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アキグレコミュの空蝉の詩声 Last Episode

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「ただいま〜!」
 突然聞こえた大きな声に、はっと目が覚める。
「……うぅ〜ん」
 呻りながら寝返りを打ち、起きるか起きまいか葛藤していると――
「ッオゥ!?」
 軽く吐き気を覚える程の衝撃が、脇腹を直撃する。
「お父さん、ただいま〜」
 見れば、荷物満載のランドセルを背負った少女が脇腹に乗り掛かっている。
「……おまえ、おはよ……じゃない……っ」
 腹部の痛みと吐き気を堪えながら、俺は何とか少女をベッドの脇に下ろした。
「まったく、のし掛かっちゃイカンと言ってるだろ?」
 俺はお転婆娘の頬を軽くつねり引っ張り、教育的指導を施してやる。
「うゅゅゅゅ〜♪」
 もっとも、痛くないように加減しているので、当の本人は楽しそうに笑うだけである。「おかえり、陽奈(はるな)」
「うん、ただいま」
 俺が頭を撫でると、陽奈は気持ちよさそうに目を細める。
「ほれ母さんにも、ただいまの挨拶」
「は〜い!」
 陽奈は元気よく返事をし、仏壇に線香を上げ手を合わせる。
「ただいま、お母さん」
「あ、そういえば。手洗いと、うがいしてないだろ。してくるように」
「は〜い」
 パタパタと、陽奈は忙しなく洗面所へと向かった。

 その背中を見送ってから、俺もベッドから這い出て仏壇へと手を合わせた。
「……おまえが死んで、もう十年か……」
 俺は遺影を手に取り、ぼうっと眺めながら呟いた。
「俺は何とかやってるよ。陽奈も元気に育ってる」
 遺影に語りかけるように、俺は独白をする。
「女の子にしては少し……いや、大分やんちゃだが……まぁその、なんだ。その内には落ち着いてくるだろう」
 しかし元気なのは良いことだが、もう少し加減は覚えて欲しい。
「教育方針は……たぶん大丈夫。一緒に居る時間もちゃんと設けてる」
 仕事は忙しいが、それでも陽奈には寂しい思いをさせていないつもりだ。
「ああ、あとな……」
 ……と、その時、ドアのインターホンが鳴った。
「わたしが出る〜」
「おう、任せた〜」
 来客は陽奈に任せ、俺は額縁の裏から、遺影とは別の古ぼけた写真を取り出した。
「……いつかお前のことも、ちゃんと話すつもりだ」
 その写真は、裏に『命名・キミドリ』と書かれた写真。
「あと何年先になるか解らないけど……いつかは言わなきゃいけないことだしな」
 俺は溜息を吐いて、写真をしげしげと眺める。

「お父さん、大変大変!」
 ばんっ! と勢いよくドアを開けて、陽奈がいきなり飛び込んできた。
「どわっ!?」
 俺は慌てて件の写真を元に戻し、遺影を元のように飾る。
「……お父さん、今何隠したの?」
 俺の挙動不審さに、陽奈はじーっと、こちらを見つめてくる。
「っう。な、何でもない。それより、そんなに慌ててどうしたんだ?」
 俺の苦し紛れの誤魔化しに、陽奈はハッとする。
「そーだ、きゅーかんだよ! きゅーかん!」
 陽奈は俺の寝間着の裾をぐいぐいと無理矢理に引っ張る。
「急患……?」
「えっとね、ピーちゃんがね、ピーちゃんがね……」
「ピーちゃん……ああ、田中さんとこのインコか」
 溜息混じりに言う俺に、陽奈は不安そうにこちらを見る。
「……助かるよね?」
 泣きそうな陽奈の頭を撫で、俺は余裕をもった笑みを向ける。
「任せとけ。父さんは……動物のお医者さんなんだから」
「うん!」
 笑顔になった陽奈の頭をもう一度撫でて、手を取り寝室を出た。

The End

コメント(2)

にゃるほどにゃるほど。
お医者さんになったのね、メデタしメデタしw
何とか一つの形で終結させることが出来ますた。
ただ、こうしてupしたあとも頭の中では別ルートが……
いつか、何か別の形で、もう少しちゃんと書き上げてあげたいです。

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