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2024年04月16日00:22

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『安倍晋三 回顧録』公式副読本-安倍元首相が語らなかった本当のこと (単行本) 中央公論新社 ノンフィクション編集部 中央公論新社 2023年08月09日

https://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=5160461&id=5544354

p.200
 総理の目にはそう映ったのかもしれませんが、我々行政官がよって立つのは法律です。
 当時はまだ、この病気が感染症法上の何類にあたるのかも決まっていません。本人が希望していないことを国家権力で強制的にさせるには、法的手続きがなければできません、と私たちは説明したつもりです。
 厚労省には、ハンセン病という苦い歴史があります。ハンセン病患者への差別や偏見を教訓として今後に生かす、と改正感染症法の前文に書かれたように、我々はその歴史を踏まえて対応しなければなりません。法的根拠がないまま、全員を隔離することは、後で振り返ったときに禍根を残す可能性があります。
 後になって、新型コロナは発症前から周囲に感染させることがわかりましたが、当時はウイルスの特徴もわかっていませんでした。
p.201
あやしい人はすべて隔離するという法律があるなら別ですが、それがない以上、たとえ総理の判断でも法律を超えることはできません。
p.202
 一つ目は、船ごと追い返す。…
 二つ目の選択肢は、全員を下船させ、武漢の帰国邦人と同じように一時施設に入れることでした。

 三つ目が船内での隔離です。やむを得ない選択でしたが、おそらく今、当時に戻ったとしても、同じ判断をすると思います。
…約2週間の発生の波を見ると、船内隔離の前に感染していた人ばかりで、隔離後は新たな感染はほとんど起きていなかったということです。
p.203
 将来に備えて、3000室ぐらいの施設を用意し、常に食事や医療を提供できる体制を整える、というオプションもないわけではないですが、費用対効果を考えれば疑問です。

 元々、医療の世界では断定的なことは言えません。ある患者さんに難しい手術をするとして、もちろん最善を尽くしますが、「絶対に成功します」とは言えません。そうならない確率が必ずあるからです。
 断定的に言い切ることは、政治家には必要な資質かもしれませんが、医療では正しくない。「成功率はこのぐらいで、このようなマイナスの可能性がある」ということは、きちんと伝えなければなりません。
 それが逃げているように見えたのかもしれませんが、決して自分たちが責任を負いたくないからではありません。「総理、絶対に大丈夫です」と断定的に言っても、そうならない可能性は常にあるのですから、負の情報も意思決定者には伝えなければいけません。
p.204
 私は新型インフルエンザ対策推進本部事務局の次長だった2009年、「保健所やPCR検査の増加が課題の一つだ」と文書にも明記しました。PCR検査の拡充は必要ですが、いくつか考えるべきことがあります。
p.205
 一部の論者は、PCR検査を国民全員に行えば、すぐに感染拡大は収束すると主張しましたが、正直に言って、正しくありません。たとえ政府が号令をかけても、国民全員が検査を受けないでしょう。検査を受けるのは感染のリスクが少ない人だけで、本当に怪しい人は地下に潜る可能性が大きい。
 流行当初、厚労省が3日間熱が続いた人が検査を受けるという流れを決め、批判されたこともありました。
 しかし、検査のキャパシティが限られているときに、まず誰にPCR検査を行うかは大事な問題です。感染が疑われない人に検査を行えば、必要な人に検査ができなくなりますから、検査態勢がある程度拡充されるまでは本当に怪しい人に検査を集中したい、というのが担当者の総意でした。説明不足もあったかもしれませんが、検査できないと受け止められたのは残念でした。
p.206
 相談の電話を受けると、どこで検査を受けてもらうかや患者をどの医療機関に運ぶかを決め、車の手配まで担いました。疫学調査やその後のフォローも担ったので、到底、通常の人員では間に合わなかった。それが「目詰まり」の一因になりました。

 私の理解では、地方分権一括推進法が施行されて以来、医療や感染症に関して、厚労省が持っている法律的な権能は「自治体に対する技術的支援」しかありません。感染症対応は国の責任と言いながら、国の権限は極めて限られるのです。
…有事には、国と地方自治体の権能関係を一定期間、変えられる仕組みを作るべきです。
p.207
 難しかったのは、知事と政令市長の関係です。政令市には保健所もあり、医療に関する権能を市長が持っています。例えば、神奈川県が発表した感染者数には、横浜などの政令市は含まれていませんでした。
 有事の際には、政令市長の権限を知事に一時的に移行するという仕掛けなども、法律で作っておく必要があるのではないでしょうか。
 もう一つ、私権の制限のあり方についても議論しておく必要があります。
 コロナ禍では、若い人が多く観戦し、高齢者が多く亡くなりました。若い人が高齢者にうつさないことが大切ですが、若い人を家に閉じ込めておくことはできません。
 日本でも最初のうちは、保健師が毎日電話して家にいることを確認していましたが韓国やシンガポールはGPSを持たせ、家から離れると警告がなるという対策をとりました。なぜそれが可能だったかと言えば、仮想敵国があり、国防上、国民がどこにいるかを把握すべきだという意識があったからだと思います。
 日本ではそんなことを考えたこともありませんでしたが、リソースが限られている中でより合理的な対策をするには、新しいテクノロジーを使うしかありません。どのように技術を活用するのか、平時のうちに考えておくべきです。
p.208
最終判断は国のトップである総理が下します。総理が全ての情報を正しく把握し、判断できるようにするため、我々行政官は情報提供を怠ってはいけないと思います。
 アビガンは元々、新型インフルエンザに対して、一定の条件付きで承認となった薬です。新型コロナに対しては、試験管(in vitro)では有効でしたが、生体内(in vivo)で有効かどうかが課題でした。これは、一定のクリニカルトライアルをやって証明するしかありません。
p.209
 仮に、ウイルス量で測っていたらアビガンは有効であった可能性もあります。しかし、その時点で認めるに足るデータはありませんでした。
p.210
 なぜなら、民間病院と比べ、公的病院のほうが明らかに規模は大きく、急性期病床が多いからです。…

 しかも日本の場合、85%は民間病院です。今般の法改正で、自治体が医療機関と事前に協定を結び、協力しなければ罰則を課すという手続きができましたが、それが適切だと思います。
p.211
 一方、日本の病床逼迫は、質が異なります。最大の問題は病床に対して人の数が少ないことです。日頃から人手が少ない中でやっているので、コロナのように人手のかかる病気が流行すると現場は回りません。
 日本は病床については、選択と集中をしていくべきです。
…のちにワクチンや治療薬が開発され、死亡率は下がりましたが、武器がないときにどうやって感染拡大を防ぐかと言えば、国民の行動変容しかありません。


今なお日本を覆う「得体の知れない安倍的支配」の正体とは
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=112&from=diary&id=7388677

日本の憲政史上、最も長く総理大臣を務めた安倍晋三氏。2012年12月26日の第2次内閣発足から2020年9月16日の内閣総辞職まで約7年8カ月、2822日の連続在任日数も歴代最長だ。

昨年7月、安倍氏が凶弾に倒れると、国葬をめぐって国民の間で議論が巻き起こった。そして今年2月に刊行された『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社刊)はベストセラーとなっている。
今なお、安倍氏の存在は国民の中に強く残っている。そして、それは政界においても同様だ。

元通商・経産官僚で政治経済評論家の古賀茂明氏は、新著『分断と凋落の日本』(日刊現代刊)で「亡き後もなお、得体の知れない安倍的なものが政界に漂っている」と指摘する。この「得体の知れない安倍的なもの」の正体を解き明かしていくことが、長きに渡った安倍政権の総括につながる。

では、安倍政権が残したものとは一体なんだったのか。本書をのぞいていこう。

■安倍政権が目指した軍事大国化と防衛費「GDP比2%」の前兆

憲法改正は安倍氏の祖父である岸信介氏以来の悲願であることはよく知られている。岸氏が夢見たのは自主憲法の制定であり、安倍氏はその夢を受け継ぎ、さらに軍事大国化を目指した。

