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2024年03月09日23:11
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ハザール 城田俊 水声社 2023年12月25日
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■ゼレンスキー大統領が南部オデーサ訪問中にミサイル攻撃 “およそ150メートル先に着弾した” 追悼の大統領ら狙ったか
(TBS NEWS DIG - 03月07日 10:09)
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p.228
カガンは自分の家来を(護衛兵として)付け、レベディアスをアテルクズに送り届けた。帰ってきたレベディアスは同族の者と相談し、アルパドを王に選ぶことに決め、即位の式を挙行した。(マジャールにはこれまで王というものはいなかったが)これ以後今に至るまでマジャール(後のハンガリー)の王はアルパドの一族から選出されるようになった。
その後、ペチェネグが再び襲い掛かってきた。マジャールは、やむを得ずアテルクズを捨て、安住の地を求め、流浪し、遂にはモラビア(正しくはパンノニア)の地へとたどり着き定住するようになり、現在もそこにいる。以後ペチェネグと闘うことはなくなった。
…
マジャールの八部族とは次のようなものである。一、カバル部族(ハザールである)、二、ネキ部族、三、メゲリ部族、四、クルトゥゲルマト部族、五、タリアノ部族、六、ゲナフ部族、七、カリ部族、八、カシ部族”。
p.230
”ハザールのカガンとペフ(ベクのこと)はテオフィロス帝(ルシの使節団をフランク王国へと送り出した当人)のもとに使節を送り、彼等のためにサルケル城を築いてほしいと頼んできた”。
p.231
なにしろ、サルケル城建設あたりを潮目にしてクリミアでのハザールの存在感は薄れていく。ビザンツは「テマ」(74頁参照)をケルソンにまで拡大する。九世紀末になるとハザールはボスポロス(ケルチ)まで失ってしまう。
p.232
サルケル(白い家)城は西方に備える構えで立つ。ドニプロ(ドネプル)川方面からやってくるルシに対して守りを固め、カスピ海、ボルガ川、ドン川、アゾフ海、黒海、ドニプロ(ドネプル)川を結ぶ水運を守らんがためである。
p.235
原郷はカマ川流域。五世紀初頭南下し始め、ウラル山脈の南西、ウラル川、ボルガ川へと広がり、進出してきた突厥の勢力圏下で遊牧生活をおくったらしい。ビザンツから派遣された特使ゼマルコスが突厥西部の王者ディザブロス(トゥルクサントスの父)と会見した後、帰路ウラル川あたりで、ウグールの首領に出会ったことを記録しているが、このウグールはマジャールのことらしい。
p.236
ハザール国が形成されるや、その支配下に入り、東面国教防衛の役を担ってボルガの東に住んでいた。…
原語はウグロ・フィン系統。しかし、突厥・ハザールなどトルコ系民族の勢力下にいたため、多数のトルコ系単語を借用している。
…
ハザール中枢部がまず行ったのは、ハザールの精鋭部族であるカバル族をマジャールに監察・指導部族としてつけ、その上で、マジャール全体の部族組織を再編することであった。…
…
ルシの侵入はまずボルガ・ドンルートで始まる。ハザール政府は、その手当てとして、サルケルを中心にしてドン川、ドネツ川沿いにマジャールを配置した。
p.237
ハザール政府はマジャール本隊の一隊を割き、現在のキーウ(キエフ)に向かわせた。そこは、デスナ川がドニプロ(ドネプル)川に流れ込む合流地点のやや南である。ヨーロッパ有数の穀倉地帯をうねるドニプロ(ドネプル)水路システムとクラクフ(ポーランド南部)、レーゲンスブルグ(ドイツ南東部ババリア州。ドナウ河畔の港をもって栄えた)に向かう陸路が交差する場所である。…
…
