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アキグレコミュのXIII;妖精の時刻 07/the Black World

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「そうね……まずは、キャビノティア(時計職人)·ブレゲについて話します。
そのサイトにも乗ってあるように、ブレゲは近代ゼンマイ時計の父であり、おそらく歴史上最高のエンジニアよ。
そういう人は早々出るものではない。
現代にもブレゲという時計メーカーがあるんだけど、これは初代ブレゲの時計店がそのまま継続されているの」


ふむふむ。
もぐもぐ。


「とにかく、彼は当代最高の時計職人で、彼が作った時計は王低フランスの貴族や王族に愛好されていた。
彼のお客には、フランス大革命で犠牲された、ルイ16世と王妃のマリィ·アントワネットも含まれていて。
特にマリィ·アントワネットはブレゲが作り出す不思議な複雑時計のファンであって、彼に『この世でもっとも尊い時計』を作り出すように命じたのです。
他でもあらぬ王妃のオーダーを受けてブレゲは、世界で一つしかなく、
自分自身すらも生涯に一つしか作れない時計を作ろうと決心しました。
……動因は何だったんだろうね。
王妃や国家に対する忠誠心だったのか、或は職人が持ちやすいプライドや挑戦精神が働いたのかも」


むぅ……さぞ分からない話ではない。大体作り屋という奴等は、妙にむっつりしていて意地張りなところがある。


「ブレゲは時計の制作に取りかかりました。今後これを『幻の第1時計』と称すわ。
世界最高の複雑時計を作ろうとするから、どうも設計が複雑になり、他人が理解できない境地に達したらしい。
そういう状態で作業が続きーーーー問題が起こった。
時計を作るのにあまりにも時間を使い過ぎて、時計の主人たるマリィ·アントワネット王妃が先に死亡し、帰らぬ人となったのです。
当代の権力者や事家等が彼に時計を売ってくれと頼みましたが、
彼はその時計を誰にも渡さずにいました……いや、渡せなかったんでしょうね」


幻の第1時計なのかは定かではないが、ウェブに記事が乗ってある。


[ 1783年、ブルゲの顧客の一人であったフランス王妃マリー・アントワネットはブルゲに最高の時計を作るように命じた。 フランス革命によってマリー・アントワネットは処刑されるが、その後もこの時計の開発は続けられた。 ブルゲの死後も弟子達がその仕事を受け継ぎ、1827年になってようやくこの時計は完成した。

こうして完成したのがブレゲ NO.160「マリー・アントワネット」(Marie Antoinette )と呼ばれる金色の懐中時計である。 この時計にはクリスタル製の透明な文字盤がはめこまれていて内部機構を楽しめるようになっており、その内部機構にはブルゲの開発した最新鋭の技術が惜しみなく投じられていた。 1983年にイスラエルの美術館から盗まれ行方不明となった。]


セヒョンの話が跡を次ぐ。


「さて、話は変わりますが、ブレゲにはひとつ重大な秘密が御座いまして。
ブレゲが発明したとされるゼンマイ装置にトゥールビヨン(Tourbillon)構造ってのがあるんだけど、
これは地球重力場の影響で時計に狂いが生じる現象を防ぎ、常に一定した狂いになるように設計した物とされています。
が、実はそれだけではない。
ブレゲはこの構造を設計する際、ちょっとした真実に気付きました」

「真実って?」

「人間一人一人に与えられた時間そのものが、あまり精密なものではないと言う事。
つまり、貴方の時間軸と私の時間軸は同じで無いことよ」

へ?

おいおい、そろそろ話がちんぽんかんぽんだ。


「時間ってみんな平同だろう?」

「じゃぁ聞くけど。
私たちの13時はどう説明すればいいかしら?
あなた自身が、<時間は平同だ>という前提を違反しているけど」

「そりゃぁこれが魔法の時計だから……って、あっ!!」


今、一瞬だけ脳裏に何かが光った。


「そう。魔法の存在。
ブレゲは、世の中に科学では説明し切れない領域がある事を悟りました。
すべての時計が違う狂い方を見せる現象を、世間では重力のせいだと思っていたけど、ブレゲは魔術的に接近してみた。
つまり、時計一つ一つにも違う時間軸上にいるのではないか、と」