現在の岸田政権の安全保障政策は、単純に安倍政権が敷いた路線に乗って進められているだけだと古賀氏は述べる。安倍政権が敷いた路線こそ「軍事国家」への道である。

古賀氏がまず指摘するのが防衛費の増額だ。岸田総理は5年以内に防衛費をGDP比1%から2%に増額すると指示し、世間を驚かせたが、増額の動きは安倍政権時代から顕著だったという。
1976年に時の三木政権が軍事大国化を防ぐという思いから「1%枠」がはめられ、1978年に撤廃されたものの、暗黙の基準となっていた。しかし2017年、安倍氏は参議院予算委員会で「GDPの1%に抑える考えはない」と発言。防衛費は第二次安倍政権発足以降、右肩上がりでほぼ毎年過去最高額を更新した。

また、武器輸出の解禁も記憶にあるだろう。2014年4月、「武器輸出三原則」に代わる新たな政府方針として「防衛装備移転三原則」を閣議決定したが、古賀氏は「防衛装備移転」は「武器輸出」に他ならないと述べ、さらなる武器輸出拡大がその延長線上にあることは明らかだと分析する。

岸田政権で爆発したかのように見える「異次元の軍拡路線」は、安倍政権時代にはほぼ決まっていたと古賀氏。経済優先から軍事優先へ、国のかたちが変わりつつある。そのことに対して「本当に国民は理解し、同意しているのか」と読者に問いかけている。

■「官邸が喜べば出世の道が開く」官僚のモラルハザード

元官僚の視点から、官僚の劣化についても厳しく批判を加えている。

今、霞が関を取り巻いている問題が官僚の人材難であり、その背景にあるのが官僚のモラール(士気)の低下である。
優秀な人材が集まりにくくなっているだけでなく、若手官僚の退職も深刻化している。ブラックな職場や低い給与水準などさまざまな要因があげられているが、古賀氏はそれとは異なる視点――「官僚の倫理観」の崩壊に目を向ける。

古賀氏が幹部候補の中堅官僚二人に対する取材で、森友学園を巡る公文書の改ざん問題で自ら命を絶った赤木俊夫氏に関して「官僚の倫理観はどうなっているのか」と問いかけると、「あんなことは日常茶飯事です」と答えたという。二人によれば、中堅幹部クラスは皆、事務次官や大臣、官邸、声の大きい有力議員の方を向いて仕事をしている。しかもその内容は、政治家や役所の利益のためのものが非常に多いという。

森友学園問題で矢面に立たされた佐川宣寿氏は2017年7月に国税庁長官に昇任している。古賀氏はこの昇進に対して「霞が関のモラルハザードに拍車がかかった。安倍政権下では、国民や国家に奉仕するのではなく、総理・官邸に奉仕することがダイレクトに出世につながる。佐川氏の昇進は、それを証明したかっこうだ」(p.257より)とつづっている。

財務官僚だけではない。2021年9月に警察庁長官に就任した中村格氏は、安倍氏や菅義偉元首相と昵懇だったジャーナリストに逮捕状が出されたときに、それを取りやめるように指示をした人物で、当時は警視庁刑事部長。その前には菅官房長官の秘書官を務めていた。古賀氏は、安倍氏が喜べば出世につながることを見事に示し、官僚のモラルハザードを強める典型的な例になったと述べる。

 ◇

本書は安倍政権の負の遺産を抉り出し、それが今なお自民党を、そして日本を支配していると論じる。トピックの一つであるアベノミクスは格差を拡大させ、庶民の生活に不安を与え続けている。原発回帰の動きや教育行政にも安倍政権の影響が残り続けている。

では、日本の未来は絶望的なのか。古賀氏は最後に「まだ、日本を諦めるわけにはいかない。この国にはまだ十分なポテンシャルがあると信じることからすべては始まる」とつづり、「不公正に厳しい改革」を提言する。日本の劣化を食い止め、再生するためには具体的にどのようなことが必要なのか。本書はこの国への処方箋ともいえるような一冊だ。

(新刊JP編集部)


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