ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

「駄文倶楽部。胡蝶庵。」コミュの螺旋セブンティーン 1

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
朝目覚めると、吸血鬼になっていた。
「…………いやいや」
矛盾してる。
吸血鬼は夜行性だろ。
じゃあ、夢か?
……夢か。
「まあ、吸血鬼なんて実在しないよな、普通に考えて」
いやはや、僕にしては随分とメルヒェンな夢を見たものだ。
ひょっとしたら雪でも降るかも知れない。
そう言えば今日の天気は如何だろうと、ベッドから上半身を起したところで身体に疼痛を覚えた。
より正確に言うなら、左首筋の辺りに。
……ん?
取り敢えず触診してみる。
なんか穿ったような痕が二つある、気がする。
…………。
夢にしてはリアルだ。
むしろシュールだ。
ていうかもう殆ど思い出していた。
ただ、そうすると何か認めてはならない現実がすぐ傍に存在しているはずだった。
より正確に言うなら、僕のすぐ隣に。
「……ん」
何かが身じろぎした。
いや、それは何かどころじゃなく。
「……ん?……あー」
間違いなくウチのクラスの委員長である、
「……御巫、雨季……」
だった。
「あー、えーと、おはよう、ございます?」
「なんで疑問形なんだよ」
思わず突っ込んだが、本当に突っ込んで聞きたいのはそこではない。
ウチの委員長こと御巫雨季(みかなぎ・うき)はドジだ。
天然モノのドジだ。
だから今回のこの状況だって、そのドジさ故のものに決まっていた。
それを確かめるべく、僕は事情聴取を開始した。
「昨日は、文化祭終わっての委員打ち上げがあったな?」
「はい、ありましたね」
その小さな顔に対しては些か大きめの、前時代的な丸眼鏡を掛けながら御巫はトロンとした目で(寝惚けているのではない。こいつはこれが地だ)答える。
「全員、アルコールが入ってたよな?」
「未成年なんですけどねえ」
「まあ、過ぎたことだから何も言わないけど。てか、僕も飲んだから言える訳無いんだけど。でも委員長、お前アルコール駄目だからって一人だけ烏龍茶だったよな?」
「はい、そうですよ」
「じゃあそれがどうして、グデングデンに酔っ払って僕の家で寝るような事態に陥るっていうんだよ?」
「あー、それがですね」
少し言い淀み、そして、
「どうやら隣の方のグラスと間違えてしまったようで」
「このドジっ娘がー!!」
「あ、でもでも、一口しか飲んでないです!!」
「一口で泥酔!?そっちの方がよっぽど質悪いわ!!」
「そう言えば、泥酔の泥ってアメーバに似た架空の生物を表してるらしいですよ?」
「意味分かんねえー!!」
朝っぱらから凄まじいテンションだった。
僕だけが。
「……いや、そこまではいい。ていうかそれはもういい。僕が聞きたいのは、その後だ」
酔い潰れて寝てしまった御巫は何をやっても起きず。
クラスメイトとしての連帯責任とかで僕が何とかする羽目になった。
しかし僕は御巫の家を知らなかったので、そしてその場にいる誰もが知らなかったので仕方なく一旦僕の家に連れて来たのだが。
「ベッドにお前を寝かせた瞬間にお前が襲いかかって来たんだ」
「わ、私そんなはしたない女じゃありません!!」
「そういう意味じゃねえよ!!つーか酔ってる時点でお前はそんな貞淑キャラじゃねえ!!」
「いくら一夜の過ちとは言え、女性に責任を押し付けるなんて……!!」
「過ってねえよ何も!!さも僕に責任があるみたいに言うんじゃねえよ!!」
「そりゃ、健全な男子高校生ですから、女の躰に興味があるのは分かりますけど」
「僕は不健全だー!!」
何故か変なカミングアウトみたいな突っ込みになってしまった。
ていうか躰って言うな。
「……お前さ、何か誤魔化そうとしてる?」
「ギクッ!!な、何の事でしょう?」
「声に出してギクッ!!って言うヤツを僕は初めて目の当たりにしたよ。……お前、吸血鬼なんだろ?」
「クラスの誰に聞いたんですかっ!!」
「周知の事実なのかよ!!」
「すみません、冗談です」
「天然が作りボケなんかするなよ……」
最強過ぎるだろ。
「はあ……やっぱり悪い事は出来ませんね」
「自分の秘密を悪事扱い!?」
僕の突っ込みは完全に流し、御巫は右手の人差し指で僕に向かって口角を拡げて見せつけた。
そこにある、人間では在り得ない長さの犬歯を。
「お察しの通り。私、吸血鬼なんです」



朝陽に弱い。
大蒜に弱い。
十字架に弱い。
銀に弱い、は狼男だったか。
勿論身体能力の高さや不老不死である点も有名だが、吸血鬼というと僕はそんな制約が多いイメージがある。
そして僕が今最も懸念すべきなのは、吸血鬼に血を吸われると吸血鬼になるという点、だった。
それがもし事実なら、僕は現在絶賛吸血鬼中という事になる。
しかし今は正に朝であり、先程など僕はカーテンを開けて朝陽もしっかり浴びている。
別に、身体が灰になるような事態には至っていない。
「なあ、御巫。ひょっとしてお前、僕の血を吸わなかったのか?」
「いえ、しっかり吸いましたよ?」
満面の笑みで答える御巫。
「AB型みたいな混ざりものって、美味しいんですよね」
「……」
差別的な表現で褒められるのは初めてだ。
「てことは、吸血鬼に血を吸われると吸血鬼になるって、嘘なのか」
まあ、そもそも存在からして疑わしい―とは言え、今となっては信じざるを得ないが―存在なのだから、色々とその伝説に尾鰭が付くこともあるだろう。
「いえ、本当ですよ?」
何言ってるんですか、みたいな目で見られた。
「石動さんは、もう吸血鬼ですよ」
「…………」
僕はそこで重大な見落としに気付いた。
“こいつはそもそも吸血鬼なのに、何故平然と学生生活を送っているのか?”
これはつまり、弱点そのものに何か秘密があるということか。
「……御巫。お前、大蒜嫌いか?」
「いえ、別に」
「十字架は好きか?」
「ウチは浄土宗ですけど?」
それはそれで如何なものだろう。
「ああ……石動さん、もしかして吸血鬼の弱点のことを言ってるんですか?」
得心がいったと言わんばかりのリアクションをされたが、出来れば何を言うよりもその点について説明して欲しかった、と思わなくもない。
「まあ、そうなんだけど。知識と事実が食い違うからどういう事かと思ってさ」
「それなら大丈夫ですよ」


「今の吸血鬼は、朝陽も大蒜も十字架も平気ですから」


…………。
つまり。
吸血鬼というのは、基本的にはやはり人間の血を吸って吸血鬼化させる事で個体数を増やすらしく、今ではその殆どが元は人間だったのが占めているらしい。
永い歴史の中でそれを繰り返し、人間の身体を介し、代を経ることで人間の利点を徐々に引き継ぎ、遂に吸血鬼は自らの弱点を克服した。
御巫の話を纏めると、そういうことらしい。
まあ今まで通りの生活を送る分にはほぼ支障無いようなので一安心ではある。
……いや。
懸念は他にもある。
「血は?やっぱり定期的に人間から血を吸わないといけないのか?」
もしそうなら僕は通り魔決定になってしまう。
御巫は考えるようにしながら、口を開いた。
「んー……その、吸血行為には、転化と、力の補填という二つの意味があるんですけど」
「けど?」
「現代では、実は吸血による転化を用いた個体数の増加というのは途絶えたと言って差し支えないくらい稀なんです。もう一つの力の補填も、力自体を使わなければ当然減らない上、時間を掛ければ自己回復しますので一度に大量消費さえしなければ必要はありません」
「つまり?」
「普通にしてれば普通の人間と大差ない、っていうことですね」
多少運動能力なんかは上がりますけど、と御巫は締め括った。
「……そうか」
そこまでいくとむしろ拍子抜けの感が否めない。
そして更なる疑問が湧いた。
「じゃあ、御巫。お前、どうして僕の血を吸ったんだ?」
「酔ってて、ついうっかり」
「事故かよ!!」
とばっちりもいいとこだった。
「若さ故の過ちと言いますか」
「言わねえよ!!」
「まあまあ、大した事にならなくて良かったじゃないですか」
「お前は大したタマだな!!」
「あ、ほらほらもうこんな時間ですよ。このままだと学校に遅れちゃいます」
「今日は土曜で休みだ!!」
「じゃあもう少し寝ていられますね」
「帰れー!!」
なんというか。
どうやら僕の災難は、まだまだ続くらしい。





