督のロベール・デリーは『ミス・アメリカ、パリを駆ける』という面白い映画があって、有名なジャック・タチの後継者とも目されているひとらしいが、この映画ではその片鱗もない。

だが老体に鞭打ってフィネスがドタ・バタに徹していて、これのみが評価される。1箇所だけ息が止まるかというような笑いがある。

ルイ・ド・フィネスは『ファントマ』シリーズや、ブールヴィルと共演した『大進撃』などが有名だが、映画の仲間だった若き日の納富幸則くんが「ありゃ、フランスの平 参平でしょ」と言った名言あり。

生涯芸術作品に縁なく、ドタバタに消えていったひとだった。文中の1箇所だけのすごい笑いのところだが、フィネスがカヌーに乗りながら逆さになったり、ひどい目にあうところで、ジャック・タチの傑作『ぼくの伯父さんの休暇』でボートを踏み抜いて浜に出るも真っ二つ。あたかも鮫の口に飲み込まれたように見えてリゾート客が慌てふためくシーンから繋がるものである。


<『ブルー・ハワイ』> 
道頓堀ピカデリー(浪花座2F)・封切り(7/28)

 愉しい!エルビスが歌い踊るが、若いというだけで許せてしまう。それはまたアメリカ映画でしか表現できない、テクニカラーという夢の絵の具で無限大というカンバスに描かれた、2時間の現実逃避。


<『宮本武蔵 第1部関が原より一乗寺下がり松、第2部柳生の里より巌流島』>
 道頓堀浪花座・封切り(7/29)

大抵は3部作、内田吐夢監督では5部作であった宮本武蔵が137分というダイジェスト版で登場。コクなく、情緒なく、粘りなし。そのウップンを晴らすかのようにキャストだけは松竹関係者のオール・スターとなっている。

注目すべきはお杉婆が任田順好、刀研ぎ師に潮路 章と加藤 泰監督子飼いの俳優たちが起用されていること。あれっ、もう終わり?と思うほど数々の決闘シーンがスティル・カットみたいに一瞬で終わるが、潮路 章扮する刀研ぎとの哲学的なやりとりなどに時間が割かれていて、著しくバランスを欠いたものだ。

なにしろ又八がフランキーだから、お杉婆とそう年が変わらないという事態も起こっている。加藤 泰のロー・アングルも極まって、水の中にまでカメラを沈めるところまでいってしまった。『人生劇場』『花と龍』と好調な加藤 泰だったが、これはなんといってもムリな企画であった。



<『黒いジャガー・シャフト旋風』『プロフェッショナル』『かわいい女』> 
新世界国際地下・名画座(8/1)

3本目に見た『かわいい女』、ボクは絶対に忘れないだろう。これはジェームズ・ガーナーがフィリップ・マーロゥに扮した低予算アクション映画である。映画自体はどうってことのない出来のとぼけたもので、売りは『ウエスト・サイド物語』のリタ・モレノがストリップ嬢になるという程度のもので、ガーナーのいつもながらの抜けた表情同様に冴えない映画だった。

ただ、たったひとつのシーンを除けば・・・、である。マーロゥを東洋人の小さな男が訪ねてくる。そして、あっという間に空手だけでマーロゥのみならず、部屋中のテーブルといわず机といわず粉々にぶっ潰してしまうのだ。

ここまで破壊するのは『おかしなおかしなおかしな世界』のジョナサン・ウインターズがガソリン・スタンドをぶっ壊すシーン以来じゃないかしらん。

この衝撃だけでも見ものでした!

しかしこの東洋人に半年後再会したことが、もっとビックリだった。彼こそブルース・リーだったのだ!

もっとも『浮かぶ要塞島』と宣伝されていたB級アクション映画が『燃えよ!ドラゴン』として正月映画になったこともキネ旬からもらった試写会招待状がなければ見るはずもなく、まったく予備知識なしで『燃えよ!ドラゴン』を見た衝撃を考えてみてください。

「あれは、『かわいい女』の中国人やぞ!」と叫びたい衝動を押さえつつ久保講堂で飛び上がったあの夜、ブルース・リーはもはやこの世の人ではなかったのだ。



コメント(1)

1973年7〜8月の映画鑑賞記録・18歳の浪人1年目だった侘助の場合

7月6日「ジョニーは戦場へ行った」ドルトン・トランボ(みゆき座)0円・封切
7月13日「花と龍」「みな殺しの霊歌」ともに加藤泰(文芸地下)150円
7月20日「荒野のストレンジャー」クリント・イーストウッド(佳作座)250円
7月27日「海底王キートン」「キートンの白人酋長」ともにバスター・キートン(ガスホール)試写会0円


8月10日「ビリー・ザ・キッド 21歳の生涯」サム・ペキンパー(久保ホール)試写会0円
8月17日「明治侠客伝 三代目襲名」加藤泰、「緋牡丹博徒 仁義通します」斎藤武市(並木座)180円
8月18日「レベッカ」A・ヒッチコック(TV)
8月21日「ジャッカルの日」フレッド・ジンネマン(第一生命ホール)試写会0円
8月25日「初国知所之天皇」原将人(ポーリエ・フォルト)1000円
8月31日「ボギー!俺も男だ」ハーバート・ロス(新宿文化)0円


7月は僅か4回、8月も6回と、映画に足を運ぶ回数が減ってきました。予備校の夏期講習などで、映画どころではなかったのでしょう。ザマミロ。

ここで特筆すべきは、8月25日に観た「初国知所之天皇」。原将人さん自らがプロジェクターを操作し、畳敷きの狭い会場で体育座りをしながら観たことを覚えています。高校のクラスメイトだった中条省平と一緒に観たのでした。自分の足元を見つめていくうちに、神との遭遇を夢見るに至る道筋を追う、静かながら思索的なロードムーヴィーだったと思います。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

蘇る青春・1973年銀幕放蕩記 更新情報

蘇る青春・1973年銀幕放蕩記のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング