Case A.
... 透析センターに通ってくる別のおばさんととても仲良くなり、「私の腎臓あげるから移植しなさいよ」と自分から勧めて非親族間で生体移植をすることになって、倫理委員会も通り、準備を進めている最中に腎臓に良性腫瘍が見つかってしまいました。腫瘍を取り除けば腎機能には問題ありませんが、このケースは“臨床研究”行きでしょうか?
Case B.
... 胆石で入院することになりました。どうせ手術するならと思い立ち、透析センターに通っている仲良しのおばさんに「私の腎臓あげるから移植しなさいよ」と自分から非親族間の生体移植を勧めました。倫理委員会ではおばさん達の意志は充分に確認できましたが、準備を進めている最中に腎臓に良性腫瘍が見つかってしまいました。腫瘍を取り除けば腎機能には問題ありませんが、さて、このケースは“臨床研究”行きでしょうか?
Case C.
... 腎臓の良性腫瘍で入院することになりました。治療に当たって摘出の必要はありませんが、どうせ手術するならと思い立ち、透析センターに通っている仲良しのおばさんに「私の腎臓あげるから移植しなさいよ」と自分から勧めました。倫理委員会ではおばさん達の意志は充分に確認できましたが、さて、このケースは“臨床研究”行きでしょうか?
Case D.
... 腎臓の良性腫瘍で入院することになりました。手術は一旦腎臓を取り出してから病巣を取り除く必要がありますが、自家腎移植も充分に可能です。しかしながら自家腎移植は手術の時間がとても長くなるのでおばさんは怖いと思い、摘出手術を希望しました。ついでに、どうせ捨てるならと思い立ち、透析センターに通っている仲良しのおばさんに「私の腎臓あげるから移植しなさいよ」と自分から移植を勧めました。倫理委員会ではおばさん達の意志は充分に確認できましたが、さて、このケースは“臨床研究”行きでしょうか?
Case E.
... Case Dと同じ症例ですが、おばさんに“捨てる腎臓を仲良しのおばさんに移植すること”を勧めたのは自家腎移植のリスクを説明した担当の医師でした。さて、このケースは“臨床研究”行きでしょうか?
Case F.
... ネフローゼで入院することになりました。どうせ手術するならと思い立ち、透析センターに通っている仲良しのおばさんに「私の病気の腎臓で良ければあげるから移植しなさいよ」と自分から勧めました。ネフローゼの腎臓はおばさんの体内では充分に機能していません。倫理委員会ではおばさん達の意志は充分に確認できましたが、さて、このケースは“臨床研究”行きでしょうか?
Case G.
... 小径腎細胞癌で入院することになりました。どうせ手術するならと思い立ち、透析センターに通っている仲良しのおばさんに「私の腎臓あげるから移植しなさいよ」と自分から勧めて第三者間で生体移植を希望しました。倫理委員会ではおばさんの意志は充分に確認できましたが、さて、このケースは“臨床研究”行きでしょうか?
Case H.
... 透析センターに通ってくる別のおばさんととても仲良くなり、「私の腎臓あげるから移植しなさいよ」と自分から勧めて第三者間で生体移植をすることになって、倫理委員会も通り、準備を進めている最中にこのおばさんが肝臓癌であることが分かってしまいました。今のところ腎臓には何も問題ありませんが、このケースは“臨床研究”行きでしょうか?
Case A. 、Case B.は、通常の第三者間の生体移植に準じることになるでしょう。
Case C. については、腎臓の良性腫瘍で「どうせ手術するなら」となる理由がよくわかりませんので保留です。
Case D.、Case E.は、臨床研究扱いでしょうか。Case E.に関しては、別の医師から改めて自家腎移植のリスク、メリットについて説明が必要でしょう。倫理委員会でOKが出るということは、十分な説明がなされているのは前提として考えてよいと思います。
Case F.は臨床研究でもアウトだと思います。現時点では、ネフローゼ症候群ドナーからの病腎移植は臨床研究でもNGでしょう。なぜなら、腎摘出のメリットが少なすぎるからです。私の知る限りでは、万波医師のグループ以外で、ネフローゼ症候群ドナーからの病腎移植の例はありません。
Case G. は、普通に臨床研究扱いでしょう。
Case H. は、倫理委員会に通らないと思います。肝臓癌ではなく、もうちょっと軽症の疾患、たとえば脂肪肝とかコントロール良好な糖尿病とかであれば、医学的にドナーになれるか倫理委員会が判定することになるでしょう。
I.腎移植希望者(レシピエント)適応基準
1.末期腎不全患者であること
透析を続けなければ生命維持が困難であるか、または近い将来に透析に
導入する必要に迫られている保存期慢性腎不全である
2.全身感染症がないこと
3.活動性肝炎がないこと
4.悪性腫瘍がないこと
II. 腎臓提供者(ドナー)適応基準
1.以下の疾患または状態を伴わないこととする
a. 全身性の活動性感染症
b. HIV抗体陽性
c. クロイツフェルト・ヤコブ病
d. 悪性腫瘍(原発性脳腫瘍及び治癒したと考えられるものを除く)
2.以下の疾患または状態が存在する場合は、慎重に適応を決定する
a. 器質的腎疾患の存在(疾患の治療上の必要から摘出されたものは移植
の対象から除く)
b. 70 歳以上
3.腎機能が良好であること