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蘇る青春・1973年銀幕放蕩記コミュの5月・帰郷と、そろそろの暗躍開始

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<『新座頭市物語・笠間の血祭り』『桜の代紋』> 
なんば東宝・封切り(5/3)

 早速大阪に帰っても、勝プロ詣でである。

しかし、『桜の代紋』は面白かったなぁ。ヤクザ然とノシノシ歩いてきた若山富三郎に向かってチンピラが「手前ェ、どこの組の者でぇ」と凄むと、それよりも一層凶悪な面相で「桜組の者だ」と刑事であることが分る導入部からラストまで、ニューヨークかと見紛う印象の夜間撮影の見事さ。森田富士郎の撮影、三隅研次の演出は冴え渡る。なかでも地下道のなかを犯人が裸電球をひとつひとつ割りながら走り抜けていくシーンのカッコ良さ。

アクション・シーンにはこういう気障の一歩手前のスタイリッシュな見得が欲しい。佐野周二の息子・関口 宏の繊細さも捨てがたい。(ナショナル劇場『流れる雲』で浅丘ルリ子の弟役が彼を知った最初だった)

 『笠間の血祭り』は標準作。笠間は座頭市の故郷であるらしい。大八車まで真っ二つにするのはやり過ぎでしょう。それにしてもポルノまがいの前作『折れた杖』よりは楽しめる。『座頭市』『兵隊やくざ』に代わる作品を急遽考えねば勝プロの黄金時代は長くは続かないようだが・・・。


<『滅びゆく野生の詩』『大列車強盗』『モダン・タイムス』> 
新世界国際・名画座(5/4)

 明日は上京する。最後はやはり新世界でないと・・・。ペンギンがうじゃうじゃと登場して飛び跳ねまくる西ドイツのドキュメント。飽きはしない。

バート・ケネディ監督がついにジョン・ウエインと組んだ西部劇『大列車強盗』はご老体ばかりの出演陣なのでホノボノと楽しめる。ロッド・テイラー、ベン・ジョンスン、アン・マーグレット、クリストファー・ジョージそしてリカルド・モンタルバン。芸達者ばかりが揃って、楽しんで造っていることが伝わってくる。

『モダン・タイムス』はやはり傑作だ。あの深夜のデパートでのローラー・スケートで手すりのない床をすいすい滑走するシーンの凄さ。チャップリンの凄いところは、あんなに危険なことでも事もなげにやってしまっていること。あゝ、はやく『黄金狂時代』が見たい!


<『ふたり自身』> 
久保講堂・試写会 (5/11)

 ニール・サイモンの新作は女流監督エレイン・メイによる快作だ。原題は[失恋小僧]・・・、こっちのほうがいいのに。主演のチャールズ・グローディンは見知らぬ俳優だと思ったが、調べてみると『ローズマリーの赤ちゃん』で、ミア・ファーローがラルフ・ベラミーの老産婦人科医が魔族だと助けを請うていく若い産婦人科医をしていた役者だ。あれから5年、やっと認められたのだなぁ。『陽のあたる場所』のヴァリエーションみたいな喜劇。


<『招かれざる客』> 
名画座ミラノ・名画座(5/14)

映画が見たいというよりも。劇場を見てみたかったのだ。
名画座ミラノは大阪にいるときから知っていた。新宿歌舞伎町・ミラノ座という超大型劇場の一角にある入場料300円の名画座。大して見やすいこともなく、劇場のカラーが感じられない恨みは残るが、番組は女性客向けの上品路線だから、結局ボク向きではないということだろう。


<『愛情物語』『恋のエチュード』『暗くなるまで待って』> 
テアトル新宿・名画座(5/20 )
 このなかで未見は『恋のエチュード』だけ。トリュフォーの紛れもない傑作。この美意識!この気障!解るひとだけ随いてきなさい・・・、っていう映画やなぁ。ボクが監督になるのなら、こんな映画が1本でも出来たら、監督になった甲斐がある。
 
と、ここまで医学生となって早くも40日あまりが経過。肝心の大学生生活はどうなのか・・・、というと、1,2年生は教養課程ということで、化学や生物などの実習と、英語、数学、宗教、哲学、法学など高校とあんまり変わらない教科ばかりで拍子抜けしていました。

駅前から大学までのバス代は30円だったが、オイル・ショックがおこり1年後には90円、4年後には240円まで高騰していく!大学の講義にはすべて出席し、時間を持て余す日々でありました。