「あ、いするごっ!?」
僕を見つけるや駆け寄って来た御巫は6メートル手前で盛大に転んだ。
……女の子の切羽詰まった「ごっ」っていう声はちょっと引くな。
ていうかそんな距離でコケられたら対応しにくいんだけど。
「……い、石動さん。助けて下さい」
「……ったく」
近寄って座り込む御巫に手を差し出す。
「……わん」
お手された。
…………。
べ、別に可愛いなんて思ってない!!
思ってないぞ!!
「わふ?」
犬キャラで問い掛けて来た。
なんだ、何を試されてるんだ僕は!?
「……おかわり」
「わん」
「伏せ」
「わふ」
「おすわり」
「はっはっ」
「ちんちん」
「!!」
硬直した。
半端な覚悟とボケで僕を試すからだ。
ちょっと優越感を感じる。
「待て」
「わん」
…………。
「あっと、こんな時間じゃないか、そろそろ帰らないと」
踵を返して前進。
の、瞬間シャツを引っ張られた。
「酷いですっ石動さん!!」
「お前のキャラほどじゃねえよ!!」
だいたいスカートでおすわりが既に危ない。
色々と。
関わってはいけないのだ。
「お前さ、学校の廊下でよくそんなこと出来るよな」
「石動さん的にはどこならいいんですか?」
「…………おおう」
どこでやっても危険だった。
色々と。
僕まで含めて。
「今僕は物凄く人間疑われることをしている気がする……」
まあ、もう人間じゃ無いんだけど。
吸血鬼、という超一流の未確認生物の末席に名を連ねたという事実に、未だ僕は認識が追い付いていない気がする。
何しろ現代の吸血鬼は、人間の特性を取り込んで弱点を克服してしまったのだから、普段生活を送っていると全く気にならないのだ。
ということは、吸血鬼だろうとその倫理観やらは人間と共通のものな訳で。
そうなると、
「今感じている危機感は決して気のせいなんかじゃ無い……!!」
そう言えば周りの視線が痛い。
そしてそれ以上に僕等が痛い!!
一刻も早くここを立ち去らないと!!
「御巫。行くぞ」
「わんっ」
「そのキャラ止めろ!!殴るぞ!!」
「な、何をいきなり理不尽な!?」
「お前のせいで僕が受ける誤解の方がよっぽど理不尽なんだよ!!」
「不条理です!!」
「お前のせいで以下同文だ!!」
「不浄です!!」
「お前失礼だな!!」
「言っときますけど、吸血鬼としては私の方が一日の長なんです、先輩なんです!!私を蔑ろにしたら命に関わりますよ?」
「心配しなくても不老不死だよ!!」
「夜道では足元に気を付けることね!!」
「それはお前だ!!」
このドジっ娘が!!
「つーかもうボケはいいんだよ!!御巫、お前僕に用があったんじゃないのか!?」
するとケロッとテンションを変えて御巫は、
「あ、そうです。石動さんが吸血鬼になっちゃったので、さしあたって幾つかやる事があるんです」
「なっちゃったのお前のせいな。で、やる事ってなんだ?」
「えーと、まずはこれからですね」
そこで御巫は何故だか一瞬溜めを作った。
そして心なしか嫌そうに、
「真祖様に、挨拶に行きます」
と、そう言った。



