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蘇る青春・1973年銀幕放蕩記コミュの6月・悲しみの試験に映画は・・・。

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<『欲望という名の電車』『青幻記・遠い日の母は美しく』> 
新宿京王地下・2番館(6/11)

 エリア・カザン監督によるテネシー・ウイリアムス原作の舞台劇の映画化。まだマーロン・ブランドが肥満体ではなく、ヴィヴィアン・リーも演技で狂気を演じていた頃の映画。たしかにやりがいのある演目なのだろうし、熱気が画面から立ち上ってくるほどだが、あんまり面白くない。

カザンとブランドは『波止場』という大傑作がある。日曜洋画劇場でテネシー・ウイリアムス原作の映画はたくさん見たが、これも流行りものの一種なのだろう。

はいはい、すびばせんね、という感じだ。

そのところからいうと、『青幻記・遠い日の母は美しく』には反応したぞ。この叙情性、エキゾシズム、そして沖永良部島の圧倒的な映像の厚み。『野いちご』『酔いどれ天使』などにみられる手法(過去の自分を現在の自分が同一画面に登場する)が痺れるほどの効果を挙げている。賀来敦子の神々しいまでの透明感!

 大学2年から6年まで、毎年持ち回りの大学祭実行委員会だったが、映画の選定・上映にかけては一任された。

そこで『青幻記』も後年上映したが、誤算は16ミリ版には沖永良部島の方言に字幕スーパーがまったくつかないことだった。そのためにインド映画をノン・スーパーで見ているのと変わらないことになった。こういうのは裏切り行為とそしられても仕方ないんじゃないか。

この地味な日本映画を配給したのは東和株式会社。素晴らしいことにちゃんと利益をあげて、製作者に配当があったという。宣伝にも、いい映画を見てもらうという熱意があったればこそ、であった。


<『探偵・スルース』> 
新宿文化・封切り(6/17)

 巨匠ジョゼフ・L・マンキウイッツ監督によるサスペンス・スリラーの傑作。

アンソニー・シェーファー原作の舞台劇を彼自身が脚色した。舞台劇といえば舞台劇なのだが、あまり窮屈な印象は薄い。

というのは主役の推理小説家ローレンス・オリヴィエは自分の頭脳に自惚れていて他人を見下す嫌なヤツだが、自分の妻の愛人であるマイケル・ケインを招いて徹底的にいたぶるのも、知能とは無関係の幼児的性格の変型だとおもうからだ。その一歩誤ればとんでもない方へ逸れてしまいそうな危うさを表現するのに、あの邸宅は絶好のものなのだ。

けたたましく笑い転げる道化師の自動人形や、絵柄のない真っ白なジグソー・パズルや植え込みだけで作られた巨大な迷路など、周到に準備されたお膳立ての面白さ、そして溜息。知的な意気地の応酬。2人の名優の掛け値なしの火花散る演技!

こりゃあ、真似できんぞ。

しかし数年後、渋谷パルコ劇場にて日本版舞台が上演された。田中明夫VS北大路欣也の共演。ボクは見られなかったが、見てきた友人の話ではトリックにまったく気が付かずビックリしたとのことだ。

たしかに、このトリックを知っていて見る芝居と、知らずに見るのでは180度違う印象だろう。

アンソニー・シェーファーの兄弟であるピーター・シェーファーは『アマデウス』を書いた作家で、彼らは『フレンジー』『フォロー・ミー』と名作の脚本を書いて映画に貢献している才人なのである。

ローレンス・オリヴィエはこののち6年ほどして『リトル・ロマンス』に出て皮膚筋炎で死に、ケインはアメリカ映画のお手軽主演スターに成り下がったように見えたが『サイダー・ハウス・ルール』で神業演技。2度目のアカデミー助演賞に輝いた。


<『娼婦』『餓鬼草紙』> 
蠍座・封切り(6/17)

「すばらしき蒸気機関車」で有名な高林陽一監督が全編セリフなしでつくったモノクロのドラマ『餓鬼草紙』。楽しくはなく、暗い。伴 勇太郎という大映の大部屋俳優が僧侶に扮し、少女松田幸江に恋情を抱き苦悩する。アングラ映画の怨念だけは流れている。

アート・シアターとしてATG封切館だった新宿文化。その地下にあった小劇場が蠍座だ。

新宿文化の右の奥、新宿ロマン劇場との間の辻。入り口で切符を買うとすぐに階段。降りれば客席。せいぜい30〜40席だったか、上等のパイプ椅子で、正面奥のスクリーンの裏にトイレがあった。

アート・シネマや旧作を低料金で見れた。新宿文化もそうだったが、黒づくめで、そういったスタイルの劇場はやはり大東京にしかなく、地方から出てきた映画ファンにとってはごちそう劇場なのであった。


<『男の出発』『妖精たちの森』> 
新宿京王地下・2番館(6/23)