授業が終ると、東京のテレビそのものが珍しくて、アパートに帰ってずっと見ておりました。

食事はもっぱら学生相手の大衆食堂で済ませ、風呂はアパートから1分のところにある銭湯へ行きました。驚いたのは、東京の銭湯はお寺のような屋根構えになっていることで、こういうことは関西には見られなかった分新鮮でした。

なかでも銭湯にベンツでやってきているひとがいることで、関西から行った人間とすればベンツに乗るぐらいなら風呂のある家に住めよ、と思ったものです。

でも、東京暮らしが長くなって分るのですが、東京の喫茶店の充実ぶりに窺われるように、首都・東京には地方から上京して都会生活をしているひとがごまんといて、喫茶店は自宅の応接間代わりの意味を持っているように思えました。

大阪では、例えば自由軒のカレーを食べるためには合い席は当たり前、美味いものを食う目的に集うひとはすべて平等でありましたが、東京では階層は店により明らかに区別され、合い席はほとんどない。

首都に住むひとびとは、とくに地方出身のひとなら、こういった暗黙の了解に基づいたルールのなかに沿う生き方をマスターすれば困らないようになっているらしい。

そのかわり、カネがないと、随分寂しいところだなぁ・・・、という感想を持ちました。

ゴールデン・ウイークを過ぎて、実習などで級友たちとお喋りすることも日常的なこととなり、ボクが映画を見るために上京したのだと聞いて、興味を持つ同級生も出てきました。

そこで映画三昧の一日を体験しようという話がまとまり、土・日をかけて映画を見倒そうということになりました。

<『呪いの館』『悪を呼ぶ少年』> 
新宿京王地下・スプラッシュ封切り(5/26)

 『呪いの館』はイタリア・B級ホラーのマリオ・ヴァーヴァ監督の新作。だらだらしていて、たいして面白くない。しかし『レッド・ムーン』『おもいでの夏』のロバート・マリガン監督の『悪を呼ぶ少年』はちょっとした拾い物だ。

原作は俳優だったトム・トライオンで、双子の少年をめぐる重いサスペンス・ホラー。この双子に扮するのがクリス&マーチン・ユドバノーキ兄弟で薄気味悪さはなかなかのものだ。

ロバート・サーティスの撮影、ジェリー・ゴールドスミスの音楽とマリガンだけあってスタッフは揃っている。


まずスプラッシュ公開の2本立てです。このスプラッシュというのが、今はもう解りませんね。ロードショーが終わった映画を2本立てで公開するチェーンがあったのです。

先週までロードショーされていた映画が2本見られるのですから料金は同じですが割安感があります。名画座に落ちればぐっと安くなりますが、それには待たされるわけです。このチェーンに始めから公開される映画をスプラッシュ公開といい、多くの地味な作品が利用されました。

サム・ペキンパーの『砂漠の流れ者』なんかもこの口。フランチェスコ・ロージ『総進撃』、ユル・ブリンナーの『SF・最後の巨人』(監督は『燃えよ!ドラゴン』のロバート・クローズ)、ミシェル・ブーケ主演『汚れた刑事』などロードショー公開された映画に添え物としてつけられた仇花。懐かしい存在です。

『悪を呼ぶ少年』の冒頭、馬車で菓子などの行商にきたひとに向かって「ルート・ビア頂戴!ルート・ビア頂戴!」と少年たちが後を追いかけるシーン。気になりました!

ルート・ビアって、ビールなの?

その後2年ほどしてアメリカからやってきた“A&W”というハンバーガー・チェーンでついにおめもじしました。結局クスリ好きのアメリカ人が好むソーダで、ビックリするのがサロンパスの味のソーダだったこと。そういえば、コーラだって、フォレスト・ガンプの大好きなドクター・ペッパーだって随分クスリ臭いですわナ。


 この時点で午後4時頃、つぎにボクたちは歓楽街・歌舞伎町の真ん中にある名画座ミラノに向かった.