キエフの名はまだない。そこはサンバタスと呼ばれていたらしい。…サンバタスとは、プリツァクによると、当時、この地を行きかう商人が用いたスラブ語、ラテン語、ギリシア語のまざった混成語で「土曜日」を表す(69)。ロシア語のスボタ「土曜日」もこの語に連なる。中央ヨーロッパでは土曜日に定期市が開かれ、それをまねてこの地でも土曜市が開かれていた(77：53)。
マジャール分遣隊は戦略上サンバタスの最も重要な西岸の丘に拠点を置いた。現在のペチェルスキー修道院のやや北、ポドルから南へ二キロ。ベレストボのそばのなだらかな丘である。マジャールが築いたので当地のスラブ人はウゴリスコエ(マジャールの)と呼ぶようになった。敢えて訳せば、「マジャール砦」となろう。キエフ攻略はまずウゴリスコエを攻め落とさないと成功しないと考えられるような重要軍事拠点であった。
p.240
それが二百隻、サンバタスの守備隊を尻目に、川を下り、黒海にはいり、沿岸沿いに南下し、ドネストル川・ドナウ川の河口を横切り、ボスポラス海峡(黒海とマルマラ海を結ぶ海峡)をぬけて、金角湾に踏み込んでいったのである。…
六月のことというから、スモレンスク、南に下ってリュベチ(キエフの北)などの前進基地にルシが船を結集させたのは八六〇年の雪融けを待ってのことと思わせる。
p.242
当時、帝都の総主教はフォティオス(在位八五八‐六七、八七八‐八九)であった。アジア系の風貌をしており、ハザールの血をひくという噂があったらしい(時の皇帝ミカエル三世(八四二‐八六七)は、彼に腹を立てた時、Chazaroprosopos「あのハザール面め」と怒鳴ったと伝えられる)。
p.245
その答えは、身に危険が及ぶ敵対勢力によってケルチ海峡が封鎖されていたということ以外に見出すことはできない。…
…トムトロカニ(37頁)はすでに彼らの手中にあり、ケルチ海峡を渡り、ボスポロス(ケルチ)まで力を及ぼしていたかもしれない。…
…
「カスピの門」とはどこか。…有力視されるのがデルベントである。
p.246
八五〇年代末、カガンは将軍(ベク)が我が物顔に振る舞うイティルを自ら脱出し、建国の地、古くからの味方が多く、直轄領でもあるダゲスタン地方に天幕を移したのではないか。恐らくそれは古戦場デルベントではなく、そこから程遠からぬ北方と、イスラム史料が伝えるセメンデルではなかったか。
p.248
ユダヤ人迫害をしょっちゅうやっているビザンツなら、ベク打倒ないし抑止に力を貸してくれるかもしれない。
p.252
場所はフッルイ。クリミア半島のハザール領。住民はキリスト教徒とあるので、かつてビザンツ領だったが、ハザールが奪った土地であろう。バフチサライ近辺か、スダクあたりだと推定されることは記した。
p.253
樫の神木を伐り倒す話は『カフカス・アルバニア史』にも出てくる。イスラエール主教はバラチャンの森で、住民が祭り、崇める樫の聖樹を伐り倒し、十字架をつくり、神主、呪術師を火あぶりにする(100頁)。
p.254
完全にコントロール下に置いた証拠は、『統治論』の中に残されるペチェネグの部族構成と名称の中に見出すことができる。
ペチェネグという連合体の名は残す。しかし、参入部族の旧名はすべて捨てさせ、全体をマジャールと同じく八部に分け、新しい名を与えている。名の与え方は単純・明快。首領の地位名称と愛馬の毛色を組み合わせてつくるというものだ。…クアルツィ・ツル(Kouartzitzour)＝青毛の啜(西突厥ヌシビ部の長はみなチュルを称した。ハザールでもこの官名は使われた)、シル・カルペイ(Syroukalpeï)＝河原毛のカル(地位名称)殿、ボロ・トルマチ(Borotolmat)＝鹿毛の外相。
p.255
思い起こされるのは、ペチェネグという連合名の語源である。badzža「妻の兄弟」に表愛辞-nak/-nek「さん・ちゃん」がついたものといわれる。
いとこが跡を継ぐ、という相続法が働く集団では親から見ると「妻の兄弟」が非常に重要になる。自分の子の跡目は往々にして「妻の兄弟」の子へと移る。
…ペチェネグには、マジャールにおけるカバル、突厥におけるアシナ、ウイグルにおけるヤグラカル(73)のような連合体を主導する集団はない。