 『おもいでの夏』の主役ゲーリー・グライムス主演のニュー・シネマ西部劇。英雄的なエピソードはまったくなく、うらぶれた労働者としてのカウボーイの日常がキャトル・ドライブ(『赤い河』や『ローハイド』でお馴染みの牛を運んでいく旅)に描かれる。

ごひいきルーク・アスキューや、知らない役者だがビリー・グリーン・ブッシュというなかなかの面構えの俳優が出ている。

簡単に言えば少年の成長ものだが、ディック・リチャーズという新人監督のなみなみならぬ才気を感じさせる真剣な映像詩だ。

『妖精たちの森』は『脱走山脈』以来ファンであるマイケル・ウイナー監督による陰々滅々たる、双子の少女がからむ、高貴な夫人と粗野な男衆(おとこし)の性的なグロテスク映画。少なくともボクの年齢のファンにはウイナー、そしてマーロン・ブランドが出ている興味以上のものはない。

ブランドは『波止場』なんかの凄いストレート・プレイに出て才能を見せつければいいと思うのだが、どうして変態チックな作品に好んででようとするのだろう。

ディック・リチャーズはその後『さらば愛しき女よ』というロバート・ミッチャムがフィリップ・マーローに扮したゴシック探偵映画、『ブルー・ジーンズ・ジャーニィー』というニュー・シネマ青春映画、そしてジーン・ハックマンとカトリーヌ・ドヌーヴ共演の外人部隊もの(未公開)を撮るも何時の間にか消えてしまった。

才能はあったが、ビジネスとしての生存競争に生き残れなかったのか。『男の出発(たびだち)』はもういちど見てみたい映画である。グライムスも『ビッグ・ケーヒル』『スパイクス・ギャング』に出て消えた。どんな中年になったのかなぁ。


<『橋のない川』> 
東京清瀬リハビリテーション学院講堂・学園祭自主上映(6/24)

 今井 正監督による、住井すゑ原作の部落解放小説の映画化。しみじみと、しかし力強く、生きていこうとする根気を描いた作品である。

この映画を見て、差別を助長する作品と思う人間は絶対にいない、と思う。

しかし「差別用語」正・続巻によれば、部落解放同盟の朝田委員長の逆鱗にふれ、この後上映しようにも反対運動が起こって実質上封印されてしまった。いかにひどい映画なのか・・・、見なければ判断できない。

どうにか見られるようにしないと、いつまでも差別の本質を見極めて、糺していこうというムーヴメントは起こるはずがない。

 この場所については説明しておこう。

有名な清瀬の結核療養所敷地内にあった(東京・鹿児島にあった)公立リハビリテーション学院。1学年40名ずつ入学させたが、当時としてはまだ珍しい専門学院だった。高校の友人が入学したからと連絡してきた。

彼はボクの友であると同時に、映画における弟子のようにボクに映画の講釈を望んでいた。

『いのちぼうにふろう』『裸の十九歳』『女生きてます・盛り場渡り鳥』彼と一緒に見た映画は数多いが、いずれも並みの高校生が好んで見るような映画は少なかった。

行ったついでに見学させて貰ったが、いまはもう使われなくなった病舎がなんとも言えぬ佇まいで残っており、なんか怨念めいた重苦しさが漂っていた。

たしかに俳人の石田波郷など、思いを残して病没したひとも数知れず。木造病舎が使用されなくなった分、見るものにとっては不気味なものに見えた。

黒澤 清監督の「CURE」という映画で、萩原聖人の出てくる旧病舎の存在感があまりにそっくりなのでゾォっとした記憶がある。

彼によると、ボクらには不気味なこの病舎に、置き去りにされたマットレスなどを利用して不純異性交遊に及ぶ恐るべきカップルが少なからずいるとのことで、怨念をも抑え込む色のみちの何とたくましいことかと驚いた覚えがある。


このあと、試験期間となり映画とはしばらくお別れとなります。
7月は夏休みになったとたん、映画づけにもどるのですが、大学生になったために小遣いもあって、資金的に困りません。どんな日々か・・・、お楽しみに。

コメント(1)

1973年6月の映画鑑賞記録 侘助の場合

6月2日「真実の瞬間」フランチェスコ・ロージ(NFC)70円
6月4日「赤い砂漠」M・アントニオーニ(NFC)70円
6月5日「雨のしのび逢い」ピーター・ブルック(アテネフランセ)150円
6月9日「女と男のいる舗道」ジャン=リュック・ゴダール、「キッド」C・チャップリン(四谷公会堂)250円
6月9日「審判」オーソン・ウェルズ(アテネフランセ)150円
6月21日「第七の封印」イングマール・ベルイマン(アテネフランセ)150円
6月22日「恋の狩人 欲望」山口清一郎、「不良少女 野良猫の性春」曽根中生、「まむしの兄弟 刑務所暮し四年半」山下耕作(三ノ輪文化映画)250円
6月29日「仁義なき戦い 広島死闘篇」深作欣二、「女囚701号 さそり」伊藤俊也(並木座)200円

この月は、9日から21日まで映画ブランクを作るなど、前月の反省からか、受験勉強に力を入れていた様子が窺えます。

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