……鳥肌立ってきた。
目の前で語られている話に精神を持っていかれ、カレーの味が感じられなくなってきている。


「当時流行していた科学的かつ理性的な考えでは、時間と空間は極めて客観的に存在しているはず。
時計は時間を正確に表現するために作るもので、正確な時計が成立する為には、
前提として<時間そのものが正確であること>が成立していないといけません。
なのに、時間軸に元々バラツキがあってしまっては話にならない。
そこで彼は考案しました。
もっとも理想的な時計は、時間をそのまま表現するものであって、
世界の時間軸がいい加減にできているのなら、時計もいい加減な物であるべきだと。
が、自分が発見した世界の真実は,当時ではあまりにも危険な発想でした。
彼は人々には黙って、トゥールビヨン構造に『時計の着用者が、誤差がないように思わせる』構造を仕掛けた。
自然状態の時間軸を一部割って、全人類が共通的に錯覚できる基準点を提示したのよ」

すでに俺の手はスプーンを逃している。




「我ら時計使いは、世の中を流れる時間軸を二つに捉えています。
一つ目は『相対時間軸』。
これはまぁ……自然状態の地球に流れるもともとの時間軸。
自転、公転、重力、魔力、その他未知のモノの影響を受けるので、伸びたり縮んだり身勝手なところがあるの。

二つ目は『絶対時間軸』、又は『トゥールビヨン時間軸』。
人が作る以上、完璧な機械というのは存在しないはずでしょう?
でも、ブレゲは不完全を完全にした。
これは相対時間軸上を流れる時間の中で、少し少ない部分だけを時間と認識する代わりに、凡ての変数を無視したバージョン。
現代を生きる普通の人々は、殆どこの時間軸上を走っています。
まぁ、病院で生まれる瞬間から、絶対時間軸による出生時刻にその存在を規定される上、
生活して行くにつれ、自分の便宜上の為でも絶対時間軸に自分を合わせて行く。
例外があるなら、生まれた時から自然体な狼少年や、冥想などで体内の時間軸にリセットをかけられる東洋の求道者、とくにチベットや韓国などの禅僧くらいです。
さて、とにかくブレゲは『動』の性質を含んむ相対時間軸を好き勝手に摘んで『靜』の時間軸を<制定>するに至った。
その後、世界にゼンマイ時計が普及されるにつれ、多くの人々が使わずに捨てる時間……乃ち、余白、時間の隙間が空け始まった物でして」


嗚呼、そろそろ大きな図柄が浮かんできた。
自然状態の時間軸に発生した余聞の時間、それが……魔の13時。もぐもぐ。


「……天才であるブレゲがこの事に気付くも必然。
最初は1年に何秒に過ぎなかった余白が、時計の補給率が上がるにいたってほぼ無限の量に近くなった。
そこまで分かった時には彼も老い、何故かこの余聞の時間を活用できる装置を作り始めた。
まぁ、元々有ったものを縫い充てれるんだから、縫いだ糸を解く事もできるんでしょうね。
前の装置を完全に逆方向に適用すれば、絶対時間軸の余りを使用者に与えられるのよ。
ブレゲはそれを、何の躊躇いもなく『幻の第1時計』に採り入れた。
でも、設計を実際に起こそうとしても、不思議と何度やっても製作は失敗したわ。
工房の職人はおろかブレゲ本人さえも、すでに絶対時間軸の時計を作り過ぎて、足をとらえられた。そこでブレゲは、相対時間軸に居ながらも時計職人になれる存在等を全ヨーロッパから掻き集め、化け物の工房を作った」


人のように考え、人のように話せるが、人ならざる者。
……ようするに、幽霊とか化け物?
待って、そんなのも地球上に実在しているというのか?
まぁ、時間を止める装置を作り出す時計職人がいるんだから、もう何が居ても別にいいが。もぐもぐ。


「そういう存在は全世界的に散らばっています。
近い日本の妖怪や狐、中国道教で云う仙人、アラブの魔神や妖霊などなど。
ヨーロッパでいうならば、やはり吸血鬼や亡霊、オオカミ人間……。
ブレゲは数多くの人外を集めてゼンマイ技術を教えたけど、
こういう人外さんは殆どが好戦的で個人主義がひどく、協力性の欠片もない連中で、どうも案頭にくっついて何年も共同作業ができる器ではなかったらしい。
結局最期まで彼の工房に残った者は、妖精たち――とくにケルト系のフェイ(Fey)――だった。
フェイ等は天性的に各個体は弱いが共同生活に慣れていて、子供みたいに純粋ながらも手先が器用な物が多かった。幻の第1時計をさらに強い物にしようとする、ブレゲの目的のために利用されるにはうってつけでして。
結局、何年もの製作を終えて、幻の第1時計は完成されました。
この時計の持ち主は、数十億の一般人が毎日のように捨てている隙間時間を自由に行使できる。文字通り時間の、永遠の支配者になれる、とんでもない品になってしまいました」


