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「駄文倶楽部。胡蝶庵。」コミュのたった一つの冴えた生き方には向かない職業

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俺がまだどうしようもないガキだった頃、やりたい事だけをやっていた。
思い付く限りの事を思い付くままにやっていた。
出来ない事は出来るまでやった。
やりたくない事はやりたくなるまでやらなかった。
そうやってみんな、というか大人は生きていると思っていたし、そうやって生きていけると思ってた。
我慢をしているなんて嘘だと思っていた。
大人は大人なんだから、俺が思うよりもっとすごい事が出来るし、やっているし、生きていると思ってた。

俺が高校の時、俺には担任がいた。

担任は髪はボサボサで目は淀んでて白衣を着てても服は汚れててヨレヨレでおまけに煙草の匂いがすごかった。
ホームルームは報告書を読むみたいに棒読みの連絡事項だけだし、持ってた授業は教科書を黒板に書き写しただけだし、体育祭の出場種目決めも文化祭の出し物決めもただ椅子に座って眺めてるだけだった。
それが担任のやりたい事だと俺は思ってた。
自堕落で放任で雑な仕事がやりたくてそうやっているんだと思ってた。
その頃の俺はやっぱりやりたい事をやりたいようにやりたいだけやっていて、それは今となっては当たり前だと思うけれど時々問題を起こしたり、問題にされたりした。
それをいつも担任は何とかしていた。
相変わらず髪はボサボサで目は淀んでて白衣を着てても服は汚れててヨレヨレでおまけに煙草の匂いがすごい担任だったけど、最後には必ず何とかしていた。
物凄く面倒くさそうな顔をして電話したり面会したり謝ったりしながら何とかして、だから俺はいつもあまり怒られなかった。
自堕落でも放任でも雑でもなかった。
どっちが担任のやりたい事なのか、俺には分からなかった。

俺が卒業する時、俺は担任に聞いた。

すると教師なんて別にやりたくもないと担任は言った。
やりたかったから教師になったんじゃないと言った。
教えるのは大変だし、怒るのは面倒だし、お前みたいなのもいるから教師なんてやめたいと思ってると担任は言った。
その日の担任は一張羅のスーツを来て髪も撫でつけてオーデコロンのいい匂いをさせていた。
いつもより数倍格好いい担任は意外と長い脚を組んで、驚くくらい格好いい仕草で煙草を咥えて見た事も無い格好いい顔ででもな、と言った。
お前みたいなのがいるから、教師はやめられないんだと言った。
やりたい事をやりたいだけやってるガキに、やりたい事をやりたいだけやらせるのが大人の役目で、教師の仕事だと担任は言った。
そして卒業させるのが担任の醍醐味だと言った。
教師なんてやりたくもないが、お前みたいなヤツの担任はずっとやっていたいと言った。
俺はそれを聞いてなんだか泣きそうになって、むしろ泣いた。
泣きたいと思ったから泣いた。
最後までやりたい事をやった。
それを見た担任も泣きそうな顔をして、でも泣かなかった。
泣かずに、卒業おめでとうと言って手を差し出して来た。
俺はグシャグシャになりながら、その手を握り返した。

担任は元担任になって、俺は担任になりたいと思った。

俺は大人になって、やりたい事をやっている。
思い付く限りの事を思い付くままにやっている。
出来ない事は出来るまでやっている。
やりたくない事はやりたくなったらやっている。
そうやって生きているし、そうやって生きていける。
我慢なんてしていない。
俺は大人だから、どうしようもないガキが思うよりもっとすごい事が出来るし、やっているし、生きている。

どうしようもないガキが卒業する時、俺は担任としてそう言うだろう。

コメント(1)

まだまだやれるし、やっていたい。

ここに来る度、そう思う。

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