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2020年03月22日22:12

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妄想探偵社

〜帰路〜

のぞみの車窓から見える美しい富士‥を期待したけど
あいにくの曇天で裾野くらいしか見せてくれない
あとは肩肘ついて流れる景色をぼーっと眺めるだけ
車窓に反射して映る向かいの席の藍尾君と伴尾君を見て
今回の社員旅行は楽しめたのだろうかと振り返っても
訪れた場所は覚えていているけど想い浮かぶ景色の記憶が
旅行パンフレットみたいに綺麗すぎて本当に訪れたのかと
問われると〈あああそこは美しかった〉と答える自信がない

『ねえねえ伴尾さん さっき通ったアテンドントの男の人
かっこいいと思わない』

アテンドント?本場の発音はそうなのか?
それとも藍尾君の純粋な間違いなのか?
いつもだったら伴尾君はさりげなく間違いを正すけど
今黙っているところを見るといつもの調子じゃなさそうだ

『今日は富士山が隠れていて観る事ができませんね』

伴尾君も僕と同じ期待をしていたようだ

『あー!それ ?知ってるう!』

出た久々の藍尾君の〈あー!?〉またとんでもない事を
言う予感が‥

『富士山って美人が現れると嫉妬心で姿を見せないって
なんかで聞いた気がする』

〈なんかで聞いた気がする‥〉この言葉ほど根拠の薄い
言い回しはないが 本来の藍尾君なら〈私たちが美人だから
かな〉なんて言いそうなんだけどそこで発言が終わる
藍尾君も本調子ではないみたいだ

・・・

《苗木さん これで良かったのでしょうか》

《これでいいのよ 東京で探偵事務所に私が人探しの依頼を
するところから記憶を消す程度なら史実は変わらないでしょう
それに安土さんと私の期限のない監視付きでもあるし
このほうが安土さんもよかったと思っているのでは?》

《史実が変わらない事と期限のない監視とでは
どちらが良かったと思いますか?》

《期限のない監視…》

《私もです…》


富士が裾野さえ見せなくなってしまった
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