p.256
ペチェネグはもとカンガルといったと皇帝は明言する(72：170,171)。このカンガルは西突厥ヌシビ部に属していたらしい弓月kiwŋ-ŋyat.(90)のことと思われる。
ヌシビ部に属していた七世紀、弓月は天山山脈とイスィッククリ湖の間、現在のナリンあたりで遊牧していたようだ。
一方、八世紀(七五〇年頃)のユーラシア北方の様子がうかがえるチベット語史料によるとペチェネグBe-ča-nagという集団はアルタイ山脈とタルバガタイ山脈の間にいた。七世紀弓月が生息していた地よりはるかに東である。
弓月が東に移動してペチェネグという集合体を、中核となってつくりあげたのか、ペチェネグという集合体がそもそも東にあり、西進して弓月を包含するようになったのか、チベット語史料がおかしいのかさだかでない。
弓月は突騎施と同様アシナ賀魯の反唐独立戦に参加せず、様子見の態度を持したが、後の唐軍の進出に対し、チベットを引き込んで、行く手をはばみ、一時撃退に成功している。唐代史料からうかがえる弓月の野心的な行動に関しては松田が詳しく跡づける(52：324-356)。
キュル・テギン碑は七一〇／一一年、カンガルがトゥルギシュと戦闘をまじえたことを伝える(130：32：16：53,123)。中央アジアにアラブ軍が進出する混乱に乗じ、旧西突厥領の勢力再編をねらって、弓月はトゥルギシュの覇権に挑む野心を抱けるだけの力を持っていたようだ。
p.257
彼等は唐、アラブ、トゥルギシュ、チベット、カルルクなどの様々な民族にもまれ、アラル海、シル川流域を後にし、最終的にはオグズに負われ、八三〇年代、ウラル川を越え、ボルガの東に出現した。
p.258
レベディアの地を与える約束で将軍(ベク)勢力はペチェネグをマジャールに嗾しかけたと思われる。ペチェネグは、ボルガの東からドン川へと進み、堅城サルケルを避け、セミカラコルスコエ城やツィムリャンスコエ右岸城(第六章3)などの小城を落とし、マジャールの本営を襲ったと思われる。
ペチェネグが黒海沿岸に姿を現わしたのは八八九年というのが最古の文献上の記録であるが、記録以前に進出は開始されていたように見受けられる。マジャールは撃ち破られ、ドニプロ(ドネプル)川を越えて逃げ、新たに住みついたのがシレト川を含むドナウ水系とドニプロ(ドネプル)川の間の地、アテルクズであった。
p.259
アテルクズに帰ると、レベディアスは仲間と相談し、盟友アルムツ(アルムシとも)の息子アルパドを王にすることに決める。
…
アルパドの即位をアルタモノフは八九〇年頃とする。
…八九〇年代初頭という古い時代ながら、若きブルガリア国王シメオンは商業問題に敏感に反応し、西トラキアに兵を進め、迎え撃ったビザンツ軍を撃破し、多数の捕虜を捕らえた。
p.260
傭兵として雇われていたのか、カガンが友好関係をおもんぱかって送り込んだのか、はっきりしないが、捕虜交換時ブルガリア側はハザール兵団捕虜をことさら酷に扱い、全員鼻をそいでビザンツに送り返した。…
…カガン側に付き、ペチェネグと敵対関係にありながら、新しくマジャール王に選出された若きアルパドはこの危険な話しに乗った。
…すでに八九二年、王位について間もなく、東フランク勢(ドイツ)の誘いに乗り、モラビアのスビャトプルクとの闘いに兵を出している。
…ビザンツは軍船を用いて、マジャール兵をドナウ川の北に輸送し、すでに述べたことだが、ブルガリア軍の背後を襲わせた。マジャール軍は大勝し、ブルガリアの首都ブレスラフに押し寄せ、略奪を日夜繰り返した。
p.261
自軍の大敗を知るや、ドニプロ(ドネプル)川を越えて勢力を拡大してきたペチェネグに使者を派遣し、壮丁が全て出払い、防衛手薄となったアテルクズのマジャール本拠を襲撃させた。女・子供・老人は皆殺しにされ、命ながらえたものは僅かであった。
ドナウの北で急の知らせを受け、急遽引き返してきたマジャールの男達は、根拠地に腐臭がただよい、無人に近い状態になっていることを見て、帰還をあきらめ、カルパチア山脈を越え、パンノニアに移動する。八九五年秋のことという。
…
「ウグリ」はマジャール、「大きな山々」はカルパチア山脈、「スロベネ」はパンノニアに住むスラブ人。
p.262
編集に参与した人々はウゴリスコエ(マジャールの(砦))という地名がまず気になった。…キーウ(キエフ)にはマジャール人がいたという言い伝えもある。
p.263
マジャールはパンノニアに移動し、安住の地を見出し、ハザールとの長年のえにしを断って独立国家を形成する。カガン勢力は一気に支えを失う。
ペチェネグは、雇主ベク勢力の要請に応えて、猛進し、マジャールを撃ち破るが、雇主の思惑を越え、強大化し、黒海沿岸草原で我がもの顔に振る舞うようになる。
ハザールは国土を縮小し、対外的影響力を失っていく。ボルガ・ブルガルはハザールの支配から脱しようと画策し(後述)、アランはハザールに歯向かう姿勢を見せだす。
ルシはますます国力を伸長し、北方で隠然たる存在感を示し、南下の勢いは衰えない。
p.265
五三〇年、ササン朝ペルシアからユダヤ教徒が追放された。彼等はダゲスタン地方にやってきて住むようになった。既述のように、ハザールの建国の地はダゲスタンである。彼等はハザールの建国以来の領民であった。彼等はラビ主義にそまらない旧教徒であった。
p.268
中国史料(『経行記』)に可薩の北にまた突厥(トルコ系人)がおり、その者どもは足が牛の蹄に似ており、好んで人肉を食べる、とあるが、ボルガ・ブルガルへの言及と思われる。「足が牛の蹄に似ている」というのは馬の脛骨でつくったスケートないし、スキー様の雪上移動用具を足に着装した人の姿が、異国譚として誇張されて南方住民に伝えられた結果と思われる(ロシア語でスケートをカニキконьки「子馬」というのはメタファー(隠喩)として理解されているが、スケートとして使った馬の脛骨に関係し、メトニミー(換喩)の可能性はないだろうか)。
…王子はハザール宮廷へ人質として、王女はカガンに妻として差し出されていた。
…
九二〇年アルムシュ派遣のボルガ・ブルガル使節団がバグダードに到着し、カリフ・ムクダディルにイスラムの教えを説く導師と法学者の派遣、ハザールの攻撃に備える城塞の建設、その資金援助を願い出た。団長はアブド・アッラー・ブン・バーシュトゥー(3：28)というアラブ人のようなイスラム風の名を持つが、ハザール人であった。
p.269
彼はユダヤ教の国教化に抵抗し、ブルガルに政治亡命をはたしたイスラム教徒で、ブルガル宮廷で重視され、対ハザール政策に関わる重責を担っていたらしい(126：15)。
…宮廷宦官の有力者が答礼使節団の代表に選ばれ、補佐としてイブン・ファドラーンに白羽の矢が立てられた。…カスピ海南岸タバリスタンの南を通り、アラル海の西、ジュルジャーニーヤで越冬し、翌年五月ボルガ川とカマ川の合流点近くに置かれていたブルガル王の本営に到着した。
…この能力をフルに稼働させ、ホレズム、オグズ、バシキル、西への移動に追従せず居残り、貧しく暮らすペチェネグ、ボルガ・ブルガル、ルシ、ハザールなどの各民族に関する詳細な観察・見聞録を天性の生き生きした筆致で書き上げ、カリフに提出した。
p.270
バフを補佐するのはクンドゥル・ハーカーンである。クンドゥル・ハーカーンを補佐するのはジャーウシーギルと呼ばれる者である。
p.272
年代順に見て史料上次に位置するのはイスタフリーの『諸道諸国誌』(注50参照)である。
…第五章1冒頭で記したカガン位就位に当たって演じられる気絶と再生のドラマを伝えるのはこの書である。
p.310
コフィン(QWFYN)はプリツァクによるとハザールに古くからあった氏族名と推定される(77：40)。…それに対し(バル・)ヨセフはユダヤ名である。
p.311
テングリハンを信ずる宗徒を束ねるカムqam「シャーマン」(113：413)の長(宮司)であったものが、ユダヤ教導入決定に際し、ユダヤ教の祭司職にそのまま移行し、下位のもの(副宮司など)が順位に応じ、レビー、パルナース職を奉じ、それぞれの名称を名乗るようになった。
p.315
この時期、ハザールの傭兵常備軍の総司令官は、ワズィールの称号を持つアフマド・イブン・クーヤという人物であったというのである。…
…
キーウ(キエフ)は『統治論』でキヤバΚιοαβαと綴られる(72：56)。イスラム史料でも古いものはKūjābaである。また、ラテン語で記された年代記中最古のキーウへの言及の綴字からおこされた発音はクーヤーバ、ないし、クーイェーバCuiewaである(114-�検�54, 76,77)。
p.316
語末は-awaであると推定できよう。
クーヤはホレズムに出自を持つことは述べた。ホレズム語はソグド語に最も近く、東イラン語に属する。東イラン語には形容詞形成接辞/āwa/がある。名クーヤKūjaにそれをつければクーヤーワKūjāwaが得られる(77：54)。「クーヤーの(町)」という意味である。ワズィール、クーヤがキーウ(キエフ)の城郭を建設したので、「クーヤ」の町と呼ばれたのだ。キーウ(キエフ)の語源はここにある。
p.317
三兄弟の末弟ホリブの名もハザール支配時代を思い起こさせる響きを持つことにも触れておきたい。ホレブは、モーセがユダヤ人を約束の地へと導く使命を神から与えられた場所である山の名である。…
…
シチェクの語源ははっきりしない(144-�検�499)。
p.319
キエフ(サンバタス)は九三〇年代までハザールの支配下にあり(77：71)、ユダヤ教徒のコミュニティーさえあった。
p.320
ルシの船団がドニプロ(ドネプル)川を下り、ウゴリスコエを陥し、守備隊を追い散らし、市を占領したのは九三〇年代、ないし九四〇年代初頭のことではなかったか(考古学的調査でもキーウ(キエフ)が都城範囲を拡大させるのは十世紀以後のことである)。
p.321
このルシのカスピ海沿岸諸国、諸地域への大規模な略奪行は、リュリク王家とは無関係のはねあがり者によって挙行された暴挙とアルタモノフは見ている(98：375)が、プリツァクは、略奪行の頭目こそオレグ自身であると論じる(77：66)。数字には誇張があろうが、五万の水軍を動かすのはやはり国家事業であろう。これが正しいなら、オレグは九一三／四年頃、イティルの川岸でハザールのイスラム傭兵団との戦闘で倒れたことになる。
p.322
ロシア人が広く用いるオレグという名前は古スカンジナビア語ヘルギを語源とする。
p.323
オレグなきあと将軍になったのはスベネリドという新参のバリャギであった。彼は九四三／四年に行われたルシの第二回カスピ海遠征の指揮を行った人物と思われる。第一回(九一三／四年)と同じ行程をとり、ハザール王(将軍(ベク)のこと)の許可を得て、イティルを通過し、クラ川沿いの町ベルダに略奪行をしかける。
p.324
その対抗勢力とやらは、年代記の記述に従えば、ドレブリャネであるが、その地はかつて将軍オレグの支配地であり、理不尽な上、不用意、不用心なイゴリを殺害したのはオレグの後に将軍となったスベネリドの息子マルであった。
p.329
イスラム史料(アスィール、ミスカワイヒ(88))は同年(九六五年)トルコ系人がハザールを攻撃したと伝える。…名が記されていないが、状況からすれば、オグズと思われる。
オグズは主にアラル海、ホレズム、カスピ海東岸で遊牧していたが、漸次西進し、ボルガ川に近づき、ハザールの東の隣人となり、一時ハザールと同盟してペチェネグを挟撃したことはすでに述べた(253頁)。
p.330
『原初年代記』にはヤスィを「打ち負かした」とあるが、ヤスィはアゾフ海沿岸地方に住む民である。
p.332
この時もオグズ人が東からイティルに攻め込んだことが同史料からうかがえる。ハザールは再び東西から挟み撃ちにあう。
…
イティル・セメンデルを占拠したルシ勢はそこに居座り、略奪・寄生生活をこれ以後十有余年続けたらしい。
『デルベント年代記』(十一世紀末成書)によると、九八七年に十八隻の船を操り、ルシの軍勢がデルベントに現れた(132：68)。アゼルバイジャンの小国シルバンでおこった何らかの争乱に介入して出撃したらしい。
p.333
ボルガ河口からカスピ海北西岸の制海権を握っていたのだろう。
p.334
イスラム史料(イブン・ハウカル)は、ハザール人がアゼルバイジャンの小国シルバンの領主ムハンマド・イブン・アフマド・アル・ヤズィーディー(アジーとも)に助けを求めると、ヤズィーディーは承諾し、兵士・従僕を派遣し、ハザール人がイティルに戻るのを助けてやったと書き記す。
…ヤズィーディーがシルバンの領主に納まったのは九八一／二年と記録される(135：228)ので、ハザール人がイティルに戻ってこられたのはそれ以後のことと考えられる。
p.336
九九一年に終わる。…
この時期ホレズムは、アッバース朝から自立した豪族サーマーン家(イラン系)の支配下にあった。
p.337
ハザール人はユダヤ教を捨て、イスラムの信仰に移ったとアスィールは語るが、ハザール人すべてがイスラム教徒になったわけではないことが『原初年代記』を読むと判明する。九八六年の項に「ハザールのユダヤ(教)の者たち」がキーウ(キエフ)にやってきてウラジミル➅に教を説く場面が描かれている。
p.338
ボルガ河口に十一世紀から十三世紀初頭サクスィンという名の町があったことが知られる。イティルの廃墟の上に立てられたかどうかさだかではないが、その名はかつての首都の西部分、カガンや将軍(ベク)の居城があった大きな区画がハザール語でシャーリグチン(77：152)といったので何らかの関係があるのかもしれない。
p.339
年ははるかに下るが、年代記一二二八年の項にサクスィン人の名が出てくる(139-1：453)。ハザール人の後裔と見ていいかもしれない。
…現在ボルガ河口にある大都市はアストラハンである。ヨーロッパ遠征後、帰国せず、祖国での跡目争いを観望していたバトゥが建てたサライの後はそのやや上流、セリトレンノエにある。バトゥの弟ベルケが建設したベルケ・サライはもっと上流。現在のボルゴグラード近郊である。十四世紀、アストラハンはティムール(一三三六‐一四〇五．ティムール帝国の創始者)によって破壊されるが、やがて復興をとげ、ベルケ・サライのお株を奪い、商取引の中心地となり、現在も港湾都市として栄える。
…
ポロベツはポロブイполовЫй「うす黄色の」からつくった名称である。…ビザンツ史料ではクマン、イスラム史料にはキプチャクの名で出てくる。
p.340
本書の主人公ハザール人のハザール語、脇役のボルガ・ブルガル人、ドナウ・ブルガル(ブルガリア)人のブルガル語、ペチェネグ人のペチェネグ語には少数の単語しか残っていない。その多くは、人名、位階名である。そのため言語の概要がつかめない。それに対し、ポロベツ語には「コウデクス・クマニクス(91)」という資料が残されているため、言語の概貌がおおよそわかる。専門家の言によると、トルコ系言語の北西群に属するという。
p.341
ハザール人の生き残りは、ポロベツの大波に吞み込まれてゆく。
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■ゼレンスキー大統領が南部オデーサ訪問中にミサイル攻撃 “およそ150メートル先に着弾した” 追悼の大統領ら狙ったか
(TBS NEWS DIG - 03月07日 10:09)
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ウクライナメディアは6日、ゼレンスキー大統領が南部オデーサを訪問中、近くでロシア軍によるミサイル攻撃があったと報じました。
ウクライナ国営メディアなどによりますと、ゼレンスキー氏がギリシャの首相とオデーサを訪問した際、近くでロシア軍のミサイル攻撃があり、5人が死亡しました。
ゼレンスキー氏も「攻撃を目撃した」としていますが、両首脳は無事でした。
アメリカのワシントンポストは、「ゼレンスキー氏らからおよそ150メートル先に着弾した」「大統領が標的とみられる」と伝えています。
オデーサでは、2日にロシア軍の攻撃で12人が死亡していて、その追悼に訪れていました。
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