それにしても、俺はカレーを食い終わった。
なかなか味わえない美味しい飯で味覚が刺激されて、脳が活性化されているお陰か、彼女の話は脳にどくどくと入ってきた。
お皿を台所に投げ入れて、PCの座席に戻りタバコをくわえる。


「御馳走様でした」
「うん。おいしかった?」
「実は俺、カレーがこんなに甘いものなのか、初めて知った」


ふふふ。
セヒョンはしばし、口元をふせいで笑った。
落ち着いた雰囲気で改めて見ると、彼女は飛びっきりのAランク美人である。
ちょうどいいほどに厚めな唇に、鼻の形も高くも低くもないので可愛らしい。
強い意志が感じられる目つきと鮮明な眉毛があるので、すがすがしい性格だと見受けられる。
茶髪でも、長い髪は男のロマンだ。
本当に、気に入らないところが何一つもない。理想の女だった。

「むむぅ」
「そこで提案なんだけど、どうも私と貴方、目的が重なるようで。
良かったら手を組まない?」


共闘、か。


「……」
「あなたの立場では、悪くない提案だろうけど?」


彼女と視線が絡み舞う。
今、俺の目はこう言っているはずだーー俺が何を持って君を信じれば良い?
彼女の目はプライドと興味と精密な計算が混ざっていて、その心の内側を読むことはとても叶うまい。
それで何秒にらめっこした事か、彼女のほうが先にため息をついた。


「まぁ……宜しい。どうも胡散臭い話です。
今日この場て私の話を全て信じろ、とまでは言わないよ」
「ああ。今は保留ということでどうだ?」


彼女は起き上がり、バックから銀色のケータイを取り出した。
ざっとみても、めちゃくちゃ良いケータイだ。


「あいわかりました。
もしもの事態もあるだろうから、連絡が届くようにはしておこう」


別に時計使いがこうだああだを超えて、俺はこんなキレイな女性からのメール交換は全てOKということにしている。

……決して、時計の翁が怖くなった訳じゃない。うむ。

俺の番号を教えると、彼女はポチポチとボタンを押して通話ボタンを押した。
暫くして、俺のケータイに韓国の電話番号では絶対あろうはずのない番号が表示された。


「それが、この機器につながる番号。ちょっと長いよね? ローミングしているケータイだから……」
「まぁ、君の事情は、察するよ」


はいはい。どうせそういう事だと思いましたですぅ。
俺とでウブではない。
彼女の身体から出る雰囲気は、聡様に韓国人ではないのだ。
おそらくヨーロッパか、西洋に住まう韓国人だろうけど。


「そうそう。13時には電話繋がらない事、分かってるよね?」
「え? そうなのか?」


敢えて知らぬ顔を決め込んでみた。
まだ彼女が敵か見方か、ハッキリしていない状況で、こっちのがどれだけ知っているかを教える必要はない。
彼女は俺のしらしらしい顔を見て何かを考えると、パソコンのメモ長を開いて住所っぽいものをを書いてくれた。
ここからも歩いていける距離にある、ホテルの名前とルームナンバーだった。


「私、このホテルに泊まっているから。
多分、ここまでは要らないとは思うけど……緊急なことがあったら、13時にでも走ってきて」
「俺は、むしろ君がここに駆けつけて来ないかが心配だが」
「ふふっ、互いに迷惑かからないように努力しましょーや」


そう言い残し、彼女はトイレに隠って着てきたゴシックドレスに着替えた。
よく考えてみたら、今まで彼女が着ていた服は正しく、俺のものである。


「ごめんよ。流石にドレス着て部屋掃除するわけには」
「いいよ。部屋の掃除に料理までしてくれたんだ。
むしろ俺のほうが感謝しないと。ありがとう」
「そろそろ私は退散するね。
あ、カレー結構多めに作ったから、腹減ったら温めて食べて」
「……ありがてぇ」


さっきのアリガトウとは心の重さと声のトーンが他なる。
……冗談じゃなくて、この出会いが最後になるかもしれない。
が、俺は予感していた。
これで最後ではなく、むしろ何か新しい関係が始まりそうな、そんな興奮すら覚えている。


「じゃあね、Au Revoir」
「お、おう……気をつけて帰れよ」


彼女を送る。
そうしたら、また戻ってきては自分の頭を可愛く叩くと、


「あの、ホテルまでエスコートしてくれません?
……コーヒー奢るから」


と言い出しやがった。

尹世玄。
この招待不明の女は、
俺が今まで経験していた女の子とは、画然と違うタイプのようだ。




コメント(1)

長い長い1日目がスタート。
しかし、本当に書けない環境でございます

トクゲの作品みたいに、選択肢入れて3ルートにしたくなりましたww
このままだと、間違いなくセヒョンルート突入!

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