吸血鬼というのは縦社会なのだそうだ。
なので各地に、その地の吸血鬼を纏めるリーダーが存在する。
「それが、真祖か」
「はい。殆どの真祖は百年単位でこの世に生きている“直系”と呼ばれる方で、この街の真祖も五百歳近いんですよ」
「五百年前、って言うと戦国時代か?」
「元お侍さんです。口癖が『武士道とは死ぬことと見つけたり』です」
「意味分かんねえよ!!」
死んでねえし!!
死なねえし!!
「その一文だけで相当に変な奴だろうってのは分かったよ……」
「はい、時々する変な発言さえ無ければ、いいお祖父ちゃんなんですけど」
「……お祖父ちゃん?」
お爺ちゃんじゃなくて?
「あ、えっと。私の両親はどちらも吸血鬼なんですけど、転化したのが真祖様なんです。なので、人間の祖父母とは別に、吸血鬼としてのお祖父ちゃん、ということになるんです」
「ああ、成程」
人間の家系と、吸血鬼の家系で分かれるのか。
つまり僕にそれを当て嵌めると、
「……お前は僕の母親になるのか……!?」
「じゃあ、シングルマザーですね」
「笑えねえー!!」
「はーい八雲ちゃん、一緒に曾御祖父ちゃんのとこに行きましょーねー」
「やめろ!!それこそ殴るぞ!!」
「せ、折角母性に飢えてる石動さんの為に何か一つでも恩返しが出来ればと思って恥を忍んで母親を演じたのに……!!」
「僕は別に母性に飢えてないしお前がすべきなのは恩返しじゃなくて償いだし恥と思うならやんなくていいし後母親を演じるとか言うな!!お前は昼ドラのキャラか!!ていうかお前のセリフが半端に長いから僕の突っ込みが長いんだよ!!もっと短くボケろ!!」
「せ、折角石動さんを演じたのに……!!」
「演じてねえだろ!!短くってそういう意味じゃねえよ!!」
「あ、着きましたよ」
「なんでだよ!!」
思わずボケじゃ無い所に突っ込んでしまった。
「いや、ていうかここ、なのか?」
「はい、ここですよ?」
それは見上げると首を痛めそうな直立不動の建築物。
庶民派の僕にも一見してそれと分かる。
俗名、超高級マンションだった。
そして御巫と共に辿り着いたマンションの最上階の部屋に、そいつは居た。
「やあ雨季ちゃん久し振り。そいつは?ああ待って言わなくていい分かるから。いやいや、遂にやらかしちゃった、って感じかな?はっは、ドジっ娘もここに極まれりってか?」
快活に笑う大柄な若い男。
ダメージどころか致命傷みたいなジーンズに、鮨屋の湯呑みたいに漢字の意匠されたTシャツ。
髪は金髪。
何故か左腰に提げた日本刀は、きっと侍としての名残なのだろうが、こうして見るとキャラを後付けしようとしたとしか見えない。
「さて、初めまして少年君。俺はこの街の真祖、兵頭・ロードレッド・仁兵衛(ひょうどう・―・にへえ)だ」
「嘘つけ!!アンタ明らかに純日本人だろ!!」
「あれ、今若人の間でこういうの流行ってるんじゃ無いの?」
「何情報だよ!?そして若人とか言ってる時点でアンタが全くもって若くねえ!!」
「……雨季ちゃん。この少年は初対面の人にも突っ込みを躊躇わないんだねえ。どうやら遂に、この愛刀“ムラサメー”を託せる侍が現れたようだよ?」
「安っ!!侍の心安っ!!あとその刀は絶対に村雨じゃねえ!!」
「村雨じゃない、ムラサメーだ」
「名前が偽物過ぎる!!」
「……あの、石動さん。話進まないんで少し静かにして下さい」
「僕が悪いのか!?」
まさかの突っ込み禁止命令だった。
「さて、まあ俺の名前が半分偽名なのは仕様だと思ってくれ。気さくにドレッドとでも呼んで欲しいね」
「恐怖のどこが気さくだ!!」
二秒で命令違反してしまった。
しかし僕は悪くないと思う。
反省もしない。
「で、今日はあれか、挨拶かな?」
と兵頭(ドレッドと呼ぶ気は勿論無い)が言うと、御巫が頷いた。
「はい、すいませんけどお願いします」
「まあ、仕方ないか。俺だって気が進まないけど、こればっかりはなあ」
何やらシリアスで話が進みだした。
が、僕には全く把握出来ない。
「よし、少年。名前は?」
「え?ああ、石動八雲(いするぎ・やくも)です。石が動くで石動に、小泉八雲の八雲」
「では石動八雲くん。こちらに」
手招きする兵頭に訝しみつつ近付く。
瞬間、強い力で引っ張られ、
キスを、された。
「!?」
一体何を、と思った時には既に解放されており、後にはなんだかよく分からない空気だけが残った。
「雨季ちゃん。そんな顔しないでくれる?俺だって好きでやってんじゃ無いんだから」
「……分かって、ます」
「いや僕には何が何だか分かって無いんですけど!?」
こんな状況でも突っ込みを忘れない自分が悲しかった。
取り敢えず今僕が分かっていることは。
ファーストキスを、男に奪われたという事だけだった。



