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アキグレコミュのXIII;妖精の時刻 11/Gear Master

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…目を開けたら、既に夜になっていた。
世玄が帰った後、ベットに転がったまま寝ちゃったらしい。
何か夢を見ていた気もするけど、頭がぼんやりしてて思い出せない。
そうせ、思い出す必要のない下らない夢だったと思う。

「……」

習慣的にタバコを咥えようとして、タバコを切らしている事に気付く。
仕方がない。ちょいと出掛けるか。体の慣らしにに丁度良さそうだ。


俺の部屋は住宅街深くにあるので、コンビニに行くにも坂道をかなり下らなければならない。
半ズボンにスリッパーと、いかにも気だるい格好で、夜道を歩く。
チルルルルル……と、夏蟋蟀か何かが鳴いている。
コンビニには数人の人がいた。
長く寝すぎたせいか、異変に気づいたのが遅すぎたのだ。

「13時、か」

みんな停止している。
これではタバコも買えない。盗んでしまえばそれだけの事だが、なんとなく今はそういう気分でもなかった。
たかがタバコ一箱なのだ。普通に買えるし、盗んだって大した財産になるわけでもない。

「……」

仕方ない。非常にメンドクサイけど。
固まっているレジ打ち店員の手からバーコード機を奪い、自分でタバコのデーターをつけて、レジに代を入れてやった。
時計使いとして生きる事って、案外一般人より不便なのかも知れない。
これではせっかくの異能も台無しだ。
コンビニの前にヤンキ座りして、タバコに火をつけた。この国では道端でタバコ吸ったって、問題にならない。
今は魔の13時なので、俺にそんな社会規範なんぞ、別にどうでも良いのだが。

体にニコチンが回り、多少は意識がはっきりした。
長居は無用だ。さっさと帰ろう―――――――――待て。

「なんだよ……あれ」

人影らしきものが、坂道を上っている。
この時間帯に動けるのは俺が知る所時計使いだけだ。
世玄かと思ったが、徐々にはっきりと見える。あの男だった。
それに、今日は一人ではない。

「どうやって動く……?!」

カチカチカチカチカチカチ……
不思議な音を出す、大型のゼンマイの塊のような堅物を連れている。
その形は様々で、二足歩行をしているモノは少ない。殆んどがコッツイ両手(らしき物)ながら進んでいる。別に人間の型を模しているわけではなく――――ホント適当に、動ければそれでいいやみたいな作者の意思が感じ取られる集団だった。
そういうのが、ざっと10機ほど。
決して、ネトゲに出るようにカッコ良く出来ていない。ただ不気味で怖いだけだった。
そのゼンマイ達が、俺との距離がある程度つめられた途端、その動きを急激に早めた。

「ひぃ――――っ!」

カチカチカチカチカチカチカチ……!!
全力で坂道を登り始める。コンビニの白い光に照らされたゼンマイ達は、数え切れないほどの金属ゼンマイが組み立てられて作られたようだった。目も無ければ耳も無く、その切れ歯を地面にぶつけながら進んでいる。

シュイッ!!
風を裂きながら、何かが飛んで来る。
右足に、ぐっと激痛が走った。

「ガッ……!」

振り向くと、その内一つの頭に、長さ1メートルはありそうな……クロスボウを積んでいる奴があった。その矢先は、確実に俺に向けられている。
俺の素足に太くて短い、いかにもクロスボウにつかうような矢が刺さって、暖かい血が多少流れ出している。
クロスボウに仕掛けられたゼンマイが、ぐるりと一回点したかと思えば――――うわっ!

シュイッ!!
第2射は辛くも当たらなかった。真っ青な矢先が地面に転がっている。
良く見たら、それぞれのゼンマイ達は体のどこかに武器らしきものが装着されていた。 西洋剣のようなもの、クロスボウ、ヤリ、いっぱつ振り下ろされたら骨が砕きそうな戦闘ハンマーなど……
ゆっくり、でも確実に、あの訳の分からないものから攻撃されている。
捕まれば死ぬと思う。
足からの痛みで上手に走れないけど、そんな事を気にしている場合じゃなかった。

「に…逃げなきゃ!!」

かちかちかちかち――――
必死になって、走り出した。
死にたくない。第2時計は部屋に置いたままだ。
死にたくない。時計を差し出せば、俺の命なんか取らないはずだ。
家に行かなきゃ。
アスファルトに血跡を残しながらも、足を止めることは無かった。

「か、はっ…………!」

たどり着いた。
足に刺さったままの矢が、玄関の扉にひっかかって傷口を刺激した。
悲鳴すら上げられないほど、痛い。
すっこく痛い。
全てが停止した静寂の中で、カチカチとゼンマイ達の音が近づく。
ベットまで這いつくばって俺の時計を握り締めた。
「後は、あいつに…」
コツン!
マンションの階段が鉄製だから、たぶんそこにでも衝突したのだろう。
ゼンマイ達に、歩くという概念はないようだ。アイツら、道が防がれたと思いきや、マンションの壁に幾つもののゼンマイの歯を差し込んで登ってくる!

「何でだ……」

何でこんなことに。
目の前で起きている現実は、時計の音を刻みながら確実に迫っている。
あまりにも圧倒的な現実の暴力に、腰が抜けてしまった。
あの男の姿はもう見えない。このままだと、この機械等に殺される――――!

『何を迷うておる。己の身一つも守れぬか』

ふと、頭の中で声がした。

『致し方あるまい。事が済むまで伏せておれ――――』

本の一瞬にして、
開けていた部屋の中から、青いスパークが走り出した!

「うわっ!!」

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