<『おかしな二人』> 
名画座ミラノ・名画座(5/26)

 ニール・サイモンの名を天下に知らしめた傑作コメディ。また、ジャック・レモンとウオルター・マッソーのコンビを決定づけた。数多くの批評では『サンシャイン・ボーイズ』というのがサイモンの最高傑作とのことだが、おっつけ公開されるだろうから楽しみにしておこう。

ジーン・サックスの演出はやはり舞台人だけあって手馴れたもので、『サボテンの花』よりは上手い。

 結局ウオルター・マッソーと共演したジョージ・バーンズがオスカーを獲った『サンシャイン・ボーイズ』は公開されなかった。『オー!ゴッド』シリーズでは洒脱そのものの彼をみてびっくり、後年ビデオになった『サンシャイン・ボーイズ』を見たらやっぱり凄かった。

いわば漫才師のコンビの愛憎コメディで、ウディ・アレンも『ブロード・ウェイのダニー・ローズ』という芸人ものの傑作があるが、あれだってニール・サイモンの『サンシャイン・ボーイズ』抜きには語れないもののようだ。

後年アレンはp−ター・フォークと2人でリメイク版『サンシャイン・ボーイズ』で共演した。(こっちの出来は芳しくなかった。)


 夕食を食べようと歌舞伎町にやってきたところ、そこには異常な熱気というのか、怖いほどのひとのうねりが捲き起こっていた。どうやら早慶戦の流れで応援の学生の集団が歌舞伎町の広場に集結してきていたのだ。

これは毎年、お定まりの光景らしいのだが、数人の学生たちが街灯をよじ登り、てっぺんで出初め式のように曲乗りして、やんやの喝采を浴びていた。なにもミナミのひっかけ橋から群集心理にあおられてバカ騒ぎするのは古今東西大差がないのである。

一緒にこのオール・ナイト映画行に参加していたのは同級生のK君だったが、彼は福島県須賀川市の産の優等生だが、ふと見ると恍惚然としているのだ。

「吉川、これが青春だよなぁ」

と、今なら臭くて言えないような言葉を興奮気味に口にした。ところがボクには彼のようには思えなかった。それはボクがおっさん臭い人間だということもあるが、弱さや惨めさを憎む黒澤 明作品で育ったボクは、破目をはずして乱れた奇行に走る同年輩の彼らに冷ややかな視線を投げかけていたことに気づき、今ならハッとする。

もしボクが、K君と同じような感情を持ちえる人間だったら、こんな回り道の多い人生は歩まずに済んだのではないか・・・、と思われてならない。

ボクという爛惰な個性は薄められ多少はノーマルな人生を歩んでいたろうに、ちょっぴり残念でもあるのである。

この時点で午後7時。新宿は三平裏(いまならアルタ裏というのであろう)ロール・キャベツ定食の「アカシヤ」にて夕飯。180円也。

<『王将』『毘沙門天慕情』> 
新宿京王・封切り(5/26)

 勝新が坂田三吉、中村玉緒が小春、関根名人を仲代で、っていうのは悪くないアイデアだ。だがあんまり面白くない。時代考証とかなんやかやと、明治・大正が、もはやきちんと描写・表現できない時代になっているのだろうか?

もともとは勝新が阪妻の長男である・盟友田村高広の主演で企画していたものらしい。できれば、そっちも見てみたい気がする。

砂塚秀夫はテレビでは五社英雄の『俺はども安』という代表作があるが、自分で製作費を捻出して映画の主演作を作っておこうと思ったのが『毘沙門天慕情』。

知らなかったが森繁の弟子なのだそうで、森繁や淡島千景,三木のり平などの大俳優が無償で(恐らくは)客演していてスケールを出している。だが、スケールというのもここまでで、新東宝出身の土居通芳監督もさらっと流すような気の入れ方ゆえに、砂塚本人ほどは誰も喜んでいない映画となった。

いまどき幇間つまり太鼓もちの話など興味は薄いからなぁ。もしやるのなら、きちんと花柳界のしきたりや名人芸をフィルムに刻み込んで後世に残す覚悟がいるのではないか。これなら、カネさえ出せばボクらだって主演作が作れるゾ!(もっとも誰も見にこないだろうけど)

 だが、このジョークはバブル時代には現実になってしまう。税金対策で、異業種監督による映画が乱立したのだ。作家、作詞家、タレント、歌手、ほんとうに恐れを知らぬ跳梁跋扈ぶりだった。もちろん芸のないタレントの主演映画などは日常的なことだった。『毘沙門天慕情』などまだまだ立派な映画となってしまった。


 <『ジュニア・ボナー・華麗なる挑戦』『センチュリアン』> 
テアトル新宿・名画座(5/26)

 『ジュニア・ボナー』は3回目。とても地味で静かな映画だがマックイーン主演というだけで名画座によくかかる。睡魔に襲われるかと思ったが作品に力があるため目はらんらんだ。