「あれは加護ですよ」
という御巫の説明は自分の貞操を守れなかった僕にしてみれば皮肉以外の何物でも無かった。
「吸血鬼は言うまでもなく、血を重んじる種族です。それは吸血鬼自身の血も例外ではなくてですね、どの真祖に連なる血なのかがはっきりしない、血統の不明ないわゆる“はぐれ”と言われる吸血鬼はただそれだけで嫌われたり、酷ければ迫害を受けたりする事もあるんです」
「それが、さっきまでの僕か」
「はい。それを避ける為に必要なのが真祖の刻印、平たく言うとマーキングですね。その最も一般的な方法が、その、アレなんです」
つまりアレは貞操の危機ならぬ生命の危機を回避するのに必要不可欠な通過儀礼だと言う訳だ。
理屈では分かるんだけど。
「でも、なんかなあ……」
まさかこの年になってキスもしたこと無かったんです、とは言えず、吐き出せないもやもやに一人落ち込む僕。
その僕の視界に、湯呑野郎がチラつく。
「石動くん、君AB型だろ?俺キスしただけで血液型が分かるんだよ凄いだろ?」
「お前ちょっと黙れよ!!」
「なんだい、折角気を紛らわせてあげようと思ったのに」
「なら蒸し返すな!!なんか他の話題を振れよ!!」
「俺のファーストキスはね、城に忍び込んでた伊賀のくの一とだったよ。石動くんは?」
「お前だー!!」
もしかして知ってたんじゃないかという程のピンポイント爆撃だった。
いや、爆撃と言うよりは地雷か。
おかげで突っ込みもやけっぱち。
「あー、やっぱり?なんかぎこちなかったから実はそうかな、って思ったんだけど」
「お前言わぬが花、って諺知ってるか!?」
「やだなあ、これでも五百年生きてるんだよ?俺の辞書にはKYだって載ってるゼ」
いや、確実にそれしか載ってないと思う。
むしろその言葉はコイツが元で生み出されたんじゃないだろうかとすら思った。
「さて、と。これで用事は済んだかな?俺はこれからちょっとやる事があるんだけど」
「……予定だなんて、珍しいですね。いつもブラブラフラフラしてるのに」
「雨季ちゃん、俺だって予定の一つや二つ立てるよ?今日はお気に入りのBL小説の新刊が出るから本屋に行くのさ」
「お前さっきから狙ってるのか!?ていうかさっき『気が進まない』って言ったの嘘だろ!!」
「はっはっは、それは本当さ。だって石動くん、微妙に俺の好みじゃ無いし」
「殺してやる!!お前絶対殺してやる!!」
人生で初めて切実な殺意を抱いた気がした。
その相手が不老不死だというのが悔やまれて仕方ない。
世の中は不公平だとこの時僕はひしひしと痛感した。
そんな17歳の秋だった。

コメント(1)

約三か月振りの投稿と相成りました。

続話を現在製作中です。

僅かでも期待して下さる方がいる事を祈って。

螺旋セブンティーン、如何でしょう?

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

「駄文倶楽部。胡蝶庵。」 更新情報

「駄文倶楽部。胡蝶庵。」のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング