〜NOT GONNA GET US〜
廊下の開け放しの窓の外から教室に流れてきた桜の淡い香りが
教室いっぱいに漂い中庭側の開け放しの窓の外に零れ落ちていく
放課後の女子バンドの練習はいつものようにまったりと始まって
いるはずがこの陽気でまったりでとまっている
今教室にいるメンバーは外畑さんと外堀さんだけで実質
六時限目が終わった後の制限のない休み時間といった感じ
突然中庭側から旅客機のジェット音が微かに聴こえてくる
羽田空港上空の風向きによってこの教室の上を通過するのだ
「あのエンジン音は727‥いや少しかん高いからDC10かな」
旅客機マニアの僕が独り言で予想をたてると外畑さんが
『あっ! そうだ』
と言ったかと思うとミニドラムセットに向かいスティックを持った
同じタイミングで外堀さんが机の中からミニピアノを引っ張り出す
慌てて奥から出したので手前のめくった形跡のない真新しい参考書
が数冊バサッと床に落ちた
そして電源を入れたかと思うとシンセ音にセットしてまるで
映画で廃墟のシーンに流れるような低く響き渡る音を弾き始めた
外畑さんが呼応して軽快なテンポでドラムをたたき始める
このタイミングで真上をDC10が通過するエンジン音が響いた
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