マックイーンがかけているボシュロム社のレイバン・サングラスはなんと2万円以上するものだというが、下手に真似するとタレ目パンダになってしまう。

ロデオのマックイーンがふきかえだと分ってしまうことは、ペキンパーのスローモーション撮影の多用による嬉しくない副産物である。

『センチュリアン』はニューヨークの刑事でも、警察官でもない、紛れもないお巡りさんの映画だが、ごヒイキのリチャード・フライシャー監督の手腕いよいよ冴えて、良質の娯楽映画的人間ドラマになっている。

重厚ジョージ・C・スコットに、唇裂口蓋裂の演技派ステイシー・キーチ、好きな役者スコット・ウイルソンが共演。ラストの老警官スコットが自殺するあたりはギリシャ悲劇かとも思えるほどの緊迫感だ。

今年は『グライド・イン・ブルー』とか『破壊!』とか警官ものが多いが白眉はこの作品だろう。

 “センチュリアン”というのは百人隊長の意で、『偉大な生涯の物語』ならジョン・ウエインが演じたローマ帝国の警備にあたっていた任のひとびとをいうもの。ボクも医師となってから疾病の疫学的調査を見ることが多くなった。

このときに、ある程度まとまった母集団ごとに統計を求めるのであるが“コホート分類”と呼ばれる。これもやはりローマ帝国からの命名で、“千人隊長”という意で、“センチュリアン”の10倍にあたるものだ。

公衆衛生学の試験でもよくヒッカケに出たけれど、このことについてだけは間違わなかったのも、数少ない映画の恩恵であった、ですね。

ヴィデオで見直したい作品のひとつなのだけれど、まったくリリースされる気配がないのは残念だ。

まあ、どちらにしても土曜午後から日曜朝までに7本見て、余裕をもって帰宅したこと。若いということは、うらやましい。

ますます佳境に入ってくる6月編を待て!!

コメント(1)

1973年5月の映画鑑賞記録 侘助の場合

5月4日「昭和残侠伝 死んで貰います」マキノ雅弘、「関東テキヤ一家 喧嘩火祭り」鈴木則文(昭和館)300円
5月4日「(秘)女郎責め地獄」田中登、「団地妻 女の匂い」白鳥信一、「大幹部 無頼」小沢啓一(三ノ輪文化映画)250円
5月5日「現代やくざ 血桜三兄弟」中島貞夫、「実録白川和子 裸の履歴書」曽根中生(日勝文化)350円
5月5日「赤い鳥逃げた?」「非行少年 若者の砦」ともに藤田敏八(文芸地下)150円
5月8日「太陽はひとりぼっち」M・アントニオーニ(NFC)70円
5月9日「駅馬車」ジョン・フォード(スバル座)590円
5月11日「激しい季節」ヴァレリオ・ズルリーニ(NFC)70円
5月14日「ビリディアナ」ルイス・ブニュエル(アテネフランセ)150円
5月16日「甘い生活」F・フェッリーニ(NFC)70円
5月17日「小間使の日記」ルイス・ブニュエル(アテネフランセ)150円
5月18日「戒厳令」吉田喜重(東和試写室)0円
5月19日「召使」ジョゼフ・ロージー(アテネフランセ)150円
5月20日「血染の代紋」深作欣二、「侠骨一代」マキノ雅弘(昭和館)300円
5月20日「濡れた唇」神代辰巳、「(秘)女郎市場」曽根中生(オデヲン座)580円
5月21日「情事」M・アントニオーニ(NFC)70円
5月24日「リトアニアへの旅の追憶」ジョナス・メカス(紀伊国屋ホール)350円
5月25日「夜」M・アントニオーニ(NFC)70円
5月26日「落ちた偶像」キャロル・リード(TV)
5月26日「サイコ」A・ヒッチコック(TV)

この月で忘れ難いのは、24日に紀伊国屋ホールで観た「リトアニアへの旅の追憶」。ジョナス・メカスの傑作でした。

しかし、毎日のように映画ばかり観る日が戻ってしまい、受験勉強は大丈夫なのか?と声をかけてやりたくなります。

この頃、もう少しまともに勉強していれば、翌年の受験の結果は違ったものになっていたかも知れません。

しかし、「激しい季節」のエレオノーラ・ロッシ=ドラゴを観られるなら、受験勉強なんてクソくらえ、という自分がいることもまた事実です。

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